「盲腸を風邪と誤診?」の話 [仕事のこと]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
数日前にこんなニュースがありました。
【虫垂炎を風邪と誤診? 大阪の病院で男性が死亡】
大阪府の○○病院で平成18年11月、腹痛を訴えて受診した43歳の男性が30代の担当医に「風邪」と診断され、翌日に壊死性虫垂炎による敗血症性ショックで死亡していたことが、病院関係者への取材で分かった。病理解剖の結果、男性は死亡の数日前から虫垂炎とみられる炎症を起こしており、医師が診察時に適切な治療をしていれば、死亡しなかった可能性が高いという。(一部原文より省略あり)
アウトラインを記事からお話すると、
ある祝日の朝、
激しい腹痛で受診された患者さんを、
担当医は診察の上「風邪」と判断。
風邪薬を処方して帰宅させたのですが、
その翌日心肺停止で同じ病院を救急受診し、
同日亡くなられました。
病理解剖の結果では、
盲腸に穴が開いていて、
高度の腹膜炎を起こしていたというのです。
患者さんが最悪の事態になったことは、
本当にあってはならないことだと思います。
患者さんのご冥福をお祈りします。
ただ、盲腸の診断は非常に難しい場合があり、
この記事に似た事例は、
僕自身も経験しています。
今日はちょっとそんな話をさせて下さい。
僕の経験した事例は、
50代の女性でした。
発熱と下痢、吐き気を訴えて、
診療所を受診されました。
時期は丁度、12月の連休の合間です。
お腹の診察では、
筋肉の緊張はそれほどはありませんでしたが、
下腹部に全体的に押した時の痛みがありました。
ただ、飛び上がるような痛みではありません。
お腹の風邪は流行っていた時期で、
(より正確にはウイルス性胃腸炎です)
矢張り第一にはそれを考えました。
採血をすると、
白血球は12000くらいに上がっていました。
この時点で盲腸の可能性は念頭には置きましたが、
全身状態から考えて、
救急で紹介するタイミングとは思えませんでした。
翌日は祝日です。
それでニューキノロン系の抗生物質を処方し、
万一症状が悪化した時は、
救急受診をするよう患者さんにお話しました。
特に変化がなければ、
2日後の受診を指示しました。
2日後に患者さんはおいでになり、
前日が痛みはピークであったけれど、
今日は少し楽になった、
と言われました。
再度採血をすると、
白血球は11000と横ばいです。
食事が取れないとのことだったので、
その日は点滴をして、
それから翌日の受診を指示しました。
ところが…
翌日に腹痛は増悪し、
熱もぶり返したように高熱になっています。
それでその日に総合病院の外科に、
紹介の方針としました。
患者さんは虫垂炎の穿孔で、
腹膜炎を起こしていたのです。
緊急で手術が行なわれ、
幸い患者さんは回復されました。
ただ、ちょっとご経過が悪ければ、
この記事と同じことになっていたかも知れません。
当初から盲腸の可能性は疑ってはいたのですが、
一時的に痛みが和らぎ、
血液の数値も改善したので、
そのまま様子をみても、
と誤った判断をしたのです。
実はこの痛みの改善は、
盲腸に穴が開いて、
その内部の圧力が減じたことにより生じたのです。
中耳炎の痛みが、
鼓膜が破れると落ち着くのと同じです。
しかし、それは勿論治った訳ではなく、
腹膜炎や敗血症という、
もっと深刻な事態に移行する前の、
束の間の改善でしかなかったのです。
僕がこの事例以降心に刻んでいることは、
腹痛の患者さんでは、
その症状の経過を細かく聞き取る、
ということです。
診察時の痛みはやや和らいでいても、
それは経過によっては良いサインである場合もあり、
また悪いサインである場合もあるからです。
皆さんも痛みで医療機関を受診する場合には、
必ずその最初からの症状の経過を、
出来るだけ細かくお話されるようにして下さい。
話を聞く医者は迷惑そうな顔をするかも知れませんが、
それは無視して下さい。
そうすることが、
皆さんの身体を守ることになり、
結果的にはその医者の身を守ることにもなるからです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
数日前にこんなニュースがありました。
【虫垂炎を風邪と誤診? 大阪の病院で男性が死亡】
大阪府の○○病院で平成18年11月、腹痛を訴えて受診した43歳の男性が30代の担当医に「風邪」と診断され、翌日に壊死性虫垂炎による敗血症性ショックで死亡していたことが、病院関係者への取材で分かった。病理解剖の結果、男性は死亡の数日前から虫垂炎とみられる炎症を起こしており、医師が診察時に適切な治療をしていれば、死亡しなかった可能性が高いという。(一部原文より省略あり)
アウトラインを記事からお話すると、
ある祝日の朝、
激しい腹痛で受診された患者さんを、
担当医は診察の上「風邪」と判断。
風邪薬を処方して帰宅させたのですが、
その翌日心肺停止で同じ病院を救急受診し、
同日亡くなられました。
病理解剖の結果では、
盲腸に穴が開いていて、
高度の腹膜炎を起こしていたというのです。
患者さんが最悪の事態になったことは、
本当にあってはならないことだと思います。
患者さんのご冥福をお祈りします。
ただ、盲腸の診断は非常に難しい場合があり、
この記事に似た事例は、
僕自身も経験しています。
今日はちょっとそんな話をさせて下さい。
僕の経験した事例は、
50代の女性でした。
発熱と下痢、吐き気を訴えて、
診療所を受診されました。
時期は丁度、12月の連休の合間です。
お腹の診察では、
筋肉の緊張はそれほどはありませんでしたが、
下腹部に全体的に押した時の痛みがありました。
ただ、飛び上がるような痛みではありません。
お腹の風邪は流行っていた時期で、
(より正確にはウイルス性胃腸炎です)
矢張り第一にはそれを考えました。
採血をすると、
白血球は12000くらいに上がっていました。
この時点で盲腸の可能性は念頭には置きましたが、
全身状態から考えて、
救急で紹介するタイミングとは思えませんでした。
翌日は祝日です。
それでニューキノロン系の抗生物質を処方し、
万一症状が悪化した時は、
救急受診をするよう患者さんにお話しました。
特に変化がなければ、
2日後の受診を指示しました。
2日後に患者さんはおいでになり、
前日が痛みはピークであったけれど、
今日は少し楽になった、
と言われました。
再度採血をすると、
白血球は11000と横ばいです。
食事が取れないとのことだったので、
その日は点滴をして、
それから翌日の受診を指示しました。
ところが…
翌日に腹痛は増悪し、
熱もぶり返したように高熱になっています。
それでその日に総合病院の外科に、
紹介の方針としました。
患者さんは虫垂炎の穿孔で、
腹膜炎を起こしていたのです。
緊急で手術が行なわれ、
幸い患者さんは回復されました。
ただ、ちょっとご経過が悪ければ、
この記事と同じことになっていたかも知れません。
当初から盲腸の可能性は疑ってはいたのですが、
一時的に痛みが和らぎ、
血液の数値も改善したので、
そのまま様子をみても、
と誤った判断をしたのです。
実はこの痛みの改善は、
盲腸に穴が開いて、
その内部の圧力が減じたことにより生じたのです。
中耳炎の痛みが、
鼓膜が破れると落ち着くのと同じです。
しかし、それは勿論治った訳ではなく、
腹膜炎や敗血症という、
もっと深刻な事態に移行する前の、
束の間の改善でしかなかったのです。
僕がこの事例以降心に刻んでいることは、
腹痛の患者さんでは、
その症状の経過を細かく聞き取る、
ということです。
診察時の痛みはやや和らいでいても、
それは経過によっては良いサインである場合もあり、
また悪いサインである場合もあるからです。
皆さんも痛みで医療機関を受診する場合には、
必ずその最初からの症状の経過を、
出来るだけ細かくお話されるようにして下さい。
話を聞く医者は迷惑そうな顔をするかも知れませんが、
それは無視して下さい。
そうすることが、
皆さんの身体を守ることになり、
結果的にはその医者の身を守ることにもなるからです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2010-10-18 08:22
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こんばんは。
お手持ちの本とは、もしかして「オペラ名歌手201」でしょうか?
彼女が表紙なんですよね!!!
マリア・カラスでもなく、3大テノールでもなく・・・
それによると、たしかに1966/5/17生まれとなってますね。
私は、ある年の5月17日に「お誕生日おめでとうございます」と
彼女にメールをおくったのですが、彼女から「私の誕生日は6月15日
なんです。でもメールありがとう」と丁寧な返信をいただきました。
気取ったところが少しもなく、本当に素晴らしい人です。
by nemo (2010-10-18 20:07)
私の場合は逆(?)でした。
3日ほど、強烈な腹痛と、腰痛と、おなかの硬さと、高熱で苦しんでいましたが、
盲腸かもしれないと覚悟を決めて病院に行って検査をしてもらったところ、
白血球数はかなり高いけどX線でもわからないので、とりあえずお腹開けましょう
との診断で、なんだか怖くて逃げ帰って別の病院に行ったら
ただの便秘だったという。。。で、頑丈なまま今に至っております。
by midori (2010-10-18 20:41)
nemo さんへ
そうです。その本です。
ロストからメールをもらったとは、
羨ましいです。
来年のリサイタルも、
気合の入ったプログラムで、
非常に楽しみですね。
by fujiki (2010-10-18 21:28)
midori さんへ
コメントありがとうございます。
多分腸炎自体はあって、
そのために便秘になったのではないでしょうか?
ただ、お腹を開けることにならなくて、
良かったですね。
でも、重症の便秘で手術になることもありますから、
便秘もそれはそれで怖い病気ですね。
by fujiki (2010-10-18 21:31)
私も5歳の時(もう38年前)に 急性虫垂炎を 誤診されて 5~6軒の医療機関をたらいまわしに!最後の医療機関で 開腹したら腹膜炎を 併発してもう少しで。。。 今 いなかったかもしれませんでした。もう すっかり記憶には無いんですが ひとつ覚えてるのは 最後の医療機関に 親の運転する車の中で見た (多分)夕陽が やけに黄色かったのを覚えています。そして かなりの虚脱感を感じてました。^^
いろんな経験をした大人の場合、そこにかなりの苦痛と 恐怖感を感じるかもしれないと 今の私は思います。
by ゆうのすけ (2010-10-18 21:38)
ゆうのすけさんへ
コメントありがとうございます。
たらい回しの医療機関に代わってお詫びします。
ただ、お子さんの盲腸は、
非常に診断は難しいと思います。
僕も子供の時、
高い塀から落ちて、
結果的には大したことはなかったのですが、
一瞬「死ぬ」と思い、
その時に見た青空は、
今でも鮮やかに思い出すことが出来ます。
人間にとっての死とは、
そうした形で可視化されるのかも知れません。
by fujiki (2010-10-18 22:13)
よくある話では困るのですが、虫垂炎は難しいですね。
みんな分かってるんだけど、疑っては見るんだけど・・・ってやつですよね。
私は、自慢じゃないけど11歳の時自分で、診断しましたよw
by yuuri37 (2010-10-18 23:41)
yuuri37 さんへ
矢張り経験ある外科の先生の診たてに、
勝るものはないのかな、という気がします。
ただ、迷う時に限って、
病院に紹介し辛いような時間です。
by fujiki (2010-10-19 08:11)