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「夢の庭」を旅する [仏像]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診です。

今日は僕にとっての特別な場所の話です。

先週の水曜日の午後に、
本当に久しぶりに、
青山の「根津美術館」に行きました。

ここは僕の記憶の中で、
イメージの源泉の1つとなっている、
僕にとっては特別の場所の1つです。

そこに僕にとっての特別な庭があります。
こちらをご覧下さい。
根津美術館池.jpg
これが森の中央にある庭です。
苔むした1隻の木彫りの船が、
静かに繋留されています。
眺めていると、
心の奥底まで、
青葉の緑に染まってしまうかのようです。

それから橋を渡ると、道はやがて二手に分かれます。
分かれ道.jpg
この道を、
僕は何故か何度も夢に見ます。

僕はある女性と一緒に、
「永遠の女と永遠の男の横顔」を探しているのですが、
この分かれ道の所まで2人で歩いて来たところで、
何故か彼女は僕と別々の道を選ぶのです。
「石原君はこっちへ行って。私は向こうに行くから」
結局僕は彼女とは別の道を行き、
そこで迷い途方に暮れます。

薬師堂.jpg
狭い道を途方に暮れながら先に進むと、
そこに薬師堂が現われます。
背後は竹林です。
僕はお堂の背後に廻りますが、
そこには何もありません。
ここが東京の真ん中とは思えないような、
不思議な景色です。

小学生の頃仏像が好きで、
二度ほど祖母と奈良に行きました。
その印象が鮮烈で、東京にもそうした場所がないかと、
彷徨うように探し歩いたのですが、
あまりそうした場所が見付かりません。

唯一僕の渇きが僅かに満たされたのが、
根津美術館の庭でした。

その1つがこれです。
根津美術館仏像1.jpg
庭の片隅に無雑作に安置されています。
多分台湾か朝鮮由来のものでしょうか。
大した来歴はなさそうで、
美術品としてもそれほど価値のあるものではなさそうですが、
小学生の頃から何故か気になって仕方がありません。

その謎の笑みを見ていると、
これこそがはぐれた彼女の言っていた、
「永遠の横顔」のようでもあります。

「横顔」じゃない、って?

そんな無粋なことは言わないで下さい。

もう1つ、必ず夢に出て来るのがこれです。
根津美術館観音1.jpg
聖観音のようです。
これもそれほど価値の高いものではなさそうです。
保存も悪く、台座などもう朽ちて穴が開いています。

しかし、何故か魅力的で、
僕を捉えて離しません。

数年前の根津美術館は、
実は非常に寂れていました。

僕は小学校の時にこの庭の中で、
迷子になった思い出があり、
そのために夢の中では未だに迷っているのですが、
15年ほど前に再訪した同じ場所は、
荒れ野原のようになっていて、
とても少年が迷う場所ではありませんでした。

昨年の秋に改修工事が行なわれて、
先週改修後に初めて訪れたのですが、
庭は見事に甦っていて、
新鮮な驚きを感じましたし、
またここで迷っても良いかな、と思いました。

ちょっと不満なのは、
以前は庭には無料で入れたのですが、
今は入場料を払わないと入れない、ということです。
ただ、それは今のご時勢でこの場所を守るためには、
仕方のないことなのかも知れません。
また、小学校の頃の記憶では、
もう数体の仏像があったような気がするのですが、
それは朽ちて撤去されたのかも知れませんし、
僕の記憶の創作だったのかも知れません。

多くのものが時とともに失われて行く中で、
復活する景色があるのは、
勇気を与えてくれるものです。
これがまた、何か良い兆しであれば良いのですが…

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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コメント 8

yuuri37

仏像が好きな私は、中学2年のとき自分で仏像を彫ることを考えました。理想の仏像を身近に置いておきたくなって・・・
この無謀な計画は、左手親指の怪我で終わってしまいました。彫刻刀でグッサリ、かなりの深くまで切ってしまい、指が動かなくなったらどうすると怒られた痛い思い出です。今でもくっきり残っている傷跡を見ると、彫りたかった仏像のシルエットが浮かぶのですが、なぜかお顔は思い出せませんね^^;
by yuuri37 (2010-05-17 11:54) 

みぃ

ここの美術館は、一度も訪れた事がございませんが。先生の懐かしい子供の頃のタイムカプセルなのでしょうか?  又昔の様にお庭が蘇ったとの事、本当に嬉しい事ですね。
あまり、信心深くも無く、仏像にもあまり興味の持てない私ですが、広隆寺の弥勒菩薩像だけは、不思議に魅かれます。 
同じような魅力がこの仏像からも、感じられます。  広隆寺のハッとするような美しさとは違って、無限の優しい母の様な暖かさと言うのでしょうか?  誰でも、私の様な者でも受け入れて、包み込んでくれるような少し人間的な暖かさです。
先生の心が癒されるこの場所が蘇って、本当に良かったですね。
一度、私も機会が有ったら、尋ねて見たいものです。
by みぃ (2010-05-17 15:35) 

fujiki

yuuri37 さんへ
コメントありがとうございます。

僕もそう言えば、何か木彫りを作ろうとしたことがありました。
不器用なので、全然駄目でしたね。
奈良はまた行きたいなあ、と思いますが、
いつになるか分かりません。
7~8年前に、1年に1日しか公開のない、
東大寺の3月堂の金剛力士像を拝観に行ったのですが、
今の人は懐中電灯で仏像を照らし、
お堂の中で写真をバシャバシャ撮りまくるので、
本当にガッカリしました。
それがまた結構年配の方が多いのです。

これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-05-17 15:45) 

fujiki

みぃさんへ
コメントありがとうございます。

松本清張さんの名作「砂漠の塩」では、
この場所で運命の2人が再会します。
ただ、庭の仏像は、
僕は愛着があるのですが、
多分みやげ物に毛の生えたようなものかも知れません。
by fujiki (2010-05-17 15:58) 

midori

新緑がキレイですね.
仏像がそそります.
あの分かれ道も意味深な感じ.
今夜あたり私の夢にも出そうな気が...
by midori (2010-05-17 22:39) 

fujiki

midori さんへ
コメントありがとうございます。

何か実物より色鮮やかに撮れたので、
ちょっと驚きました。
仏像はそそります。
by fujiki (2010-05-18 06:37) 

Liz


石原センセの使用カメラは、SONY CYBERSHOT
なんですね。

わたしはカメラも趣味なんです。腕は無いけれど。

都会にいる事を忘れさせてくれる素晴らしい写真です。
心が洗われます。

石原センセ撮影のこちらの写真はとてもお気に入りです♪♪

by Liz (2010-07-04 10:30) 

fujiki

Liz さんへ
気に入って頂ければ大変嬉しいです。
by fujiki (2010-07-04 12:06) 

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