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全ての医者が労働者になり診療所は消えてなくなる話 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は第4土曜日で、
午後には診療中内科の専門外来があります。

朝からカルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

昨日製薬会社の担当の方から、
ちょっと深刻な話を聞きました。
糖尿病や骨粗しょう症、高脂血症などの薬を、
ごっそりOTCに変更しよう、
という方針が、決定の方向で進められている、
というのです。

朗報だと思われる方も多いかも知れません。

要するに、命にすぐ関わらない病気については、
医者などには行かず、薬局で薬を買って、
それで済ますようにしよう、という方針です。

医療は救急や産婦人科、手術などに限定し、
それ以外は健康保険は使用せず、
医者にも掛からず、
自己責任で治療しろ、という訳です。

これは多分厚生労働省の基本的な方針でもあり、
今その権力を代表する、
医者の仮面を被った悪魔の、
常日頃語っていることでもあります。

この方針によって、
僕のような診療所の役目は終わり、
殆どの開業医や診療所は、
数年のうちには殆どが閉院することになるのでしょう。

僕も今年一杯で仕事を辞めることになるのだろうな、
と密かに覚悟は固めています。

医療費削減の、これが多分切り札ですね。

医者は病院以外には存在しなくなり、
薬は殆どは薬局で自費で買う形式になります。
OTCには薬価はなく、
それが下がることもないのですから、
製薬会社の利潤は確保されるという仕組みです。

僕は僕なりに末端の医者の専門性とその意義を信じて、
日々の診療をしているつもりではありますが、
一般の方から見れば、
そんなものはただの医者の驕りであり、
面倒な診察や高い検査はいらないから、
薬だけ早く出してくれ、
というのが多くの方の本音なのかも知れません。

こうなった原因の多くは、
確かに医者の側にあり、
医師会などはその戦犯の代表格でしょう。

ただし、こうした経過は以前から周到に仕組まれていた気配はあり、
医師会悪玉論を洗脳したこともそうですし、
勤務医vs開業医という対立を煽ったこともそうなのでしょう。
政権交代で更に風通しが良くなり、
そうした主張をする人の意見が通り易くなったという構図です。

勤務医の皆さんもね、
「俺は搾取され、開業医は楽して儲けているんだ」
なんて言うのは、
本当は愚かなことなんだよ。

あなただって開業する、という選択肢はあるんだよ。
実現はしなくたって、その可能性があるのとないのとでは、
全然その意味が違うんだよ。
それはあなたのしている仕事の選択肢の1つなんだから、
それを潰すような発言を、
実地の医者がするのは、
馬鹿の極みなんだよ。
要するに医者は全て労働者にして、
資本家には絶対にさせず、
起業もさせない、というのがあいつらの考えなんだよ。
それに乗せられて、あいつらの意に沿ったことを言わされるなんて、
あなたは最低のことをしているんだよ。

でも、馬鹿なあなたはそうしたことを、
これからも言い続けるのだと思います。

中小の病院はやってはいけなくなり、
大手の企業に買収されます。
つまり、医者自身が経営する医療機関は、
存在しなくなる訳です。

公立の病院の院長は、
厚生労働省の医系技官の天下りです。

うまく仕組んだものですね。

それでも、悪いのは医者なのだと、
僕は思います。

「こんな診療ならいらない。薬だけ売ってくれればいい」
と思わせてしまったのですから。

薬剤師の皆さんは、今後はその責任は今より遥かに重くなる、
と思います。
多分何か資格が創設されるのではないでしょうか?

金食い虫の医者を排除して、
薬剤師や看護師にその代わりをさせ、
医療費を削減しよう、
というのが国の基本的な方針なのです。

これも時代なのでしょうから、
仕方のないことなのかも知れませんね。

目先の人参で踊らされている、
多くの人の思惑とは裏腹に、
医療は確実に悪化して、
立ち行かない状態になると思いますが、
出来ればその前に何かなすべきことはあるのではないか、
と考えたいと思います。

後1日1日を、もっと大事に考えて、
日々の診療に当たりたい。
今日来て頂いた皆さんに、
何か納得をして頂けるように、
僕に出来る何かを、
真剣に探すように、
薬だけを出すだけの医者にならないように。
手術も出来ない医者は医者ではないと思っている悪魔に、
何か一矢を報いられるように
(無理かな…)、
限られた時間で出来ることを、
僕なりに必死でやりたいと思います。

すいません。
ちょっと深刻過ぎて頭が混乱しています。

暗い話で御免なさい。

今日はでも絶対あなたにはいいことがありますよ。
大丈夫ですって。

石原がお送りしました。
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コメント 23

a-silk

石原先生。
今朝はとっても良いことがありました。
母が入所後、一番すっきり、爽やかな顔をして、
朝食のテーブルについていました。
そのうえ、カップを持ち自分で御茶を飲んだのです。
朝からこれほど良い状態の母を見ると、それは嬉しいものです。
以前先生の言われたように、母はゆっくりですが、良くなっています。

先生の日本医療の未来予測が、現実にならないことを、願うばかりです。

by a-silk (2010-02-27 09:37) 

さすらいの、、、

医者知らずで元気に過ごしていた年寄りが起きる時間に起きないので家族が起こしに行ったら冷たくなっていた、、、これは昔なら大往生でお赤飯ものでした。が、今はパトカーと警察嘱託医を乗せた車両が繫がって来ます。隣近所が大騒ぎです。施設か病院で死に出入りの業者から斎場に運ばれ安置され葬儀が営まれ焼骨され遺灰となって我が家へ、、今はこれが普遍化されています。わが市は30余の医療機関があり500床の総合病院、200床が1、近隣の市には大学病院まであるのに<往診可>と標榜する医院は3。3ヶ月で病院を追い出された患者は診療はさておいて死亡診断書を書いてくれる医師を捜し歩き往診をひたすら願う、診療なんていうものではない、点滴1本すらない投薬がせめて。都会は往診医がいるが地方、田舎はいない。かかりつけ医制度とやらはなんであるか、死亡診断書も検認もしたことをきいたこともなく、住宅と医院は別個、時間外はセコム。
先生、なんとかならないものでしょうか。
by さすらいの、、、 (2010-02-27 10:09) 

A・ラファエル

読んでいて涙が出てきました。
先生は、医者にも責任があるという
けれど、私には自分で治ろうとしない患者にも責任があると思います。
薬に頼って病気になった本当の原因には目もくれない患者達。
医療に見放された人達が、最近ヒーリングに駆け込んできている気がしていますが、その多くは治して貰おうと依存しようとする。
病気は、自分が治すのだということを知らない人が多すぎます。
by A・ラファエル (2010-02-27 11:14) 

iyashi

現時点で医師の診察なしに処方設計などありえません。
薬剤師は最先端の臨床の情報はなかなか入ってこないのが現状です。
そのような環境で患者の命にかかわる処方設計は今の私にはできません。
薬がOTCになるということは患者負担も相当増します。3割負担、1割負担のものが単純計算3倍、10倍になるということです。
まったく話にならない、バカ者の意見極まりないですね。
日本は本当におかしくなってしまいましたね。
これにめげずお互い戦っていきましょう。
これからも私は先生を見習い応援していくつもりでいます。
by iyashi (2010-02-27 11:31) 

bibi

はじめまして!
先生のブログは、とても興味深く読ませていただいています。
ちょっと今日の記事を読んでびっくりしました。
私も色々な先生に診てもらって、色々なことを感じていました。
総合病院での診察は、先生が忙しすぎるせいもあるのか、なかなか良く診てもらえないことが多くあります。
説明も不十分、質問しても納得した答えがないなど、これだったら薬局で薬だけ処方してもらうのと変わりがないのでは?と思ったことがあります。
酷いとパソコンばかり診ていて、患者の顔など見ようともしない医者もいます。
その内、診察はパソコンで自分で症状を入力しパソコンが治療を決め薬を処方するようになるのでは?と思ったこともあります。
でも、病気を治すにはそれだけではないと思います。患者の顔色や症状、もっと細かい診察は必要なのではないでしょうか?
薬にしても治療にしても保険適応外のものも沢山あり、これでは命も金しだいの世の中ではないのかと思います。
先生のような医者は、とても大切だと思います。
義務的な医者ではなく気持ちの伝わる医者、信頼関係はとても大事だと思います。
先生がんばって下さい。応援しています。
by bibi (2010-02-27 12:34) 

一歩前進

いつも有難うございます。
何があったのだろうと気になる内容でしたが、
身につまされる思いでした。
皆さんが指摘されていますが、医療の問題は
提供者の側だけではなく患者にも問題があるのに、
政治や経済と同じで、感情論と好悪に基づいた議論ばかりで
情けないやら腹立たしいやらです。
先生のように一生懸命に医療のあり方を考えているお医者さんの
主張が採用されればよいのですが、現状は楽して儲けよう・治そう
という風潮ばかりですね。
20年来の腎臓病患者で、根気強く治療していますが、
真剣に向き合って下さるのが漢方専門医の方だけで、
大学病院から週一で来る医者は、検査をするだけです。
最近、透析センターが激増しましたが、予防と病状進行防止のための
患者教育・医療体制がなければ、何も変わらないと痛感します。
高齢化が進めば確かに医療費は増えるでしょうが、
患者教育、予防と病状の進行防止、といった根本的な治療を
進めればある程度問題を緩和できるはずです。
世界に類を見ない健康保険・国民皆保険制度が、かえって
治療への努力を放棄することになっているとしたら、
それこそが真の医療の病根かと。
先生のようなお医者様が一人でも多くいることを信じていますし、
そういう方たちが医療を変えて下さることを応援しています。
辛いことや悲しいこと、怒ることもあって当然ですし、
愚痴を吐かれるのも読み手を信頼して下さってのことですから、
寧ろ有難いことです。
自分が言うのは何ですが、どうかお身体には気をつけて、
ご自身の目指される医療の実現を目指して下さい。
by 一歩前進 (2010-02-27 14:33) 

fujiki

a-silk さんへ
本当に良かったですね。
更に少しずつ、良くなっていくと思います。
低血糖にだけは気を付けて下さい。
by fujiki (2010-02-27 18:03) 

fujiki

さすらいの、、、さんへ
コメントありがとうございます。

それはちょっと酷いですね。
東京では往診はしないと生きてはいけません。
でも多分そうした流れには、早晩なると思います。
そうしたお話を聞くと、
医者は締め上げればいいんだ、
という意見の説得力が増してしまいますね。
by fujiki (2010-02-27 18:06) 

fujiki

A・ラファエルさんへ
コメントありがとうございます。

そうですね。
一時は薬を減らそう、という議論が主体であったのに、
いつの間にか、健康保険さえ使わなければ、
薬はじゃんじゃん使おう、
というような利益優先の考えに変わって来たように思います。
薬で儲ける、という卑しい考えがその根底にあります。
by fujiki (2010-02-27 18:10) 

fujiki

iayashi さんへ
コメントありがとうございます。

もう少し医療の専門職が一致団結して、
発言していかないと、
この流れは止められないのかも知れません。
by fujiki (2010-02-27 18:12) 

fujiki

bibi さんへ
コメントありがとうございます。

長年の付けが廻って来たのでしょうか。
薬を出すだけの医者は、
不要だ、ということなのだと思います。
by fujiki (2010-02-27 18:15) 

fujiki

一歩前進さんへ
コメントありがとうございます。

勿論医療の改革は必要だと思いますが、
ただ1人の外科医の独断で、
全てが一方的に決められてゆく現状は、
あまりに無茶だと思えてなりません。
by fujiki (2010-02-27 18:20) 

ちびらママ

はい、先生。今日、私、いいことありましたよ。本当にいいことでした。
私は先生の診療が好きです。先生は私の目を見てくれる。
人に理解されにくい病気を抱えて、家族にもわかってもらえず、病院にいけば、ペンを持って下を向いたままのお医者さんに薬だけもらい、自分がどんな状態なのかもわからずにいた。
小さな通りの小さな診療所は、私を受け入れてくれた。
それがなくなるような未来なら、私たちも声を上げるでしょう。
患者が本当に望むのはどんな医療なのか、を理解してもらいたいものですね。
きっと、先生にもいいこと、ありますよ。
こんなに愛読者もいるのですから。
by ちびらママ (2010-02-28 00:08) 

CountryBoy

糖尿病等の薬をOTCに変更・・・・・?
薬局で糖尿病の患者さんの血糖値をコントロール
等、出来る筈が有りません。
おかしな話ですね。
by CountryBoy (2010-02-28 16:04) 

fujiki

ちびらママさんへ
コメントありがとうございます。
ちびらママさんに失望されないように、
出来るだけ踏ん張りたいと思います。

by fujiki (2010-02-28 21:08) 

fujiki

CountryBoy さんへ
コメントありがとうございます。

まだどうなるのか分かりませんが、
真面目に議論されていること自体は、
事実です。
by fujiki (2010-02-28 21:10) 

zz

私は先生の診察が大好きですよ。
先生のくれる言葉やアドバイスで何度助けられた事か。
私の微妙な不調の原因を見つけ出してくれたり、分かりやすくいろんなお話をしてくれたり、合わないお薬を見つけ出してくれたり。
失礼な言い方かもしれないですが、とてもよく勉強されてらっしゃって、知識の幅も広く、ちょっとはっきりしない事は次の診察までに調べてくれていたり。
不安で先の長い病気を抱えてグダグダしている私に、どう考えて進めばいいか示してくれたり。
私の気持ちが不安定な時は、隠しても、何故か察知して、必ずやさしい顔して笑ってくれる。
でも、お礼を言うと恥ずかしそうに目をそらすのも知ってます。

私の一番のお薬は先生かも。
先生は私のヒーロー、私の生活に欠かせない存在。
依存してはいないつもりだけど、いなくなったら絶対困る。

私がもっとも信頼している自慢のドクターです。
本当に先生と出会えてよかったと思うから、これからも長く付き合っていきたいです。

私や他の患者さんにもいっぱいよくしてくれてるから、先生にも沢山いいことあるから大丈夫。
by zz (2010-03-01 00:03) 

fujiki

zz さんへ
過分なコメントありがとうございます。
僕に出来る範囲で、
どうにか頑張ります。

これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-03-01 08:27) 

midori

お疲れ様です.
昨日はオペラに行かれたのでしょうか.
(津波騒ぎで電車のダイヤが乱れていましたけれど)

近々,診療所に伺おうかなと思っています.
かかりつけ医を持っていないので,できれば先生に主治医として永くメンテナンスいただければなぁと.
宜しくお願いいたします.
by midori (2010-03-01 11:24) 

fujiki

midori さんへ
オペラは行きました。
30分遅れの開始でした。
ぼちぼちくらいの出来でした。

よろしければいつでもどうぞ。
責任重大ですが、お待ちしています。
by fujiki (2010-03-01 22:50) 

midori

先日は,甲状腺の検査を丁寧にしてくださり,有難うございました.
検査結果を聞きに来週伺いますので,宜しくお願いいたします.

by midori (2010-03-14 13:55) 

fujiki

midori さんへ
そうですか。
先に言って頂ければもっとサービスしたのに…
何て、それじゃ不謹慎ですね。
by fujiki (2010-03-14 16:15) 

midori

・・・すみません.
名乗ったほうがいいんだろなぁと思いつつ,言いそびれてしまいました.
しまったな,サービス受け損ないましたね(笑).

by midori (2010-03-14 16:43) 

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