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ステロイドで骨が減るのは何故か? [科学検証]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻ります。

それでは今日の話題です。

ステロイドをプレドニゾロン換算で、
通常1日5mg以上、おおむね3ヶ月以上使用すると、
骨の量が減るリスクが高まります。

これは皆さんもよくご存知の事実です。

しかし、それは一体何故で、
それを予防するのに一番理に適った方法は、
何でしょうか。

骨の細胞のレベルで考えると、
いたってシンプルな気もします。
ステロイドは強力な免疫抑制剤です。
リンパ球から出るIL1と IL6 という物質を抑えます。
しかし、これは骨を作る細胞に、
必要な物質でもあるのです。
従って、ステロイドがある程度以上の量存在すれば、
骨は減ります。

如何にも分かったような説明です。

ただ、これは通常は、
実験室の中で細胞のみを取り出して実験したデータか、
動物実験からの推測でしかありません。
たとえばあなたが、
ステロイドを治療の目的で飲んでいて、
自分の骨には今どんな現象が起きているのだろう、
と考える時、
IL1とIL6が減っているんだよ、
と言われたところで、
あなたの身体にとってそれがどんな意味を持ち、
それに対してどう対処するべきかについて、
何かを語ってくれる訳ではありません。

でもたとえば、
簡単な血液の検査や尿の検査で、
身体で今まさに起こっていることが推測出来るとしたら、
それはあなたにとって、
必ずや有益な情報となる筈です。
その情報を元に、
ステロイドの量の調節をしたり、
適切な薬を使って、
副作用を予防することに役立つからです。

これがすなわち臨床研究というものの、
意義であり、醍醐味ですね。

それではステロイドによる骨の変化が、
血液や尿の、
どのような変化に反映されるでしょうか。

そんなことはとっくに分かっている筈だと、
皆さんは思われますか?

それが意外にそうでもないのです。
これをご覧下さい。

少し以前にまとめたものなので、
古い論文ばかりですが、
ステロイドを飲んでいる患者さんの、
骨の異常を研究した文献の結果を表にしたものです。

たとえば、右から3行目を見て下さい。
PTHというのは、副甲状腺ホルモンの略です。
論文によって、
ステロイドを飲むと、
上がるというデータから、
変わらないというデータ、
下がるというデータまで、
様々です。
つまり、一定した結果は出ていないのです。
今ではもっと論文は多く出ていると思いますが、
こういう研究はあまり流行りではないですし、
それほどの進歩はない筈です。
今は細胞レベルの話の方が、
ずっと尊重されているからです。

でも、僕は細胞レベルの研究も大事ですが、
こうしたすぐに治療に直結する臨床研究も、
車の両輪のように大事なものだと思っています。

問題のポイントは、
ステロイドの量にあります。

細胞レベルの実験では、
人間が治療として使うのとは、
桁違いの大量を使う訳です。
確かにそれだけの量を使えば、
免疫は強力に抑えられ、
骨は作られなくなります。
しかし、それをたとえば毎日10mgの、
プレドニゾロンを飲んでいる患者さんに、
そのまま適応出来るでしょうか。

出来る訳がありませんよね。
細胞レベルの実験の、
これが1つの限界なのです。

その一方で、
患者さんを対象にした臨床の実験では、
患者さんに害になるような実験を、
する訳にはいきません。
おのずと、実際にステロイド治療の必要な患者さんで、
骨に関するデータを取るしか方法はない訳です。
その対象もステロイドの量も、
ご病気の性質もまちまちなのですから、
上の表のように、
どうしてもまちまちの結果が出てしまうことが多いのです。

それでは長くなりましたので、
今日はこのくらいで。

明日は以前調べた僕自身のデータを、
お見せしたいと思います。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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