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ステロイドの話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から介護保険の書類など書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

ステロイドの話をします。

ステロイドとは何でしょうか?

ステロイド核という構造を持つ、
ホルモンの総称です。

ステロイドホルモンには大きく分けて6種類があり、
これらは、糖質コルチコイド、電解質コルチコイド、
アンドロゲン、エストロゲン、
ゲスタゲン、そしてビタミンDと呼ばれています。

一般的に「ステロイドの副作用」とか、
「ステロイドは怖い薬だ」、
と言われるのは、
このうちの糖質コルチコイドのことを指しています。
しかし、人間の身体はそれ以外にも、
色々なステロイドを作っているのです。

このうち、糖質コルチコイドと電解質コルチコイド、
そしてアンドロゲンの一部は副腎で作られます。
副腎というのは、両方の腎臓の上に張り付いた、
三角形をした小さな腺組織です。

脳の視床下部という場所から、
CRH(corticotropin-releasing hormone)
と呼ばれるホルモンが出て、
それに刺激されて脳の下垂体から、
ACTH(adrenocorticotropic hormone)
が分泌され、
それが血液を巡って副腎を刺激すると、
副腎はせっせとステロイドホルモンを作ります。
この材料はコレステロールです。
皆さんよくご存知のコレステロールから、
人間はステロイドホルモンを合成するのです。

ステロイドホルモンは、
副腎以外の場所でも作られます。

アンドロゲンは男性ホルモンですから、
精巣で作られ、
エストロゲンは女性ホルモンですから、
卵巣で作られます。
ビタミンDはステロイドの変り種で、
体内でも合成されますが、
食事からのビタミンDから、
活性化されて作られることの方が、
メインの経路です。
従って、ビタミンDをあまり取らないと、
欠乏の症状が出ることがあるのです。

よろしいでしょうか。

副腎で作られる糖質コルチコイドを、
コルチゾン(cortisone)と言います。
その活性型がコルチゾール(cortisol)です。

1933年に初めて、副腎からコルチゾンが抽出されました。

副腎皮質のエキスが、
ストレスに対しての身体の反応を強化することは、
それ以前から知られていました。

その後第二次世界大戦で、
ドイツ軍の兵士が副腎のエキスを注射されている、
という情報がアメリカに伝わり、
アメリカでのステロイド研究が一気に進歩した、
という有名な話があります。
兵士に使用する目的で、
多くのステロイドの薬が作られ、
戦後その薬が様々な病気に使われて、
劇的な効果を挙げたのです。

それでは糖質コルチコイドの作用について、
話を進めます。

その名称からも分かるように、
糖質コルチコイドの大きな働きは、
ブドウ糖を沢山作り、身体で利用することです。
身体がストレスに曝されると、
ブドウ糖の必要性が増すので、
その需要に対応した身体の仕組み、
と考えることが出来ます。

人間の三大栄養素は、
糖質と蛋白質と脂肪です。
糖質コルチコイドは蛋白質を壊し、
そのアミノ酸を利用して、
肝臓でブドウ糖を合成します。
(これを糖新生と言います)
ブドウ糖を筋肉で利用するのに必要な、
インスリンというホルモンを抑え、
筋肉がブドウ糖を取り込めなくします。
脂肪に対する作用はちょっと複雑で、
手足に付いた脂肪は分解して脂肪酸にしてしまうのに、
何故かお腹の脂肪は増やしてしまいます。
糖質コルチコイドは肝臓にも直接作用して、
ブドウ糖をどんどん作らせます。

ブドウ糖をエネルギーとして使う組織の代表は脳ですから、
糖質コルチコイドは、
脳への栄養を沢山補充するためのシステム、
と考えることも出来ます。

糖質コルチコイドのもう1つの重要な働きは、
「抗炎症作用」です。

皆さんもご存知のように、
糖質コルチコイドは、
極めて強力に身体の炎症を抑えます。
特にアレルギーの関与した炎症を抑えるのに、
抜群の効果があります。
アレルギーというのは、
一種の「自己免疫反応」ですから、
糖質コルチコイドは、
ある種の免疫を、強力に抑える効果があるのです。

この点から、
糖質コルチコイドの作用を、
T細胞というリンパ球の作用を抑える部分と、
それ以外の部分に分けて検討する、
という考え方もあります。

糖質コルチコイドには、
それ以外にも血圧を維持するなど、
多くの作用がありますが、
複雑怪奇になるので、
ここではそこまでは触れません。

ただ、副腎のホルモンが完全になくなると、
人間は1週間以内に死亡すると言われています。
その原因は低血圧と低血糖です。
このうち低血糖に関しては、
糖質コルチコイドが主な役割を果たしているのです。
要するに通常量の糖質コルチコイドがないと、
人間は血糖を維持することが出来ません。
脳にブドウ糖が供給されず、
脳は活動を停止してしまうのです。

1948年に慢性関節リウマチの治療で、
劇的改善の報告のあって以来、
糖質コルチコイドは主に原因不明の炎症に対して、
広く用いられ、リウマチは勿論のこと、
皮膚炎や気管支喘息、リンパ系の腫瘍などで、
それぞれ画期的な治療成果を挙げました。

今日人間の利用可能な薬の中で、
おそらく最も有効性の高い薬の1つです。
糖質コルチコイドの利用なしの、
現代医療など考えられません。

ところが…

皆さんご存知のように、
この薬には多くの副作用があります。
慢性の病気で糖質コルチコイドを使わざるを得ず、
その副作用に苦しんでいらっしゃる方も多いのが現実です。

明日はその副作用とそのメカニズムについて、
話を進めます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ワタベ

はじめまして。blogを読ませて頂きました。ステロイドをリュウマチ治療の為に先月の1月23日から2週間毎日20㎎
2週間後から更に2週間毎日5㎎
になりました。
確かに痛みはとれましたが、そもそも
血液検査も特に異常がない中での
リュウマチとの診断にあたしは、不思議に感じながらも出されたステロイドを飲んでます。
関節の痛みは確かにとれましたが、
変わりに、乳腺が痛くてしょうがありません。
先生に聞きましたら
「そんな副作用はきいたことないなぁ。多分、普段から先生前に乳腺が張る人なら多少副作用で影響してるかもなぁ。」と言われ、ハッキリした答えを頂けませんでした。
乳腺が張って痛んだりすることはありますか?

良かったらお返事頂けると嬉しいです。飲んでるステロイドはプレドニンです。
by ワタベ (2016-02-18 16:22) 

fujiki

ワタベさんへ
プレドニンが直接乳腺を刺激する、
ということは考えにくいように思います。
ただ、ステロイドにより感染は起こりやすくなりますので、
乳腺の感染症が要因となっている可能性はあると思います。
乳腺全体の腫れや痛みがあるようでしたら、
原因は別個の可能性が高いと思います。
乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)などの測定を、
やっておいた方が良いかも知れません。
by fujiki (2016-02-19 08:22) 

ワタベ

ご丁寧にありがとうございました。
昨日やはり、病院に行って聞いたら
「生理が来て痛みが止まれば、多分生理前のpmsで、しょうから気にしなくていいですが、それからも痛みがある場合はステロイドを止めましょう。」と言われました。

結構無知な、患者のあたしに
どうします?
と選択させるのが
信頼できない不安の要素になってます。

プロラクチン初めて聞きました。
婦人科にいった方がいいですか?
内科でも分かりますか?

ステロイドの副作用に気持ちが折れそうです。

主治医は、次の生理が来て痛みが取れるか様子を見る事を進めますが。。

近所に信頼できる先生がいないので
なやんでばかりです。
by ワタベ (2016-02-19 08:44) 

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