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チェーホフの世界 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は休みで、
少し散歩に出るくらいで、
後は家にいるつもりです。

休みの日は趣味の話題です。

チェーホフの芝居は好きだし、
抜群にうまいのですが、
現在の日本で上演して、
面白い芝居になることは、
極めて稀だと思います。

現在上演されている戯曲は、
それほど多くはないですよね。
「かもめ」と「ワーニャおじさん」、
「三人姉妹」と「桜の園」。
この4本に、初期のボードヴィルとしての小品が、
手直しをして演じられるくらいです。

僕が一番好きなのは、「三人姉妹」。
アラン・アッカーマンが演出した、
TPTの舞台が強く印象に残っていて、
チェーホフの素晴らしさに初めて触れた気がしました。
三女のイリーナを演じた粟田麗が抜群で、
舞台上で二度涙を流すのですが、
それが「松たか子」や「大竹しのぶ」の「演技としての涙」ではなく、
本物の涙だったのが心に沁みました。

あまりに良かったので、
楽日にもう一回観に行ったのですが、
その時の方が演技には力が入っていたのに、
彼女の目からは涙は流れませんでした。

「本物の涙」とは、多分こうしたものですね。

「三人姉妹」は全部好きなんです。
でも、たとえばこれからお芝居を観よう、
というような人にはお勧めはしません。
長いし退屈です。
僕も多分実際の上演はもう一生観には行きません。
ここには、少なくとも人生の真実の、
ある断面が鮮やかに描かれていますが、
それは現在同じように上演して、
観る人の心に響くレベルのものとは、
ちょっと違う、という気がするのです。

現代には現代のチェーホフがいなければいけません。
でも、断言しますがそんな作家はいません。

あと僕が好きなのは、
「かもめ」のオープニング。
脇役の2人がさりげなく道を歩いて来て、
言葉を交わすのですが、
そのさりげなさが何とも言えずに趣があり、
その上斬新でもあります。
その数分だけで、
人生の深淵が舞台上に仄見え、
青草の香りが漂って来るようです。
この場面を割りと仰々しく演じさせる演出もあって、
これは最低ですね。

「桜の園」には、僕は未だにピンと来ない部分があります。
内容をしっかり把握して、
演出されることも少ないという気がします。

チェーホフには短編小説の優れた作品が多く、
村上春樹は旅のお供に一冊本を持って行くとすれば、
チェーホフの短編に限る、
みたいな意味合いのことを活字にしています。
さもありなん、という気がしますね。

今日はこれだけです。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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