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診断に長期間を要した貧血の事例 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から往診に行って、
診療所に戻り、
書類の整理をちょっとして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は診療所で経験した、
ある事例をご紹介します。

患者さんはBさん。70代の男性です。
慢性胃炎やお風邪などで、
不定期に診療所を受診されていました。

ある年の健診で、
血液の検査をしたところ、
ヘモグロビンが11.8g/dl という、
軽度の貧血を認めました。
貧血のタイプは「正球性」と言って、
赤血球の粒の大きさは正常のタイプです。
白血球はやや少なめでしたが、
異常というほどではなく、
血小板の数値も正常でした。

貧血の原因としては、
鉄が足りないための貧血がポピュラーですが、
その場合、通常は「小球性」と言って、
赤血球の粒は小さくなります。
また、ビタミンB12が不足して起こる貧血では、
逆に「大球性」と言って、
粒は大きくなります。
Bさんの貧血は「正球性」ですから、
上のような原因は考え難いのです。

「正球性」の貧血の原因として、
癌によるものや、白血病を含む血液の病気、
それからじわじわと出血が進んでいる場合、
などの可能性が考えられます。

そこで僕は、癌のチェックのために、
胃カメラと超音波検査、
腫瘍マーカーと言われる血液の検査、
血液の病気のチェックのために、
白血球の分画と血液の蛋白の分画、
出血のチェックのために便の潜血反応などを行ないました。

胃カメラの検査では、慢性胃炎のみで、
癌や潰瘍はありませんでした。
便の検査も陰性で、
出血の可能性も低そうです。
超音波の検査や腫瘍マーカーも正常で、
白血球にも異常な細胞はなく、
蛋白の組成も正常です。

要するに、これといった原因は、
見付からなかったのです。

その結果をBさんに説明し、
当面3ヶ月後にもう1度貧血を調べる方針としました。

体質的な貧血かも知れないので、
経過を見ることにしたのです。

それから3ヶ月後、
Bさんは診療所を訪れました。
その時の話では、
1ヶ月ほど前から腰が痛くなり、
最近は足の痺れも出るようになって来た。
整形外科でレントゲンを撮ったけれど、
骨が少し変形しているだけで、
大きな異常はないと言われた、
とのことでした。

採血をしたところ、
ヘモグロビンは10.3に低下していました。
他の所見は特に変わりません。

僕は血液の病気を疑い、
近隣の大学病院の血液内科に、
Bさんを紹介しました。
血液を作る力が低下するような、
何らかの病気の可能性が高いと考えたからです。
その場合、通常の血液検査では異常がなくとも、
太い骨に針を刺して、
中の「骨髄」を検査する、
骨髄穿刺を行なえば、
原因が特定出来る可能性があります。

Bさんは整形外科の腰の治療を続けながら、
血液内科を受診しました。

ところが…

血液内科の専門医の対応は、
意外なものでした。
もう1度血液の検査をした上で、
「大した心配はなさそうなので、
3ヶ月くらい様子を見ましょう」、
と言うのです。
僕への返書にも、
「血液疾患の可能性は高くはなく、
貧血も軽いので様子を見ます」、
とはっきり書かれていました。

しかし、その間にもBさんの腰痛は悪化し、
整形外科でMRI検査が予定されました。

その結果、
腰の骨のあちこちに、
骨が破壊された所見が見付かりました。
他の場所から骨に癌が転移したか、
骨髄腫という血液の癌の一種を疑わせる所見でした。

しかし、骨髄腫であれば、
通常は血液の蛋白が増え、
蛋白分画という検査で、
特徴的な異常が出る筈です。
何度調べてもそんな異常はありません。
癌の転移だとすれば、
何処に大元の癌があるのでしょうか。
超音波でも胃カメラでも便の検査でも胸の写真でも、
全く異常はないのです。

そもそも貧血とこの骨の所見には、
関係があるのでしょうか。

いずれにしても、3ヶ月も待ってはいられません。
僕は再度血液内科に紹介状を書き、
早急に行って頂くように段取りを組みました。

しかし、結局診断が付くまでには、
更に2ヶ月が掛かったのです。

Bさんの病気は一体何だったのでしょうか?

皆さんも少しお考え下さい。

それでは今日はこのくらいで。
この続きは明日にお送りします。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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