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続・診断に長期間を要した貧血の事例 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は昨日の続きです。
昨日の記事を読まれていない方は、
まずそちらからご覧下さい。

Bさんは原因不明の貧血と、
激しい腰痛に苦しめられ、
腰の骨には複数の骨の破壊像が見付かりました。

その所見を添えて、
血液内科に紹介したのですが、
血液内科の主治医は、
「これは骨の病気かも知れないから、
まず整形外科に診てもらえ」、
と言って、Bさんを整形外科の診察に廻しました。

整形外科の外来では、
全身の骨の写真を撮りまくり、
壊れた骨の部分に放射能の集まる、
骨シンチという検査を予約しました。
この検査の予約に3週間待たされ、
検査を受けると、
その結果は更に2週間後の外来で説明する、
と言われます。
それで既に5週間です。
その間にBさんの腰の痛みは夜眠れないまでに悪化し、
胸にも新たな痛みが生じました。
足の痺れも悪化して殆ど食事も摂れない状態です。
Bさんはたまらず、
「入院させて欲しい」、と訴えましたが、
整形外科の主治医は、
「あなたは歩いてここまで来れてるじゃない。
もっと具合の悪い患者さんがね、
一杯入院を待ってるんだよ」、
と逆に怒られてしまいました。

痛み止めを飲んでなんとかしのぎ、
検査の結果が分かる、という日に病院を受診しました。

すると整形外科の主治医は殆どBさんと目を合わせることなく、
「問題ないですね。整形外科の病気はありません。
もう来なくていいですよ」、
と言います。
「でも、この痛みはどうすればいいんですか?」
とBさんが言うと、
「痛みは治る可能性もあります。
でも、痺れは治りませんよ」、
と言い放ちます。
「これからどうすればいいんですか?」
と訊くと、面倒臭そうに、
「内科に行って下さい」、
と言われます。

それでいて、別に整形外科の主治医は、
内科の予約を取ってくれる訳ではありません。
Bさんは自分で血液内科の予約を取り、
前の主治医を5週間ぶりに受診します。

血液内科の主治医は、
「それほどのことはないので、
もう少し様子を見ましょう」、
と再度言います。
しかし、Bさんも早く原因を知りたい、
と今度は食らい付き、
主治医は「じゃあ、骨髄の検査をしましょうか。
でも、私は必要ないと思いますけどね」、
と、あくまで消極的な態度ながら、
骨髄の検査を予約します。

この検査がまた2週間後で、
その結果がまた3週間後です。

Bさんは骨盤の上の骨に針を刺し、
骨髄を取りました。

そして3週間後、
遂に診断が確定したのです。

診断名は「IgD型多発性骨髄腫」。

診察の時、血液内科の主治医は「患者説明」用の紙を書き、
説明の後でそれをBさんとBの奥さんに渡します。

僕も後で見たその紙には、
診断「多発性骨髄腫」と無雑作に書かれ、
「血液の癌の一種。IgD型は特に予後が悪い」
「治癒はしない」
と続きます。

皆さんはどうお思いになりますか。

内容は確かに事実ですが、
患者さんにその場で説明し、
ご本人に手渡す書類としては、
如何にもむごい冷酷な書き方ですよね。

しかし、酷いのはそれだけではありません。

「治療はこの病院では空きがないので出来ません。
○○病院へ行って下さい。紹介状は書きますから。
行って見て、もしあちらで無理と言われたら、
また来てもらってもいいです。
その時は対応しますから」
と主治医は続けます。
「○○病院というのは初めて聞くんですが、
先生が連絡して頂けるんですか?」
とBさんがおずおず訊くと、
「今私は診察中なので、
そんなことは出来ません。
電話とかも今は分からないから、
何処かで調べて下さい。
紹介状も今は書けないから、
そうだな、2,3日したら取りに来て」
とこれで終わりです。

Bさんはすぐに僕の所に見えたので、
僕が○○病院に連絡しました。
それから再度病気のことについて、
Bさんに説明しました。

もう以前のことですが、
何故こんな病院に紹介してしまったのかと、
本当に悔いの残る経験です。
あと、何故もっと早く診断が付けられなかったのかと、
そのことも悔やんでも悔やみ切れません。

ちょっと長くなりましたので、
この病気の本態については、
明日ご説明します。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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けろきち

こんにちは。引き続き毎日読ませていただいております。

患者さんのために一生懸命がんばってくれている先生がたくさん
いる中、このようなDr.がいることに腹が立ちました。

いくら予後不良とはいえ、早く診断され治療が開始されれば、痛み
の軽減くらいは可能だと思います。
もちろん、積極的な治療を行うにしても、早い方がいいですよね。
(今なら、ステロイドとサリドマイドの併用が奏功すると聞きかじり
ましたが、どうなのでしょうか?)

医師不足に対応するため、来年度の医学部定員を増加するとのこ
とですが、量だけではなく質の向上もお願いしたいところです。
生意気なことを言ってすみません。
もしも自分や身近な人がその立場だったら?!と考えると悲しくなり、
コメントさせていただきました。


by けろきち (2009-02-03 17:06) 

fujiki

けろきちさんへ
いつもありがとうございます。

勿論、患者さんのことを第一に考える医者が、
大多数だとは僕も思います。
ただ、その一方で、
記事に書いたような出来事が、
毎日起こっているのもまた、
医療の現実なのですね。

大きな病院で複数の科に掛かっていると、
責任の所在が不明確になるような、
縦割りの弊害が一番の問題かな、
という気もします。
いずれにしても、
専門医に紹介して終わりではなく、
その後の経過にも責任を持つことが、
僕のような末端の医者のやるべきことではないか、
と心に刻んでいるところです。

by fujiki (2009-02-03 21:46) 

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