睡眠のメカニズム [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は東京と埼玉と、
産業医の面談で2箇所を廻ります。
それでは、今日の話題です。
今日は睡眠のメカニズムの話です。
人間には起きている状態と、
寝ている状態とがあって、
寝ている状態の中には、
「レム睡眠」と呼ばれるやや浅い睡眠の状態と、
それ以外のもう少し深い睡眠である、
「ノンレム睡眠」と呼ばれる状態があります。
これは哺乳動物全体の特徴です。
要するに、
哺乳動物は覚醒状態と、
レム睡眠と、ノンレム睡眠という、
3つの意識の状態を、
繰り返しながら生きている、
と言うことが出来ます。
意識というのは、自分の外の事物にどれだけの注意を向け、
それに対してどれだけ反応出来る状態か、
ということです。
起きていると目の前の物を見たり、
音を聴いたりしますよね。
寝ていれば、それは出来ません。
だから、寝ている時と起きている時では、
意識の状態は違っている訳です。
「レム睡眠」は浅い眠りの状態で、
その時には眼球が小刻みに動いていて、
筋肉が弛んでいるなど、
幾つかの特徴があります。
夢を見るのはこの状態の時だというのも、
ほぼ間違いのないことです。
人間の眠りはほぼ90分ごとに、
「レム睡眠」が起こる、
という1つのリズムがあり、
眠りが進むにつれて、
その「レム睡眠」の時間は延びて行きます。
通常の覚醒は、
「レム睡眠」の後で、
少し意識レベルの上昇する時間があって、
それから醒めるのですが、
「レム睡眠」の状態から、
一気に覚醒することもあって、
その時には、
「悪夢から急に目覚めた」ような、
嫌な気分や動悸がすることが多いのです。
睡眠の障害では、
大なり小なり、
この「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」との、
バランスの乱れが生じています。
ただ、それが障害の原因なのか結果なのかについては、
はっきりしていない部分があります。
最近の研究によって、
睡眠と覚醒を調節する神経の繋がりには、
幾つかの種類のあることが分かって来ました。
大雑把に言って、4種類の神経の繋がりがあり、
それが複雑に絡み合って、
睡眠と覚醒の調節を行なっています。
そのうち脳幹と言われる部分に主に活動している神経が、
「レム睡眠」を司っていることが証明されています。
睡眠の研究には犬を使うことが多いのですが、
その部分の神経を切除した犬は、
「レム睡眠」が消失してしまったのです。
(犬好きの方には申し訳ありません。
残酷な実験ですね)
「レム睡眠」の時には、
筋肉が弛んでいるので、
人間は通常動くことは出来ないし、
言葉も喋ることは出来ません。
これは「レム睡眠」を司る神経そのものの働きではなく、
それに結び付いた神経が、
筋肉の働きを抑える部分に繋がっているからだ、
と言われています。
たとえば、夢を見ながら寝言を言いますよね。
それから、夢の内容に合わせて、
ちょっと身体を動かしたりもすることがあります。
これは皆さんも、
身近に経験のあることだと思います。
厳密に言えば、
これは「レム睡眠行動障害」と言われる症状です。
「レム睡眠」の状態なのに、
筋肉の抑制が充分に働いていないのです。
しかし、軽いものは、
それほど病的とは言えないですね。
教科書によっては、全て異常のように書いてあるものもありますが、
それは違うと僕は思います。
「レム睡眠」と筋肉の抑制との結び付きは、
それほど強固なものではないのですね。
ただ、明らかに病的な場合もあります。
ある時期から寝言が急に増えたり、
寝たまま身体だけ起き出したりするような場合は、
他の脳の病気の可能性が高くなります。
また、覚醒時に「レム睡眠」を作る神経の興奮が起こると、
感情が高ぶった時に身体の力が抜ける、
「情動脱力発作」という症状があります。
これは「ナルコレプシー」の特徴ですね。
「レム睡眠」が何故あるのか、
という質問の答えは、
夢は何故見るのか、という疑問と一緒で、
未だ明確な結論が出ていません。
こうした「何故」は、
現代科学のあまり得意な分野ではないのですね。
それでは、今日はこのくらいで。
明日は睡眠に関わる病気の話に進む予定です。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は東京と埼玉と、
産業医の面談で2箇所を廻ります。
それでは、今日の話題です。
今日は睡眠のメカニズムの話です。
人間には起きている状態と、
寝ている状態とがあって、
寝ている状態の中には、
「レム睡眠」と呼ばれるやや浅い睡眠の状態と、
それ以外のもう少し深い睡眠である、
「ノンレム睡眠」と呼ばれる状態があります。
これは哺乳動物全体の特徴です。
要するに、
哺乳動物は覚醒状態と、
レム睡眠と、ノンレム睡眠という、
3つの意識の状態を、
繰り返しながら生きている、
と言うことが出来ます。
意識というのは、自分の外の事物にどれだけの注意を向け、
それに対してどれだけ反応出来る状態か、
ということです。
起きていると目の前の物を見たり、
音を聴いたりしますよね。
寝ていれば、それは出来ません。
だから、寝ている時と起きている時では、
意識の状態は違っている訳です。
「レム睡眠」は浅い眠りの状態で、
その時には眼球が小刻みに動いていて、
筋肉が弛んでいるなど、
幾つかの特徴があります。
夢を見るのはこの状態の時だというのも、
ほぼ間違いのないことです。
人間の眠りはほぼ90分ごとに、
「レム睡眠」が起こる、
という1つのリズムがあり、
眠りが進むにつれて、
その「レム睡眠」の時間は延びて行きます。
通常の覚醒は、
「レム睡眠」の後で、
少し意識レベルの上昇する時間があって、
それから醒めるのですが、
「レム睡眠」の状態から、
一気に覚醒することもあって、
その時には、
「悪夢から急に目覚めた」ような、
嫌な気分や動悸がすることが多いのです。
睡眠の障害では、
大なり小なり、
この「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」との、
バランスの乱れが生じています。
ただ、それが障害の原因なのか結果なのかについては、
はっきりしていない部分があります。
最近の研究によって、
睡眠と覚醒を調節する神経の繋がりには、
幾つかの種類のあることが分かって来ました。
大雑把に言って、4種類の神経の繋がりがあり、
それが複雑に絡み合って、
睡眠と覚醒の調節を行なっています。
そのうち脳幹と言われる部分に主に活動している神経が、
「レム睡眠」を司っていることが証明されています。
睡眠の研究には犬を使うことが多いのですが、
その部分の神経を切除した犬は、
「レム睡眠」が消失してしまったのです。
(犬好きの方には申し訳ありません。
残酷な実験ですね)
「レム睡眠」の時には、
筋肉が弛んでいるので、
人間は通常動くことは出来ないし、
言葉も喋ることは出来ません。
これは「レム睡眠」を司る神経そのものの働きではなく、
それに結び付いた神経が、
筋肉の働きを抑える部分に繋がっているからだ、
と言われています。
たとえば、夢を見ながら寝言を言いますよね。
それから、夢の内容に合わせて、
ちょっと身体を動かしたりもすることがあります。
これは皆さんも、
身近に経験のあることだと思います。
厳密に言えば、
これは「レム睡眠行動障害」と言われる症状です。
「レム睡眠」の状態なのに、
筋肉の抑制が充分に働いていないのです。
しかし、軽いものは、
それほど病的とは言えないですね。
教科書によっては、全て異常のように書いてあるものもありますが、
それは違うと僕は思います。
「レム睡眠」と筋肉の抑制との結び付きは、
それほど強固なものではないのですね。
ただ、明らかに病的な場合もあります。
ある時期から寝言が急に増えたり、
寝たまま身体だけ起き出したりするような場合は、
他の脳の病気の可能性が高くなります。
また、覚醒時に「レム睡眠」を作る神経の興奮が起こると、
感情が高ぶった時に身体の力が抜ける、
「情動脱力発作」という症状があります。
これは「ナルコレプシー」の特徴ですね。
「レム睡眠」が何故あるのか、
という質問の答えは、
夢は何故見るのか、という疑問と一緒で、
未だ明確な結論が出ていません。
こうした「何故」は、
現代科学のあまり得意な分野ではないのですね。
それでは、今日はこのくらいで。
明日は睡眠に関わる病気の話に進む予定です。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2008-11-26 08:26
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僕の妻は、最近は殆ど寝言を言わなくなりましたが、以前はかなり寝言の多かった人です。
その内容も、夢というよりその日に起きた出来事を再現している様な物でした。
例えば、『その日公園に行ったら男の子がボールを転がしてしまって拾ってあげた』みたいな出来事を延々10~20分間も再現するのです。
誰かに話しかけて会話しているんですが、横で聴いている僕には相手の声はもちろん聞こえませんので、見えない誰かとずっと喋っている感じでした。最近はめっきり寝言を言わなくなりましたが。
彼女が昔病院に入院した時、昼間に横溝正史の本を読んだところ、一晩中悲鳴を上げて騒ぎ続け、病院から横溝正史禁止令が出たそうです。本人はもちろん全くそんな事は覚えていなかったとの事です。
これも病的な何かが隠れているんでしょうかね。
by まれすけ (2013-02-02 16:00)