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粉ミルクの中の「メラミン」 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から紹介状を2枚書いて、
カルテのチェックをして、
それから今PCに向かっています。

さて、今日の話題です。

今日は「メラミン」の話をします。

粉ミルクに混ぜられた、
「メラミン」という化学物質により、
多くの赤ちゃんが腎障害を起こし、
死亡された赤ちゃんも出た、
という中国のニュースが報道されていますね。
有害性はまだはっきりしませんが、
牛乳にもメラミンが混ぜられていることが多く、
それを利用した日本の食品メーカーの製品もあったりして、
事件は次第に日本へも広がりを見せているようです。

昨年(2007年)には、
中国で作られた小麦グルテンに、
「メラミン」が混ざっていて、
それがアメリカでペットフードに加工され、
それを食べた多くの犬や猫が、
腎不全で死亡する、
という事件が起きています。

その時点で、人間の食用に使う商品にも、
同じような混入がされているのではないか、
という疑いが指摘され、
安全に向けての取り組みが行なわれた筈なのですが、
結果としてはそれは実を結ばなかった訳です。

対岸の火事と笑うことは出来ません。
「メラミン」の混入は海外のことであったとしても、
汚染米の事件でも分かるように、
僕達の社会は、
常にそうしたリスクの只中にあるからです。

さて、「メラミン」とは何でしょうか?

化学を少しでも齧ったことのある人には、
お馴染みの物質です。
一言で言えば、「プラスチック」です。
比喩でも何でもなく、そのものずばりです。
より正確に言えば、
「プラスチック」の成分の1つですね。

「プラスチック」は合成の有機高分子物質のことで、
その成分の1つに尿素樹脂があります。
中に窒素を含む樹脂で、
その尿素樹脂をより進化させたものが、
「メラミン」樹脂です。
硬くて強く、耐熱性があり、
主に食器や接着剤に使われています。

それでは、何故その接着剤を粉ミルクや牛乳に、
混ぜたのでしょうか?

それは、
粉ミルクの中のタンパク質を見掛け上増やすためだ、
と説明されています。

どういう意味か分かりますか?

人間の身体の中にも、窒素が含まれています。

その代表はタンパク質とアミノ酸で、
それ以外に細胞の中にあるDNAやRNAも、
窒素を含んだ構造です。

タンパク質とメラミンとは、
勿論別の物質です。
しかし、中に窒素を含んでいるという点では、
同じ性質がある訳です。

タンパク質を測るには幾つかの方法がありますが、
その物質がタンパク以外に窒素を含んでいない場合には、
窒素を測れば、タンパクを測ったのと同じ意味合いになるのです。
従って、そうした測定法が存在します。

小麦グルテンや粉ミルクが、
特定の栄養価に保たれているかどうかを調べるために、
中のタンパク質の濃度を検査するのですが、
その検査法が中の窒素を測るだけの方法であると、
混ぜられたメラミンも、
タンパクとして測ってしまうことになるのです。

要するに倍に薄めた粉ミルクを作っておいて、
メラミンを混ぜておけば、
簡単な検査では適正なタンパク濃度と測定され、
その実タンパクは半分しか入っていない、
コストも半分の粗悪品の粉ミルクが誕生する訳です。

メラミンは人間には毒性の少ない物質だ、
とされていました。
食器に使っても問題がないものなのですからね。
「毒でないのなら、混ぜたって誰も困らないし、
俺達は倍儲かるんだから、
やってもいいだろう」、
と考えた訳です。

まあ、極めて合理的ですよね。
人間はこうしたことを考えるのに、
実に長けた生き物です。

では、何故無害の筈のメラミンが、
腎不全などの重篤な病気を引き起こしたのでしょうか。

ここにも、如何にも人間的な理由がありました。

メラミン自体の品質が、
また粗悪品だったのです。
メラミンの合成の過程で、
メラミンに良く似た「シアヌル酸」という物質が、
不純物として混ざっていたのですね。

シアヌル酸とメラミンとが同時に体内に入ると、
それは結び付いて、結晶になります。
その結晶に強力な腎毒性があるのですね。
結晶は石のようになって、
腎臓や尿管に沈着し、
それを詰まらせ、
重篤な腎臓病の原因となったのです。

怖いですね。

アメリカで昨年ペットフードの害が問題となった時、
当初は「メラミン」が検出されても、
それが原因とは分からなかったのです。
「メラミンは無害な物質だ」、
という先入観があったのですね。
メラミンを繊維として使っていた会社もあったので、
殊更にそういう主張がされた訳です。
科学というのは、常にそういう限界があるのですね。
ある分野の科学者は、
その分野での正しいと言われていることを主張する訳ですが、
「その分野」というのは、
世界のほんの一部分であることを、
往々にして忘れているのです。
科学者の言うことを妄信するのではなく、
常に広い視野を持って考えることが、
必要とされるのだと思います。

それからもう1つ、
日本で流通している薬剤に、
こうしたことがない、と断言出来るでしょうか?

僕は、大丈夫だ、と言い切れるほど、
能天気ではありません。

ジェネリック薬品のあるものには、
とても採算の取れないような低価格が付いているのです。
勿論国が決めた価格です。
でも、それで本当に薬の安全が守れるのでしょうか。
会社の経営が苦しければ、
当然粗悪品を作ろうとするのではないでしょうか。
少なくとも日本の社会においては、
粗悪品を作る「悪」よりも、
そう追い込む「悪」の方に、
より怒りを感じるのですが、
皆さんはどうお考えになりますか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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yutakarlson

■<WorldNow>外国産牛乳を買い求める中国人たち―今後システムを変えない限り頻繁に起こり続ける不祥事!!
http://yutakarlson.blogspot.com/2008/09/worldnow.html
こんにちは。中国のメラニン牛乳、とんでもないことになっていますね。日本での汚染米もそうですし、中国のこの問題でも、やはり古いものは完全に制度疲労を起しているのだと思います。今後新たなシステム作りが重要になってくると思います。しかし、この新たなシステムづくり日本はさておき、中国は非常に難しいです。おそらく、そのまま放置され、社会不安を増幅し、中国の崩壊を助長することになるものと思います。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

by yutakarlson (2008-09-22 11:56) 

fujiki

yutakarlsonさんへ
コメントありがとうございました。
また、よかったら覗いて下さい。
by fujiki (2008-09-23 08:14) 

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