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「秘密」 [ミステリー]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は休みで、今起きたところです。
昨日はちょっとワインなど飲んだので、
頭はまだ重い感じです。

今日はちょっとミステリーの話などします。

東野圭吾という人は、
エンジニアで、乱歩賞でデビューしたんですが、
売れない時期がかなり続きました。

初期は屈折した青春小説に推理が絡む、
みたいな作品が多くて、
「魔球」などがその代表でしょうか。
それから技巧的なミステリーを手懸けます。
「鳥人計画」とか、「ブルータスの心臓」辺りが、
僕は気に入っていて、何故注目されないんだろう、
と不思議に思っていました。
それから「変身」みたいなSFタッチのものに移って、
僕はしばらく読まないでいました。
こんなことを言うと失礼ですけど、
多作で如何にも手を抜いた、
みたいな作品も多いんです。

それから、本当に久しぶりに手にしたのが、
「秘密」ですね。

この作品で東野圭吾はブレイクした訳ですし、
ベストセラーにもなったので、
今更僕が言うこともないんですが、
素晴らしかったですね。

読んだのは2004年の冬で、
ラストは二子玉川の駅前のケンタッキーで読みました。
同じ年にデセイ様が来日して、
生まれてから最も感動した、
という実感がまだ生々しくあったので、
全然比較の対象とはならないんですけど、
それに次ぐ感動に揺さぶられた気がしたのです。

アイデアは、大したことはないんですよね。
別に前例もない訳ではないと思いますし。
でも、このアイデアだけで、
迷いなく長編にしてしまうところが凄いんです。
余分なものの何もない、
純粋な結晶体のような作品ですね。
ネタばれになるので詳しくは書けませんけど、
主人公は同じ愛する人を、
3回失うのです。
失う度に、愛情は高まり、そのために喪失の感情も、
より強くより純粋になっていくんですね。

かなり作者のパーソナルな記憶に結び付いた作品なのじゃないか、
という気が僕にはしました。

それで、「白夜行」とか、
幾つかの読んでいなかった作品を読んだんですが、
あまりグッとは来ませんでした。

今度映画が公開になる、
「容疑者Xの献身」は、比較的刊行後すぐに読みました。

これもちょっと癖のある作品ですね。

彼は割りと屈折した倫理観を持っているんですね。
あと、かなり意地が悪いと思います。
読者に安易に感情移入されるのを嫌うんですね。
作品の出来の割りに評価の低い時期が長かったですし、
「どうせ分かりゃしないんだろ?」、
みたいな感じが強かったのかも知れません。

でも、「秘密」だけはそうではないんですよね。
自分の意地の悪い部分を、
敢えて封印して、
自分の記憶の核にある喪失感を、
純粋に形にしたような気がします。

それが、読者の心を強く揺さぶるのです。

それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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