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集束超音波による血液脳関門開放技術の認知症治療応用の可能性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
超音波による血液脳関門無効化.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2024年1月4日付で掲載された、
血液脳関門を開放するという特殊な治療の、
有効性を検証した論文です。

血液脳関門というのは、
特定の成分以外は脳の血管から脳の神経細胞の中に、
移行することがないような仕組みのことで、
この仕組みがあるために、
脳に有害な物質が侵入することを防いでいるのですが、
その一方で脳に作用することが必要な薬剤が開発されても、
有効に作用させることが難しい、
という問題があります。

通常の薬剤は飲み薬でも注射薬でも、
血液濃度を上げることによって、
その作用を表すものだからです。

たとえば、薬を注射して、
血液濃度の高いタイミングのみ、
血液脳関門の働きを落とすことが出来れば、
効果的に薬剤を脳に送り込むことが出来る理屈です。

しかし、そんな都合の良い方法があるのでしょうか?

そこで考案されたのが、
超音波が組織に泡を発生させる働きを利用して、
MRI検査のガイドの元、
脳の特定の部位に集束させた超音波を照射。
微小な泡の効果で物理的に血液脳関門を広げる、
という方法です。

今回の実験的な研究では、
アルツハイマー病の治療薬であるアデュカヌマブを、
3名のアルツハイマー病の患者に対して、
集束超音波による血液脳関門開放術を活用して、
注射のタイミングで超音波を脳の片側に照射し、
脳への薬剤の移行とその効果を比較検証しています。

アデュカヌマブはアミロイドβの抗体製剤で、
脳へ移行することにより、
異常なアミロイドβ蛋白に結合して、
それを排除する働きを持っているのです。

6か月の治療を継続したところ、
アミロイドβの沈着量の指標であるSUVRは、
超音波照射部位で32%低下し、
照射していない部位とは明らかな差を示していました。

これはまだ実験的な結果に過ぎませんが、
今後この手法を活用することにより、
認知症治療薬の効果を、
これまでより格段に高めることが可能となるかも知れません。

ただ、一時的にせよ、
脳が多くの有害な物質に対して、
無防備になるというリスクもあり、
今後その安全性も含めて、
検証の結果を慎重に見極めたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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