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小児期の頭部CTによる脳腫瘍リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは年末年始の休診中です。

今日は休診日ですが医学の話題です。
今日はこちら。
CTと脳腫瘍リスク.jpg
Lancet Oncology誌に2022年12月6日ウェブ掲載された、
小児期の頭部や頸部のCT検査と、
その後の脳腫瘍のリスク増加についての論文です。

CT検査は非常に診断において有用性の高い検査ですが、
放射線の被曝量が多い、という欠点があります。

特に小児期の脳の放射線被曝については、
それが小児の脳腫瘍のリスクを、
増加させていることを疑わせる疫学データが存在しています。

ただ、データの精度はそれほど高いものではなく、
ある程度の放射線量の被曝を受けた時のみの現象であるのか、
それとも1回のみのCT検査においても、
一定のリスクが存在するのか、
というような点については、
明確なことが分かっていないのが実際です。

そこで今回の研究では、
ヨーロッパ9か国で22歳以前に1回以上の頭頚部のCT検査を実施した、
トータル658752名に中間値で5.6年の経過観察を施行して、
初回のCT検査から5年以降の脳腫瘍の発症リスクを、
脳への推計の吸収線量と比較検証しています。

その結果、
観察期間中に165例の脳腫瘍が診断され、
そのうちの73%に当たる121例が神経膠腫(グリオーマ)でした。
ここで累積の脳への吸収線量と脳腫瘍のリスクとの間には、
吸収線量が多いほど脳腫瘍のリスクも高いという、
有意な相関が認められ、
トータルな脳腫瘍のリスクは、
100ミリグレイ当たり27%の増加が認められました。
脳腫瘍として頻度が多かったのはグリオーマですが、
放射線量との関連は、
グリオーマ以外の脳腫瘍でより高い傾向が認められました。

今回のデータでは2012年から2014年に施行された頭部CTの、
1回当たりの平均の吸収線量は38ミリグレイでしたが、
このことから、
22歳以下の年齢で1回の頭部へのCT検査を施行すると、
その5から15年後に、
1万人に1人の割合で過剰に脳腫瘍が発症すると推定されました。

これは勿論頻度的には低いものですが、
1回のみの頭部CT検査でも
それが将来的な脳腫瘍リスクの増加に結び付く、
ということの科学的意義は大きく、
今後こうしたデータを元に、
小児期の頭頚部CT検査の適応について、
より厳密な適応が定められることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い新春をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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