分岐鎖アミノ酸(BCAA)と高血圧リスク [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のHypertension誌に掲載された、
必須アミノ酸と呼ばれる分岐鎖アミノ酸の血液濃度と、
高血圧の発症リスクとの関連を検証した論文です。
分岐鎖アミノ酸というのは、
バリン、ロイシン、イソロイシンの3種類の必須アミノ酸の総称で、
肝硬変などの肝機能が低下した状態では、
その低下が起こって肝性脳症などの原因となるので、
分岐鎖アミノ酸の製剤が治療目的で使用されます。
分岐鎖アミノ酸は、
タンパク合成促進作用と筋肉のタンパク分解抑制作用があり、
身体の筋肉量を維持し増やすために重要な役割を果たしていますが、
それに加えて血液中に存在している少量の遊離アミノ酸が、
タンパク質や糖質の代謝において、
その調節的な役割を果たしていることも、
徐々に明らかになってきています。
それでは、
分岐鎖アミノ酸が身体に多くあることは、
糖尿病や高血圧、心血管疾患などのリスクを、
上昇させるのでしょうか、それとも低下させるのでしょうか?
この単純な疑問が、
実は未だ解明をされていません。
2015年くらいまでの日本語の文献では、
ほぼ全てにおいて、
分岐鎖アミノ酸の血液濃度が高いと、
インスリン抵抗性が改善し、
糖尿病も心血管疾患のリスクも低下する、
というように記載されています。
ところが、
2009年のCell Metabolism誌に掲載された論文では、
肥満の人では血液中の分岐鎖アミノ酸が上昇していて、
分岐鎖アミノ酸を多く含む食事を与えられたネズミは、
インスリン抵抗性が増加して耐糖能異常が生じた、
という結果が報告されています。
つまり、
分岐鎖アミノ酸がインスリン抵抗性を増して、
メタボを進めるのではないか、
ということを示唆する結果です。
その一方で分岐鎖アミノ酸を摂取することにより、
インスリン抵抗性が改善したとする、
全く相反する結果も報告されていて、
どうもこの問題はヤブの中です。
ただ、最近の欧米の研究データは、
少なくともインスリン抵抗性については、
血液の分岐鎖アミノ酸濃度が高いほど、
増加が認められるというものが主流となっています。
今回の研究は分岐鎖アミノ酸の血液濃度と、
高血圧の発症との関連を検証したものです。
心血管疾患の予防を検証した疫学データを活用して、
4169名の一般住民の血液中の分岐鎖アミノ酸濃度を測定し、
中間値で8.6年の観察期間において、
新たな高血圧の発症リスクとの関連を検証しています。
その結果、
年齢や体格、関連する検査値などを補正した上で、
4分割した血液の分岐鎖アミノ酸が最も高い群では、
最も低い群と比較して、
高血圧の発症リスクが36%(95%CI: 1.11から1.68)有意に増加していました。
このように、
糖尿病と同じように、
分岐鎖アミノ酸が高いと高血圧の発症リスクも増加することが、
今回の結果では示されていて、
分岐鎖アミノ酸が多いと病気にリスクに結び付くという考え方に、
より真実味が増しているように思われます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のHypertension誌に掲載された、
必須アミノ酸と呼ばれる分岐鎖アミノ酸の血液濃度と、
高血圧の発症リスクとの関連を検証した論文です。
分岐鎖アミノ酸というのは、
バリン、ロイシン、イソロイシンの3種類の必須アミノ酸の総称で、
肝硬変などの肝機能が低下した状態では、
その低下が起こって肝性脳症などの原因となるので、
分岐鎖アミノ酸の製剤が治療目的で使用されます。
分岐鎖アミノ酸は、
タンパク合成促進作用と筋肉のタンパク分解抑制作用があり、
身体の筋肉量を維持し増やすために重要な役割を果たしていますが、
それに加えて血液中に存在している少量の遊離アミノ酸が、
タンパク質や糖質の代謝において、
その調節的な役割を果たしていることも、
徐々に明らかになってきています。
それでは、
分岐鎖アミノ酸が身体に多くあることは、
糖尿病や高血圧、心血管疾患などのリスクを、
上昇させるのでしょうか、それとも低下させるのでしょうか?
この単純な疑問が、
実は未だ解明をされていません。
2015年くらいまでの日本語の文献では、
ほぼ全てにおいて、
分岐鎖アミノ酸の血液濃度が高いと、
インスリン抵抗性が改善し、
糖尿病も心血管疾患のリスクも低下する、
というように記載されています。
ところが、
2009年のCell Metabolism誌に掲載された論文では、
肥満の人では血液中の分岐鎖アミノ酸が上昇していて、
分岐鎖アミノ酸を多く含む食事を与えられたネズミは、
インスリン抵抗性が増加して耐糖能異常が生じた、
という結果が報告されています。
つまり、
分岐鎖アミノ酸がインスリン抵抗性を増して、
メタボを進めるのではないか、
ということを示唆する結果です。
その一方で分岐鎖アミノ酸を摂取することにより、
インスリン抵抗性が改善したとする、
全く相反する結果も報告されていて、
どうもこの問題はヤブの中です。
ただ、最近の欧米の研究データは、
少なくともインスリン抵抗性については、
血液の分岐鎖アミノ酸濃度が高いほど、
増加が認められるというものが主流となっています。
今回の研究は分岐鎖アミノ酸の血液濃度と、
高血圧の発症との関連を検証したものです。
心血管疾患の予防を検証した疫学データを活用して、
4169名の一般住民の血液中の分岐鎖アミノ酸濃度を測定し、
中間値で8.6年の観察期間において、
新たな高血圧の発症リスクとの関連を検証しています。
その結果、
年齢や体格、関連する検査値などを補正した上で、
4分割した血液の分岐鎖アミノ酸が最も高い群では、
最も低い群と比較して、
高血圧の発症リスクが36%(95%CI: 1.11から1.68)有意に増加していました。
このように、
糖尿病と同じように、
分岐鎖アミノ酸が高いと高血圧の発症リスクも増加することが、
今回の結果では示されていて、
分岐鎖アミノ酸が多いと病気にリスクに結び付くという考え方に、
より真実味が増しているように思われます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2019-11-21 06:03
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