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小甲状腺乳頭癌の長期の再発率(2016年韓国の報告) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
韓国の甲状腺乳頭がんの性質と予後.jpg
今年のJ Clin Endocrinol Metab.誌に掲載された、
比較的小さな甲状腺乳頭癌の、
手術後の長期予後と、
再発のリスク因子について解析した韓国の論文です。

韓国は甲状腺の部位を含む超音波検診を、
一般住民を対象として行ったために、
多数の甲状腺乳頭癌を診断するに至った経緯があります。

その多くは比較的小さな甲状腺乳頭癌でした。

今回の研究においては、
韓国で診断され治療された、
トータルで3282例の腫瘍径が2センチ以下の甲状腺乳頭癌の事例の、
長期予後を検証しています。

さすが韓国で、
これだけ多数の甲状腺乳頭癌の長期予後の検証は、
これまでに例がないと思います。

腫瘍径の平均は1.1センチで、
86.5%の患者さんは甲状腺全摘手術を受け、
13.5%の患者さんは部分切除を受けています。

平均で5.8年の観察期間において、
術後の再発を左右する因子としては、
腫瘍径は1.8センチを超えると再発が増加し、
径が0.1から1.7センチの10年間の再発率が7.7%であったのに対して、
径が1.8センチから2センチでの再発率は17.2%に達していました。

リンパ節転移が診断の段階で1個以下での再発率は、
10年間で4.0%であったのに対して、
2個以上では16.8%に達していました。

トータルに見て、
部分切除(Lobectomy)でリンパ節転移が2個以上あり、
腫瘍が両側性で、
腫瘍径が1.8センチ以上あると、
再発率が高いという結果が得られました。

従って、リンパ節転移など再発リスクの高い事例では、
甲状腺の全摘が手術としては選択されるべき、
という結論になっています。

このデータはたとえば日本で発表されているものと比較すると、
小さな甲状腺癌である割には、
かなり再発率が高いという結果になっているので、
診断と治療がどのような水準で施行されたのかを含めて、
再検証が必要なように思いますが、
大きさが2センチ以下に限ってのこれだけの大規模なデータは、
これまでにあまり例がなく、
再発のリスクの分析も意義のあるものだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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