MRIの妊娠中の使用における安全性について [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後とも、いつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のJAMA誌に掲載された、
妊娠中のMRI検査の安全性についての論文です。
MRI検査は磁気を利用して体内の構造を可視化する検査で、
CTと共にその有用性から、
臨床に幅広く使用されています。
CT検査は放射線を使用するので、
そのリスクが問題となりますし、
造影剤として使用するヨードには、
重度のアレルギーのリスクがあることが知られています。
それと比較すると、
MRI検査には被ばくのリスクはありませんし、
造影剤として主に使用されるガドリニウムでは、
ヨードのようなアレルギーを生じることは稀です。
ガドリニウムはレアアースの1つで、
磁性体としての性質からMRIの造影剤として使用されています。
このガドリニウムそのものには強い毒性があるので、
ガドリニウムをキレート化して使用し、
そのまま腎臓から排泄されるように改良したのです。
ほぼ100%そのまま腎臓から排泄されるので、
毒性の問題はクリアされたと考えられていましたが、
腎機能の低下があって排泄が大幅に遅延すると、
血液中に蓄積したガドリニウムが遊離し、
一種の重金属中毒を来す可能性が指摘され、
腎機能低下のあるケースでのリスクが指摘されています。
また、ガドリニウム造影剤の使用後に、
皮膚が強皮症という病気のように、
線維化して硬化する、
腎性全身性線維症という、
特殊な病気が複数報告されて問題となったこともあります。
造影剤を使用しない単純のみのMRI検査は、
基本的に人体に無害と考えられていますが、
かなり拘束された状態で、
比較的長時間不快な音に曝露される検査なので、
その心理的な影響を指摘する意見もあります。
また、タトゥーなどのある方は皮膚の火傷の心配があるように、
ある条件では、
特定の組織が加熱されるという性質もあります。
通常はこのことで大きな問題は生じないと考えられますが、
妊娠中の安全性についてはどうでしょうか?
現行の考え方としては、
単純MRIを妊娠初期の過敏な時期以外で、
撮影することは胎児への影響はないと考えられています。
一方でガドリニウム造影剤を使用したMRI検査は、
妊娠された女性の腎機能を低下させるリスクや、
胎盤通過性のあるガドリニウムが、
胎児に影響を与えるリスクがあるので、
その必要性が非常に高い時以外は、
妊娠中には使用しないことが適切だ、
とされています。
ただ、実際にどのくらいのリスクがあるかについては、
そのデータは限られています。
そこで今回の研究においては、
妊娠中のガドリニウム造影剤を使用したMRI検査と、
妊娠初期(16週まで)の単純MRI検査の胎児に対する安全性を、
カナダにおけるトータル1424105例の出産を対象として検証しています。
その中で、
妊娠初期に単純MRIを施行したのは1737例で、
妊娠中にガドリニウム造影MRIを施行したのは397例です。
まず、妊娠早期の単純MRIにおいては、
早産や死産、胎児の先天異常のリスクに、
未施行と比較して有意な増加は認められませんでした。
唯一5から10週での使用のみの解析で、
視力障害のリスクが増加していました。
ガドリニウム使用MRI検査は、
生後4歳までのリウマチ関連疾患や炎症性皮膚疾患のリスクが、
1.36倍(1.09から1.69)、
死産や新生児死亡のリスクは、
3.70倍(1.55から8.85)、
それぞれ有意に増加していました。
ただし、MRIを受けていて死産と新生児死亡の事例は7例のみです。
単純MRIは妊娠中にも基本的には安全と考えて良さそうですが、
念のため妊娠初期の使用は控えた方が良く、
ガドリニウム造影剤の妊娠中の使用は、
原則として行わないことが妥当なようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後とも、いつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のJAMA誌に掲載された、
妊娠中のMRI検査の安全性についての論文です。
MRI検査は磁気を利用して体内の構造を可視化する検査で、
CTと共にその有用性から、
臨床に幅広く使用されています。
CT検査は放射線を使用するので、
そのリスクが問題となりますし、
造影剤として使用するヨードには、
重度のアレルギーのリスクがあることが知られています。
それと比較すると、
MRI検査には被ばくのリスクはありませんし、
造影剤として主に使用されるガドリニウムでは、
ヨードのようなアレルギーを生じることは稀です。
ガドリニウムはレアアースの1つで、
磁性体としての性質からMRIの造影剤として使用されています。
このガドリニウムそのものには強い毒性があるので、
ガドリニウムをキレート化して使用し、
そのまま腎臓から排泄されるように改良したのです。
ほぼ100%そのまま腎臓から排泄されるので、
毒性の問題はクリアされたと考えられていましたが、
腎機能の低下があって排泄が大幅に遅延すると、
血液中に蓄積したガドリニウムが遊離し、
一種の重金属中毒を来す可能性が指摘され、
腎機能低下のあるケースでのリスクが指摘されています。
また、ガドリニウム造影剤の使用後に、
皮膚が強皮症という病気のように、
線維化して硬化する、
腎性全身性線維症という、
特殊な病気が複数報告されて問題となったこともあります。
造影剤を使用しない単純のみのMRI検査は、
基本的に人体に無害と考えられていますが、
かなり拘束された状態で、
比較的長時間不快な音に曝露される検査なので、
その心理的な影響を指摘する意見もあります。
また、タトゥーなどのある方は皮膚の火傷の心配があるように、
ある条件では、
特定の組織が加熱されるという性質もあります。
通常はこのことで大きな問題は生じないと考えられますが、
妊娠中の安全性についてはどうでしょうか?
現行の考え方としては、
単純MRIを妊娠初期の過敏な時期以外で、
撮影することは胎児への影響はないと考えられています。
一方でガドリニウム造影剤を使用したMRI検査は、
妊娠された女性の腎機能を低下させるリスクや、
胎盤通過性のあるガドリニウムが、
胎児に影響を与えるリスクがあるので、
その必要性が非常に高い時以外は、
妊娠中には使用しないことが適切だ、
とされています。
ただ、実際にどのくらいのリスクがあるかについては、
そのデータは限られています。
そこで今回の研究においては、
妊娠中のガドリニウム造影剤を使用したMRI検査と、
妊娠初期(16週まで)の単純MRI検査の胎児に対する安全性を、
カナダにおけるトータル1424105例の出産を対象として検証しています。
その中で、
妊娠初期に単純MRIを施行したのは1737例で、
妊娠中にガドリニウム造影MRIを施行したのは397例です。
まず、妊娠早期の単純MRIにおいては、
早産や死産、胎児の先天異常のリスクに、
未施行と比較して有意な増加は認められませんでした。
唯一5から10週での使用のみの解析で、
視力障害のリスクが増加していました。
ガドリニウム使用MRI検査は、
生後4歳までのリウマチ関連疾患や炎症性皮膚疾患のリスクが、
1.36倍(1.09から1.69)、
死産や新生児死亡のリスクは、
3.70倍(1.55から8.85)、
それぞれ有意に増加していました。
ただし、MRIを受けていて死産と新生児死亡の事例は7例のみです。
単純MRIは妊娠中にも基本的には安全と考えて良さそうですが、
念のため妊娠初期の使用は控えた方が良く、
ガドリニウム造影剤の妊娠中の使用は、
原則として行わないことが妥当なようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2016-09-08 08:10
nice!(15)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0