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現時点で最良のピロリ菌除菌法はどれか? [医療のトピック]

こんにちは。
石原藤樹です。

朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ピロリ菌除菌のメタ解析.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
ピロリ菌の除菌法の効果と安全性を比較した、
システマティック・レビューとメタ解析の論文です。
中国の研究者によるもので、
これまでの類似の研究の中で、
最も緻密に検証されているように思います。

ピロリ菌は胃の中に生息する細菌で、
胃癌や胃潰瘍、萎縮性胃炎などの、
多くの胃の病気のリスクとなることが分かっています。

従って、ピロリ菌の感染が見付かった場合、
多くのケースでは除菌治療が勧められます。

ただ、問題なのは、
現時点で世界標準となるような、
第一選択の除菌法が存在しない、
ということです。

標準的な3剤併用療法という治療法があり、
これはプロトンポンプ阻害剤という胃薬に、
マクロライド系の抗生物質であるクラリスロマイシンと、
ペニシリン系抗生物質であるアモキシシリン、
もしくはメトロニダゾールを1週間併用するものです。

日本の保険診療においては、
アモキシシリンを使用した標準治療が第一選択で、
それで失敗した場合に、
二次除菌としてクラリスロマイシンの代わりにメトロニダゾールを併用する変法が、
1通りのみ認められています。

しかし、世界的にはこれ以外にも、
非常に多くの別個の除菌法のレシピが施行されています。

日本の治療の問題点は、
第一選択の治療法が、
クラリスロマイシンに対する耐性の多さなどから、
有効率が低いということが一番で、
二次除菌は有効率は高くなりますが、
それでも100%ではありません。

保険診療の範囲で可能なオプションとしては、
より強力なプロトンポンプ阻害剤であるとされる、
ボノプラザンフマル塩酸の使用により、
除菌率が格段に改善した、
とするデータが注目されていますが、
確かにそうしたことはありそうではあるのですが、
あまり世界的に注目されているような知見ではありません。

今回の研究においては、
古いものから新しいものまで、
古今東西の除菌法を比較検証し、
その有効性と安全性のバランスを、
ランキング形式にして報告しています。

その結果…

最も低評価であったのは、
所謂標準治療とされる日本の一次除菌のレシピでした。
何と言っても、
7割程度という低い除菌率が致命的です。

逆に優れた評価が得られたのは、
以下の5種類のレシピでした。

7日間の4剤併用療法、
これはプロトンポンプ阻害剤と、
アモキシシリン、クラリスロマイシン、5-ニトロミダゾールを、
全て同時に服用するものです。

それから標準治療のレシピに生菌製剤(プロバイオティクス)を加えて、
10から14日間継続する治療。

レボフロキサシンというニューキノロン系の抗生物質に、
もう1種類の抗生物質(たとえばアモキシシリン)と、
プロトンポンプ阻害剤を加えて、
10から14日間継続する治療。

最初の7日間は、
プロトンポンプ阻害剤とアモキシシリンを使用し、
その後でそこにクラリスロマイシンと5-ニトロミダゾールを上乗せする方法。

そして、
最初の5から7日間は、
プロトンポンプ阻害剤にアモキシシリンを併用し、
次の5から7日間は、
クラリスロマイシンを上乗せする、
という方法の5種類です。

同じ方法でも使用する日数を増やせば、
その効果は高まりますが、
その一方で副作用も強くなります。
そうした効果と安全性の両面から見て、
上記の5つの方法はバランスが取れていた、
ということのようです。

このように、
理想的な除菌法はまだ見付かっていない、
というのが現状ですが、
一次除菌に除菌率の低い方法を行なっているという日本の状況は、
あまり望ましいものとは思えず、
早期の方針の変更が、
望まれるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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まみしゃん

先生、お久しぶりです。
いつも読み逃げばかりですが、タイムリーな話題だったので・・・

たぶん今週の受診で、2度目の除菌にチャレンジということになりそうです。
1度失敗してから、間質性肺炎などいろいろ起きていて除菌できず
3年ぶりくらいだと思いますが、なんとかうまくいってほしいと思います。

今年は咳喘息の発作に悩まされていますが、呼吸器内科のドクターは逆流性食道炎の胃酸が引き起こしていると考えられているようで強い制酸剤に戻れば喘息発作も治まるのではないかと・・・どちらにしても、除菌を成功できれば少しは体調も改善されると信じてやってみます。

先生も新しい大きなチャレンジの時を迎えられるのですね。
努力を惜しまない先生です。
思うがままに進んでいただきたいと、遠くから応援しています!
by まみしゃん (2015-08-30 10:58) 

みやかわ

初めまして
北品川にて開院おめでとうございます
ブログは以前より拝見しております

4年ほど前に、健診でピロリ菌を除去し、呼気検査にて確認したのですが
除去しきれていない可能性はあるのでしょうか

昨年の内視鏡で慢性胃炎を指摘され、
今年は萎縮性胃炎を指摘されています
(現在39才です)

今年の内視鏡後に
ピロリ菌がいると萎縮性胃炎になること、
腸上皮化生に進むことをやっと知りました

先生のブログのおかげです

また萎縮性胃炎でも
食道付近まで広がっているなどレベルがあるようなので
いずれ直接診ていただきたいと考えています

by みやかわ (2015-11-04 16:55) 

fujiki

みやかわさんへ
4年前の除菌でしたら、
健康保険上は厳密には自費になってしまうのですが、
再度陽性になるケースはあるので、
もう一度ピロリ菌の検査は、
しておいた方が安心だと思います。
by fujiki (2015-11-07 07:55) 

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