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ステロイドの市中肺炎への効果(2015年のメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
石原藤樹です。

今日から診療所はいつも通りの診療になります。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ステロイドの市中肺炎への効果.jpg
今月のAnn Intern Med.誌にウェブ掲載された、
市中肺炎に対するステロイドの効果についての、
メタ解析とシステマティック・レビューの論文です。

この話題は以前より議論があり、
まだ結論は出ていません。

肺炎は最も多い感染症の1つで、
ARDSと呼ばれるような、
急性の重症の呼吸障害を来すことがあり、
その場合には命に関わることが稀ではありません。

こうした肺炎の重症化には、
炎症性のサイトカインの過剰な産生が、
大きな役割を果たしていることが分かっています。

炎症は必要があって身体が起こす現象であり、
それにより肺炎の原因である病原体は駆除される訳ですが、
その一方で過剰な炎症の持続が、
肺炎の重症化の大きな要因ともなっています。

ステロイド(糖質コルチコイド)には、
強力な抗炎症作用があり、
そのためARDSのような、
肺炎の重症化の際には補助的な治療として行われます。
ただ、その効果は必ずしも明確とは言えません。

ステロイドがサイトカインを抑制するとすれば、
肺炎の初期の段階からその使用を行えば、
その重症化が予防出来るのではないか、
という推測が可能です。

しかし、その一方でステロイドには、
血糖の上昇や消化管出血など、
多くの副作用や有害事象があり、
更には炎症を抑え過ぎれば、
却って感染が遷延する可能性も否定出来ません。

これまでに多くの臨床試験が行われていますが、
その結果は一定していません。

ただ、今年の1月にLancet誌に掲載された論文では、
プレドニゾロンを1日50ミリグラム1週間使用することにより、
肺炎の症状改善までの期間が1日強短縮された、
というポジティブな結果が報告されています。

今回の論文では、
そのLancetの研究を含む、
これまでの主だった精度の高い臨床試験の結果を、
まとめて解析し、
市中肺炎の初期にステロイドを使用することの、
患者さんの予後への影響を検証しています。

その結果…

市中肺炎への全身的なステロイド投与により、
総死亡のリスクを3%程度、
人工呼吸器の装着のリスクを5%程度、
そして肺炎による入院を1日程度、
それぞれ予防する効果が想定されました。
このうち入院の短縮効果は信頼性の高いもので、
それ以外の予防効果も統計的に意味のあるものです。
ステロイドの使用による有害事象は、
血糖上昇は明確でしたが、
消化管出血は上昇していませんでした。

このように、
市中肺炎の成人に対して、
ステロイドの全身的な使用を早期に行なうことは、
糖尿病のない患者さんであれば、
一定の有用性が期待出来るようです。

ただ、全ての肺炎に対して、
ステロイドの使用が有益ということはなく、
今回の解析でもメリットのない患者さんの方が多数なので、
今後はどのような患者さんにおいて、
その予防効果が高くなるかの分析が、
次のステップして重要なように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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