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「白鳳」(奈良国立博物館開館120年記念特別展) [仏像]

こんにちは。
石原藤樹です。

今奈良から戻って来たところです。

今日はそのお土産的な仏像の話です。
こちらをご覧下さい。
白鳳展.jpg
奈良公園の中にある奈良国立博物館で、
今「白鳳」と題する特別展が開かれています。

白鳳時代というのは、
飛鳥時代と天平時代の間を指す言葉で、
聖徳太子の時代の後で、
大化の改新後、奈良に都が移る前までの時期です。

飛鳥時代と一括りに論じられることが多いのですが、
一時的に全国的な仏教ブームが起こり、
今はその多くが遺跡としてしか残っていませんが、
巨大な仏教寺院が、
全国で一斉に建立されたのです。

飛鳥時代の仏像や仏教美術は、
基本的に大陸や半島の輸入品でしたが、
この時代にはそれが日本的に咀嚼され、
新たな文化として進歩を遂げました。

現存する仏像の名作としては、
薬師寺創建時の諸仏があり、
法隆寺の諸仏があり、
そして興福寺に伝わる山田寺仏頭があります。

今回の展覧会では、
その大部分が一同に会するという、
非常に豪華なものです。

中でも凄いのが、
薬師寺のご本尊薬師如来の脇侍である月光菩薩が、
そのまま会期中こちらにお出ましになっていることです。
ここまで大きな仏像を、
長距離移動させることは困難なので、
これは地元奈良でのみ実現可能な贅沢なのです。

そのお姿がこちらです。
月光菩薩正面.jpg
高さ3メートルを超える大作で、
薬師寺の金堂で拝観すると、
後背を含めて周辺の飾りが多く、
その彫刻としてのシンプルな見事さが、
却って見えづらいという面があります。

今回はこのように月光菩薩様のみ、
後背もない姿で陳列室の中に据えられ、
360度グルリを見ることが可能となっています。

ギリシャ彫刻やルネサンスの彫刻など、
世界の神像彫刻の名品に、
引けを取らないばかりか、
その上を行くと言って過言ではない、
素晴らしい完成度でありフォルムであることが、
この写真からもお分かりになるかと思います。

目の前で観てもまさに完璧で、
鳥肌が立ちます。

今回初めて、
その後ろ姿も観ることが出来ます。
それがこちらです。
月光菩薩背面.jpg
このシンプルな衣紋の感じなどが、
素晴らしく良いのです。
誰にも見られることが想定されていない背面に、
ある種の純粋な処女性のようなもの、
人間が決して触れてはならないような美が、
潜んでいるように思います。

それからもう1つ今回楽しみだったのがこちらです。
虚空菩薩.jpg
法隆寺にほど近い法輪寺に伝わる白鳳仏の珍しい木彫、
虚空菩薩のお姿です。

素朴で味があり、
非常にファンの多い仏様ですが、
法輪寺の収蔵庫で拝観すると、
このような美しい木の素地の色合いを、
観ることは出来ません。

全体が湿気て黒ずんでいて、
そのお顔などは黒い能面のようにしか、
観ることが出来ないのです。

とてもガッカリします。

それが今回、
すす払いをして、
絶妙なライティングにより、
こうした画像で観る美しさが、
そのままに鑑賞することが出来るのです。

必見です。

奈良国立博物館のライティングは素晴らしく、
その仏像を理想的な状態で拝観することを可能にしています。
良い仏像をここで観ると、
印象が大きく変わることが多いのです。
東京国立博物館もまずまずですが、
少し奈良と比べると暗すぎるのです。
京都は更に暗くて、
あそこのライティングはセンスを感じません。

優れた仏像を奈良国立博物館で観ることは、
今の日本では最高の贅沢だと断言出来ます。

他にも多くの素晴らしい展示があり、
お勧めの展覧会です。
ご機会の合う方は是非お出で下さい。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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