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大腸癌検診は何歳まで行なうべきなのか? [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
大腸癌検診の年齢.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
大腸癌検診の年齢毎の有効性についての、
メタ解析の論文です。

大腸癌検診として、
世界的にその有効性が確認されているのは、
便を取って微量な血液の付着を検査する、
便潜血検査と、
軟式S状結腸鏡という、
肛門から近い場所のみを調べる、
簡易型の大腸内視鏡検査です。

日本においては、
市町村の検診は概ね便潜血と問診で行われ、
精密検査は全大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で行われることが、
多いと思うのですが、
実際にはこの方式の有効性と安全性とが、
軟式S状結腸鏡のように、
実証されている、という訳ではありません。

便潜血検査によるスクリーニングは、
被験者1000人当たり、1人の大腸癌による死亡を予防するのに、
10.3年の期間が必要と、
これまでのデータから算定されています。

この1000人の検査をして1人以上の癌死亡を予防出来るか、
というのが、
その癌検診が意義のあるものであるのかを測る、
1つの指標と見なされています。

癌が発生するリスクは、
時間が経つ毎に多くなるので、
1回のスクリーニング検査を行なう効果というのは、
その観察期間が長いほど大きくなります。

それが10.3年ということは、
検査をした時点で、
10.3年以上の余命が被験者に期待されれば、
このスクリーニングは意義のあるものである、
ということになります。

これは逆に言えば、
平均化した余命が10年未満の年齢であれば、
癌検診をする意義は薄い、ということになるのです。

ちょっとややこしいのですが、
よろしいでしょうか。

軟式S状結腸鏡検査のスクリーニングについては、
これまで同様の有効性の検証が、
明確にはされていませんでした。

そこで、今回の研究においては、
これまでの軟式S状結腸鏡を用いたスクリーニング後の、
被験者の生存に関わるデータを、
まとめて解析することで、
この方法で大腸癌検診を行なうことで、
どの程度の癌死亡が予防されるのかを検証しています。
メタ解析の被験者数はトータルで459814例です。

その結果…

被験者1000人当たり1人の大腸癌死亡を予防するために、
軟式S状結腸鏡検査後の観察期間は、
9.4年を要しました。

これは便潜血検査より短く、
それはこのスクリーニングの方が、
より癌死亡の予防効果の高いことを示しています。

従って、
被験者は期待される平均の余命が、
9.4年以上あればスクリーニングとして意義がある、
ということになり、
それを下回る場合には、
少なくとも集団的で公的なスクリーニングとして、
行なうのは適切ではない可能性がある、
ということになります。

こうした検診の有効性の捉え方は、
日本では馴染まない面があり、
特に検診の年齢制限などはしていないのが実際ですが、
今後は社会保障費全体の問題もあり、
スクリーニング検査の有効性については、
特に公費を用いる場合には、
より厳密なチェックが必要となるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

Silvermac

大腸内視鏡検査は12年から3年おきに2回受けました。
by Silvermac (2015-05-14 10:29) 

fujiki

Silvermacさんへ
日本の場合はやや過剰検査と、
全く検査をしないのと、
両極端になっている傾向はあるように思います。
by fujiki (2015-05-15 08:18) 

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