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新規コレステロール降下剤の効果と安全性について(メタ解析結果) [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
新規コレステロール降下剤のメタ解析.jpg
先月のAnn Intern Med誌にウェブ掲載された、
PCSK9阻害剤という新規のコレステロール降下剤の効果と安全性を、
これまでの臨床試験のデータをまとめて解析した、
システミック・レビューとメタ解析の論文です。

PCSK9阻害剤という新しいメカニズムのコレステロール降下剤が、
現在発売間近の状態にあります。

これまでのコレステロール降下剤の主力が、
スタチンという肝臓でのコレステロール合成を阻害する薬であったのに対して、
このPCSK9阻害剤は、
細胞へコレステロールを取り込むのに必要な、
LDL受容体を増やす、
というメカニズムの薬です。

PCSK9というのは、
LDL受容体を分解する酵素なので、
それを阻害することによって、
LDL受容体は増加し、
それによりコレステロールがより多く細胞に利用されて、
血液中のコレステロールが低下する、
という仕組みです。

より詳細な解説は、
以前の記事をご参照下さい。
こちらです。
http://blog.so-net.ne.jp/rokushin/2015-04-15-1

この薬は注射薬として、
2週間から4週間に一度皮下注射として行われ、
従来のスタチンより強力に、
LDLコレステロールを低下させることが確認されています。

かなり高価な薬となることは確実なので、
現状の使用法の案としては、
スタチンを高用量で使用しても、
目標までコレステロールが低下しないケースや、
スタチンが副作用などにより、
使用が困難なケースに限られると想定されています。

以前も何度かご紹介したように、
このタイプの薬の、
コレステロール降下剤としての効果は確認されていますが、
スタチンのように、
この薬が患者さんの生命予後を改善するかどうかや、
長期の安全性や有効性はまだ確認はされていません。

今回の文献では、
これまでの臨床試験のデータをまとめて解析することにより、
現時点で出来る範囲の、
この薬の有効性と安全性とを検証しています。

これまでの24の介入試験と呼ばれる精度の高い臨床試験から、
トータルで10159名の患者さんのデータが得られました。
これをまとめて解析した結果として、
PCSK9阻害剤は、
血液中のLDLコレステロール(所謂悪玉コレステロール)の濃度を、
平均で47.49%低下させています。
更には総死亡のリスクを、
有意に55%低下させ、
心筋梗塞の発症リスクも有意に51%低下させていました。
心血管疾患による死亡リスクも、
50%低下させていましたが、
これは有意ではありませんでした。

有害事象や副作用に関しては、
重篤なものは報告されておらず、
スタチンへの上乗せにおいて、
筋肉が壊れると上昇する、
クレアチニン・キナーゼ(CK)の上昇を抑制していました。

今回の結果で新しい知見は、
総死亡のリスクを低下させていることで、
スタチンと同様、
患者さんの生命予後にも良い影響を及ぼすことを、
示唆するものです。

ただ、現状はせいぜい1から2年程度の成績が主体で、
より長期のデータが蓄積されれば、
今回とはまた別の結果が導かれる可能性もあります。

新薬の発売前のデータは、
概ね小劇場演劇ののツィッターの感想まとめのように、
「絶賛の嵐」になることが多く、
PCSK9阻害剤が、
スタチン以降では最も有望なコレステロール降下剤であることは、
ほぼ間違いがありませんが、
その真価が分かるには、
もう少し時間が必要だと、
考えるのが妥当のように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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