ミナモザ「見えない雲」 [演劇]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
瀬戸山美咲さんが主催する劇団ミナモザが、
架空の原発事故を扱ったドイツの小説を翻案し、
一種のノンフィクション芝居として構成した作品が、
三軒茶屋のシアタートラムで、
12月16日まで上演されました。
ミナモザは初見ですが、
今回は一種のスペシャル企画で、
ダブルヒロインには、
周防映画の主役を務めた、
東宝シンデレラの高校生、上白石萌音さんと、
元宝塚娘役トップの、陽月華さんが、
ゲストで顔を揃えた豪華版です。
内容的には陽月さんが主宰の瀬戸山さんを演じ、
彼女が手に取ったドイツの小説のヒロインを、
上白石さんが演じます。
原発事故という災害に対して、
1人の個人がどう戦うべきかを、
真っ向から扱った力作で、
この世代は男女を問わず、
こうした真っ向勝負の社会派の劇作家が多いと思います。
僕は根っからのアングラ好きなので、
こういうストレートで、
ある意味「青年の主張」的な情熱は、
あまり好みではないのですが、
随所に才能を感じさせる部分がありましたし、
メディアが応援するのも分かる気がします。
ただ、最後のモダンダンスや舞踏もどきに、
変な振りを入れながら、
主人公が長々と自己主張するのは、
内容が内容だけに、
さすがに気恥しいような思いはありました。
役者は上白石さんが圧倒的で、
これはビックリしました。
周防監督でなくても、
一度その芝居を観れば、
即座に主役に抜擢するだろうな、と思います。
背が小さいのにもビックリで、
とても高校生には見えません。
プロフィールは152センチですが、
もっと絶対低いよな、と思いました。
何より演技が自然で、
表情に力があります。
大人に反抗するところなど、
こちらまで責められているような気分になります。
持続して演技が出来るように、
彼女が登場する場面は、
途切れなく続くように構成されていて、
長ゼリフはないなど、
台本も演出も彼女がやり易いように、
巧みに作られている点は、
瀬戸山さんの力量を感じました。
こうした配慮が、
おそらくは演出もする劇作家が、
メジャーになる条件です。
以下内容に少し踏み込みます。
「見えない雲」は、
チェルノブイリの原発事故から2年後に、
ドイツで発表された小説で、
ドイツでチェルノブイリを遥かに超える規模の、
原発事故が起こり、
それにより社会が大きく変わる様を、
14歳の被災した少女の目から描いた物語です。
純然たるフィクションですし、
かなり誇張された表現も目立つのですが、
被災者が被ばくのために差別されたり、
事故を忘れたいと願う多くの人との間に、
時間が経つにつれて軋轢が生じたり、
避難区域である故郷に、
戻りたいと願う被災者の心情を描いたりと、
他人事とは思えない、
多くの切実な描写を含んでいます。
この舞台では、
まず作家の瀬戸山さんの分身として、
陽月さん演じる若い女性が現れ、
小学生の時に図書館で「見えない雲」の訳書を手に取り、
読んだものの、そのことをすぐに忘れてしまった、
と語ります。
しかし、その後福島の原発事故が起こり、
その巨大な悪意に対して、
どう立ち向かうべきかに悩む中で、
「見えない雲」の予見性に心が至り、
ドイツに渡って、
原作者の女流作家の元を訪ねます。
その、おそらくは事実である物語の中に、
上白石さんが主人公の少女を演じた、
「見えない雲」の物語がインサートされます。
そして、最後に陽月さんの苦悩の独白があり、
「物語を紡ぐことで悪に立ち向かおう」
という意思表示があって、
2人の主人公は視線を交わし、
ラストは印象的な、
「見えない雲」のラストを再現して終わります。
休憩なしの2時間20分はかなり長いのですが、
「見えない雲」の物語自体に力があるのと、
上白石さんの芝居が見事なので、
退屈はせずに観通すことが出来ます。
不満は色々とあるのですが、
作者がテーマに真摯に向き合っているのが分かるので、
多少の瑕には目を瞑る気分になります。
なかなか考え抜かれた構成ですし、
シンプルな演出も、
児童劇的な臭みはありますが、
まずまず良く流れています。
特に、
避難先の親戚のおばさんと折り合いが悪く、
家を飛び出した主人公が、
実はそう悪い人ではなかったおばさんと再会し、
別れる場面などは、
切なくて泣けました。
ただ、ラストの陽月さんの長台詞は、
演出も異様ですし、
あまりにストレート過ぎて、
ちょっとどうにかならなかったのか、
と個人的には思いました。
また、少女が死んだ弟を菜の花畑に探しに行く場面は、
物凄く時間を引っ張るのに、
結局何もなく終わってしまうので、
別に蜷川演出みたいにして欲しい訳ではないのですが、
もう少し見せ場を作ってくれてもいいのにな、
とは思いました。
最初からモノトーンの舞台面で、
舞台奥の搬送用の扉まで最初から見せているので、
絶対これは何かあるよね、
と思うのですが、
結局何もないまま終わってしまうのです。
いずれにしても、
素直に心に響く、
ストレートな力作で、
演劇好き的には、
物足りない気分と違和感は残るのですが、
こうしたものの方が、
より一般の方の心には届くのかも知れません。
そして、繰り返しになりますが、
上白石さんは抜群でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
六号通り診療所の石原です。
朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
瀬戸山美咲さんが主催する劇団ミナモザが、
架空の原発事故を扱ったドイツの小説を翻案し、
一種のノンフィクション芝居として構成した作品が、
三軒茶屋のシアタートラムで、
12月16日まで上演されました。
ミナモザは初見ですが、
今回は一種のスペシャル企画で、
ダブルヒロインには、
周防映画の主役を務めた、
東宝シンデレラの高校生、上白石萌音さんと、
元宝塚娘役トップの、陽月華さんが、
ゲストで顔を揃えた豪華版です。
内容的には陽月さんが主宰の瀬戸山さんを演じ、
彼女が手に取ったドイツの小説のヒロインを、
上白石さんが演じます。
原発事故という災害に対して、
1人の個人がどう戦うべきかを、
真っ向から扱った力作で、
この世代は男女を問わず、
こうした真っ向勝負の社会派の劇作家が多いと思います。
僕は根っからのアングラ好きなので、
こういうストレートで、
ある意味「青年の主張」的な情熱は、
あまり好みではないのですが、
随所に才能を感じさせる部分がありましたし、
メディアが応援するのも分かる気がします。
ただ、最後のモダンダンスや舞踏もどきに、
変な振りを入れながら、
主人公が長々と自己主張するのは、
内容が内容だけに、
さすがに気恥しいような思いはありました。
役者は上白石さんが圧倒的で、
これはビックリしました。
周防監督でなくても、
一度その芝居を観れば、
即座に主役に抜擢するだろうな、と思います。
背が小さいのにもビックリで、
とても高校生には見えません。
プロフィールは152センチですが、
もっと絶対低いよな、と思いました。
何より演技が自然で、
表情に力があります。
大人に反抗するところなど、
こちらまで責められているような気分になります。
持続して演技が出来るように、
彼女が登場する場面は、
途切れなく続くように構成されていて、
長ゼリフはないなど、
台本も演出も彼女がやり易いように、
巧みに作られている点は、
瀬戸山さんの力量を感じました。
こうした配慮が、
おそらくは演出もする劇作家が、
メジャーになる条件です。
以下内容に少し踏み込みます。
「見えない雲」は、
チェルノブイリの原発事故から2年後に、
ドイツで発表された小説で、
ドイツでチェルノブイリを遥かに超える規模の、
原発事故が起こり、
それにより社会が大きく変わる様を、
14歳の被災した少女の目から描いた物語です。
純然たるフィクションですし、
かなり誇張された表現も目立つのですが、
被災者が被ばくのために差別されたり、
事故を忘れたいと願う多くの人との間に、
時間が経つにつれて軋轢が生じたり、
避難区域である故郷に、
戻りたいと願う被災者の心情を描いたりと、
他人事とは思えない、
多くの切実な描写を含んでいます。
この舞台では、
まず作家の瀬戸山さんの分身として、
陽月さん演じる若い女性が現れ、
小学生の時に図書館で「見えない雲」の訳書を手に取り、
読んだものの、そのことをすぐに忘れてしまった、
と語ります。
しかし、その後福島の原発事故が起こり、
その巨大な悪意に対して、
どう立ち向かうべきかに悩む中で、
「見えない雲」の予見性に心が至り、
ドイツに渡って、
原作者の女流作家の元を訪ねます。
その、おそらくは事実である物語の中に、
上白石さんが主人公の少女を演じた、
「見えない雲」の物語がインサートされます。
そして、最後に陽月さんの苦悩の独白があり、
「物語を紡ぐことで悪に立ち向かおう」
という意思表示があって、
2人の主人公は視線を交わし、
ラストは印象的な、
「見えない雲」のラストを再現して終わります。
休憩なしの2時間20分はかなり長いのですが、
「見えない雲」の物語自体に力があるのと、
上白石さんの芝居が見事なので、
退屈はせずに観通すことが出来ます。
不満は色々とあるのですが、
作者がテーマに真摯に向き合っているのが分かるので、
多少の瑕には目を瞑る気分になります。
なかなか考え抜かれた構成ですし、
シンプルな演出も、
児童劇的な臭みはありますが、
まずまず良く流れています。
特に、
避難先の親戚のおばさんと折り合いが悪く、
家を飛び出した主人公が、
実はそう悪い人ではなかったおばさんと再会し、
別れる場面などは、
切なくて泣けました。
ただ、ラストの陽月さんの長台詞は、
演出も異様ですし、
あまりにストレート過ぎて、
ちょっとどうにかならなかったのか、
と個人的には思いました。
また、少女が死んだ弟を菜の花畑に探しに行く場面は、
物凄く時間を引っ張るのに、
結局何もなく終わってしまうので、
別に蜷川演出みたいにして欲しい訳ではないのですが、
もう少し見せ場を作ってくれてもいいのにな、
とは思いました。
最初からモノトーンの舞台面で、
舞台奥の搬送用の扉まで最初から見せているので、
絶対これは何かあるよね、
と思うのですが、
結局何もないまま終わってしまうのです。
いずれにしても、
素直に心に響く、
ストレートな力作で、
演劇好き的には、
物足りない気分と違和感は残るのですが、
こうしたものの方が、
より一般の方の心には届くのかも知れません。
そして、繰り返しになりますが、
上白石さんは抜群でした。
それでは今日はこのくらいで。
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2014-12-20 08:31
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