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ぬいぐるみハンター「おせっかい母ちゃんリビングデッド」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日から診療所はいつも通りの診療に戻ります。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
ぬいぐるみハンター.jpg
若手劇団ぬいぐるみハンターの本公演、
「おせっかい母ちゃんリビングデッド」が、
今下北沢の駅前劇場で上演中です。

何となく古い芝居ばかりでなく、
こうしたものも観ておかねば、
とそんなことを考えて観に行ってしまいました。

感想はちょっと僕には厳しい感じでした。

何となく似ていると思うのは、
「猫のホテル」で、
この劇団も何度か観たのですが、
いつも途中でしんどくなり、
拷問に遭っているような気分になって、
最後まで集中の続いた例がありません。

役者さんは非常に面白くて達者な人が多いのです。
倫理的にはかなり危うい話で、
おじさん的にはこれはまずいのでは…
と感じてしまうのですが、
それは感性の違いなのかも知れません。

一番僕の体質に合わないのは、
物語を語りたいのか、
キャラを見せたいのかがどっちつかずで、
アドリブめいたパートを挟みながら、
何かダラダラと収束感なく物語が進んでしまうことで、
途中でイライラして観る気力を失ってしまうのです。

ですので、もうほぼ100%行かないと思いますが、
良し悪しではなく、感性の違いなので仕方がありません。

以下ネタばれを含む感想です。

キレやすい自分勝手な主人公は、
高校生の時に野球部でもめた上に、
金属バットを振り回して、複数の生徒に大けがを負わせ、
そのうちの1人は後遺症で痛みを感じない身体になっています。
本人は相手を殺したと思い込み、
同じ日に「母を人殺しの親にしたくない」
という身勝手な理由で、
自分の母親も金属バットで殴り、
今度は殺してしまいますが、
母親はゾンビになったのか幽霊になったのかは分かりませんが、
何故かそのまま生きていて、
それまで以上に駄目な息子の世話を焼き続けます。
どうやら周囲の人にも、
母親は生きているように見えるようです。

主人公はその後好きな音楽の道に進み、
一部にコアなファンのいる、
パンクバンドのボーカルになっているのですが、
そこでもメンバーと揉め、
どうやら野球部の時と同じ危険が迫っています。
幽霊の母親はバンドにマネージャーのように付き従い、
悲劇の再来を止めようとします。

高校時代にも殴られて後遺症になったクラスメートが、
バンドのメンバーにもなっていて、
再び壊れたベースを背中に突き立てられて血塗れになります。
しかし、今度は誰も死ぬことなく
(そのベースを刺されたメンバーは命が危ない気もしますが)、
やや改心した感じの主人公が母親に礼を言うと、
母は成仏して終わりになります。

駄目なマザコンの息子を、
幽霊の母親が見守るというのは、
古典的な感動を呼ぶストーリーの1つではあります。

ただ、それがかなり、
現代的というのか、殺伐とした感じでデフォルメされ、
主人公の同情出来ない性格設定や、
今のタイミングで金属バット殺人という趣向、
そして後遺症で痛みを感じないと言う設定を、
一種のギャグにするようなセンスが、
ケラやクドカンの戯曲にも、
こうした殺伐とした話はありましたが、
感性としては受け付けないものを感じます。

マザコン息子とおかんの交流を描くなら、
殺人や暴行のない話で充分なのに…
と思ってしまうからです。

作品は割とまったりした間合いで展開され、
無意味な会話をダラダラとしたり、
アドリブを入れたりという、
結構な入れごとがあります。
更には過去の場面や他の場面などを、
時々挟むのですが、
やや安易な劇作技巧であるように感じました。

これはまあ、個人的な好みの問題になるのですが、
安易な場面の転換や時制の移動は、
劇作全体にとっての明確な必要性のある時を除いて、
やるべきではないように思います。

劇作として、
安易な回想シーンを入れない、
というのは非常に重要なことだと思います。
小劇場はそれほど立派なセットを組んだりはしないで、
舞台が展開されるので、
その場を観客にどのように理解してもらうのか、
ということが非常に重要になるからです。
抽象的な舞台でポンポン時制が飛ぶのなら、
それはそれで良いのです。
そうしたものとして客も観るからです。
しかし、今回のように割と時間を掛けて、
ラストギグ前の楽屋の場面を描写しているのに、
それが別の場面や別の時制に、
セットチェンジもなく移行するのは、
安易で良くないと思います。

役者さんはなかなか面白いのです。
主人公を演じた元芸人のジェントルさんという方は、
キレやすいちょっと不気味な青年を、
それらしく演じていましたし、
母親を演じた神戸アキコさんも、
もう少し年齢設定を大事にした方が良いような気はしましたが、
達者に煩いおかんを、
それらしく演じていました。
他の男性キャストもなかなか達者です。

ただ、それだからこそ、
キャストの達者さを活かすのが、
アドリブやキャラ設定絡みの小ネタが主体では、
まずいのではないかと思います。
別にキャラ祭りならそれで良いのですが、
それに徹した台本が必要だと思います。
(その辺りは劇団新感線が物凄く巧みです)
今回のようにストーリーには明確な骨格があり、
テーマも明確にある場合には、
キャストの魅力は、
敢くまで役柄とストーリーの中にあるべきではないでしょうか?

作品世界が僕にはきついので、
もう行かないと思いますが、
キャラとストーリーが一体化した芝居に、
舵を切って欲しいなと個人的には思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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