SSRIの出血リスクとその脳卒中への影響について [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のStroke誌にオンライン掲載された、
SSRIというタイプの抗うつ剤が、
高齢者の脳卒中の予後に与える影響についての文献です。
SSRIは脳内のセロトニンを上昇させる作用に特化した、
現在最も頻用されている抗うつ剤です。
商品名ではデプロメールやパキシル、
ジェイゾロフトやレクサプロなどがそれに当たります。
SSRIは有用性のある抗うつ剤ですが、
セロトニンの急激な上昇により、
衝動性が一時的に亢進したりするような、
問題点も指摘されています。
更にあまり触れられることは少ないのですが、
脳内出血や消化管出血などのリスクを上昇させる、
と言う指摘が複数あり、
その弱い抗血小板作用が、
原因ではないかと考えられています。
一方で脳梗塞などの発症時には、
SSRIには神経細胞を保護するような作用があり、
予後改善が期待出来る、というような報告もあります。
今回の研究はデンマークにおいて、
2003年から2012年の間に18歳以上で、
出血性脳梗塞もしくは虚血性脳梗塞を発症した患者さんのうち、
発症前に一定期間SSRIを使用していた人を、
出血性梗塞では626名、虚血性梗塞では4478名抽出し、
対照となる患者さんでSSRIは未使用の、
それぞれ626名と4478名とを、
対比させてSSRIと脳卒中の予後との関連性を検証しています。
所謂脳の動脈硬化によって、
脳の血管が詰まって起こるのが脳梗塞で、
このうち血管周囲の出血を伴うものが、
出血性梗塞、
伴わないものが虚血性梗塞です。
SSRIの種類は補足データにも記載がありません。
確か同様のデンマークの研究では、
プロザックやパキシル、ジェイゾロフトが主体であったように思います。
SSRIの使用は脳卒中発症前90日以内に、
処方箋が発行されたかどうかでの判断なので、
その使用期間や使用病名も明確ではありません。
患者さんの年齢は平均では70代半ばですが、
20代の若年性梗塞の患者さんも含まれています。
要するに事例は多いのですが、
患者さんを登録してその経過を見たような試験とは違うので、
データの信頼性はそれほど高いものではありません。
その結果…
出血性脳梗塞の患者さんの解析では、
SSRIが未使用の場合と比較して、
SSRIを使用している患者さんでは、
発作後30日間での重症化リスクが1.41倍、
死亡リスクが1.60倍、有意に増加していました。
つまりはSSRIを使用していると、
出血性梗塞が悪化し易い、という結果です。
その一方で虚血性梗塞については、
SSRIの使用と患者さんの予後との間には、
明確な関連は認められませんでした。
このデータのみで脳梗塞とSSRIとの関連性を、
云々することは軽率には出来ませんが、
SSRIにより出血からの回復が遅延すると考えると、
一定の蓋然性はあるようにも思います。
ただ、SSRIを使用している主な理由はうつ病で、
うつ病では動脈硬化性疾患のリスクも上昇する、
というような報告もありますから、
基礎疾患の有無がこうした結果の差になっている、
という可能性も否定は出来ません。
いずれにしても、
特に高齢者へのSSRIの使用は、
その患者さんが出血性梗塞を来したケースでは、
その予後が悪化する可能性を念頭に置き、
より慎重にその適応を見極めると共に、
血圧などのコントロールにも、
充分留意することが、
患者さんのリスクを最低限に抑えるために、
重要なことのように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍も引き続きよろしくお願いします。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のStroke誌にオンライン掲載された、
SSRIというタイプの抗うつ剤が、
高齢者の脳卒中の予後に与える影響についての文献です。
SSRIは脳内のセロトニンを上昇させる作用に特化した、
現在最も頻用されている抗うつ剤です。
商品名ではデプロメールやパキシル、
ジェイゾロフトやレクサプロなどがそれに当たります。
SSRIは有用性のある抗うつ剤ですが、
セロトニンの急激な上昇により、
衝動性が一時的に亢進したりするような、
問題点も指摘されています。
更にあまり触れられることは少ないのですが、
脳内出血や消化管出血などのリスクを上昇させる、
と言う指摘が複数あり、
その弱い抗血小板作用が、
原因ではないかと考えられています。
一方で脳梗塞などの発症時には、
SSRIには神経細胞を保護するような作用があり、
予後改善が期待出来る、というような報告もあります。
今回の研究はデンマークにおいて、
2003年から2012年の間に18歳以上で、
出血性脳梗塞もしくは虚血性脳梗塞を発症した患者さんのうち、
発症前に一定期間SSRIを使用していた人を、
出血性梗塞では626名、虚血性梗塞では4478名抽出し、
対照となる患者さんでSSRIは未使用の、
それぞれ626名と4478名とを、
対比させてSSRIと脳卒中の予後との関連性を検証しています。
所謂脳の動脈硬化によって、
脳の血管が詰まって起こるのが脳梗塞で、
このうち血管周囲の出血を伴うものが、
出血性梗塞、
伴わないものが虚血性梗塞です。
SSRIの種類は補足データにも記載がありません。
確か同様のデンマークの研究では、
プロザックやパキシル、ジェイゾロフトが主体であったように思います。
SSRIの使用は脳卒中発症前90日以内に、
処方箋が発行されたかどうかでの判断なので、
その使用期間や使用病名も明確ではありません。
患者さんの年齢は平均では70代半ばですが、
20代の若年性梗塞の患者さんも含まれています。
要するに事例は多いのですが、
患者さんを登録してその経過を見たような試験とは違うので、
データの信頼性はそれほど高いものではありません。
その結果…
出血性脳梗塞の患者さんの解析では、
SSRIが未使用の場合と比較して、
SSRIを使用している患者さんでは、
発作後30日間での重症化リスクが1.41倍、
死亡リスクが1.60倍、有意に増加していました。
つまりはSSRIを使用していると、
出血性梗塞が悪化し易い、という結果です。
その一方で虚血性梗塞については、
SSRIの使用と患者さんの予後との間には、
明確な関連は認められませんでした。
このデータのみで脳梗塞とSSRIとの関連性を、
云々することは軽率には出来ませんが、
SSRIにより出血からの回復が遅延すると考えると、
一定の蓋然性はあるようにも思います。
ただ、SSRIを使用している主な理由はうつ病で、
うつ病では動脈硬化性疾患のリスクも上昇する、
というような報告もありますから、
基礎疾患の有無がこうした結果の差になっている、
という可能性も否定は出来ません。
いずれにしても、
特に高齢者へのSSRIの使用は、
その患者さんが出血性梗塞を来したケースでは、
その予後が悪化する可能性を念頭に置き、
より慎重にその適応を見極めると共に、
血圧などのコントロールにも、
充分留意することが、
患者さんのリスクを最低限に抑えるために、
重要なことのように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍も引き続きよろしくお願いします。
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/05/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
2014-06-09 08:22
nice!(25)
コメント(2)
トラックバック(0)
先生、こんにちは
パキシル、以前のんでいましたが・・・吐き気が出るので中止しました。
参考になりました。
by ひでほ (2014-06-09 09:50)
ひでほさんへ
コメントありがとうございます。
SSRIの吐き気やめまいは多いですね。
by fujiki (2014-06-10 06:03)