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水族館劇場「Ninfa 嘆きの天使」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
嘆きの天使.jpg
野外に巨大な仮設劇場を立ち上げ、
舞台上の池から吹き上げる噴水と、
天井から降り注ぐ水の仕掛けがトレードマークの、
水族館劇場の新作公演が、
今三軒茶屋にほど近い太子堂八幡神社の境内で、
上演されています。

こうした大仕掛けの仮設劇場芝居は、
大阪の維新派と九州出身のこの水族館劇場が、
今では双璧という感じで、
東京には桟敷童子というのがありますが、
スケールは大分落ちる感じです。

維新派は演劇というより、
一種のレビュー色が強く、
洗練は最もされていて、
スケールも大きいのですが、
演劇としての物語に身を委ね、
感情を高めるような醍醐味には乏しく、
その点には物足りないものを感じます。

桟敷童子はその前の世代の、
唐組や黒テント、新宿梁山泊から派生した劇団です。
主催者の出身は福岡で、
作品には地方色もあります。
唐先生的な台本に、
世代的にジブリ的な色がまぶされ、
思想色もちょっと引き継いでいる、
という感じです。
ゲストの役者さんが揃うと、
なかなか見応えがあるのですが、
劇団員の役者さんとしての魅力が、
正直今一つなので、
真面目に見ていると、
後半はグダグダになる感じが抜けません。

水族館劇場は、
通常劇場などないような異質な場所に、
5階建てのビルくらいはある、
巨大な仮設劇場をその度に自力で建設し、
大量の水を使った演出や、
巨大な吊りものを野外に浮かせたりする趣向は、
今の演劇シーンでは最も大掛かりなものと言って、
過言ではありません。
水の噴き出すプールは、
新宿梁山泊や桟敷童子でも披露はされましたが、
そのスケールはまるで違います。

また非常に危険な場所で、
自家製の怪しい宙乗りを披露したりする無鉄砲さも、
かつての唐先生などのアングラではお馴染みでしたが、
今ではすぐブラック企業とか人権無視とかと言われてしまうので、
水族館劇場以外では、
殆ど見ることが出来ません。

思想的には、
労働者の連帯的なことを言ったり、
ドヤ街を即席芝居で廻ったり、
サポーターに大学教授が付いたりしているところは、
かつての黒テントに似ています。

そんな訳で非常に魅力的な集団なのですが、
問題は作品が演劇として面白いかどうか、
ということで、
僕はこれまで4回の舞台に足を運んでいますが、
残念ながらその点に関しては、
正直これまで面白いと思ったことはありません。

最初に見たのは駒込大観音の境内に造られた仮設舞台で、
それが一旦中断された後、
昨年から三軒茶屋の太子堂八幡神社に処を移しました。

こんな場所です。
太子堂八幡神社正面.jpg
三軒茶屋から歩いて10分くらいの場所なのですが、
非常に静かな住宅街の中に、
太古の森のような鎮守の森が、
忽然と現れる辺りが何とも言えません。

以前の駒込大観音も素晴らしかったのですが、
実に良い場所を、
巧みに探して来るのにはいつも感心します。

鳥居をくぐり、
数段の石段を登ったところに仮設劇場がそそり立っています。
それがこちらです。
水族館劇場テント全景.jpg
味もそっけもない外観なのは、
ちょっと減点因子です。
もうちょっと外観の美術にも、
気を遣って欲しい、という気はします。

しかし、周囲の風景には溶け合っていて、
奥の本殿より目立つ色を使っていないので、
それはそれで良いのかな、
という感じはします。

もう一枚見て頂きます。
プロローグ舞台.jpg
これは仮設劇場の外壁の一部なのですが、
それが鎮守の森と同化していて、
野外に小さな舞台がしつらえられ、
舞台の周囲は水路になって水が張られています。

ここでまずプロローグが野外劇として上演され、
それから観客は劇場へと誘導されるのです。

このプロローグのみは、
木戸銭を払わなくても、
自由に見ることが出来ます。

以下ネタばれがあります。

僕が見たこれまでの水族館劇場の4回の舞台は、
全て同じパターンの構成になっていました。

まず野外のプロローグの上演があります。
これは概ね本編に登場する人物が、
一組ずつ登場してそれぞれの役割を紹介し、
それから紙芝居や曲芸などの演芸の披露的なものがあり、
それから仕掛けも使ってメインの役者さんの登場があり、
ほぼ全てのキャストが出揃ったところで、
皆で劇中歌を歌って終わりになります。
音楽はスピーカーからも流れますが、
ちょっとした生演奏も加わります。

プロローグは最初に見た時はワクワクしました。
ただ、役者さんの演技レベルがかなり低く、
唐先生の特権的肉体論を体現する、
というような感じなのに、
魅力が乏しく、ただ下手なだけなので、
次第にオヤオヤという感じになります。

また、途中で披露される芸がやたらと長く、
しかも今回などは素人が演じるので、
それですっかりダレてしまいます。

以前本物の紙芝居が演じられた時は、
結構見応えがあったのですが、
今回の神楽のような曲芸はグッタリしました。

このプロローグが30分くらいあります。

これは幾ら何でも長過ぎると思います。

その上、その後で整理番号順にお客さんを並ばせて、
それから客入れになるので、
せっかく気分が盛り上がったのに、
また醒めてしまうのです。

いつも思いますが、
プロローグはもっと短くするべきです。
全てのキャストが出る必要などなく、
印象的な場面にちょっとした仕掛けがあって、
歌があればそれで充分です。
しかも、内容が本編と繋がるものであれば、
客入れはもっと短い時間で行なうべきで、
そうでなく時間を掛けて客入れをするのであれば、
本編とプロローグは内容的に独立させるべきだと思います。

同じ話が時間を置いて始まるのが間抜けだからです。

本編はいつも長めの1幕目と、
短めの2幕目とに分かれていて、
1幕のラストでは舞台が横にスライドして、
そこにプールが現れ、
大量の水が噴水のように噴出し、
上からは滝が降り注ぎます。
その中に吊り物が登場して一旦幕が閉じます。

今回は少女を閉じ込めた赤い檻が、
水底から上昇しました。

これはまあ、ビックリしますし、迫力があります。
ただ4回の公演とも、両サイドに小さな周り舞台があり、
プールの仕掛けも同じでした。

どんなに凄い仕掛けでも、
毎回同じでは矢張り新鮮味がなくなります。

その点はもう少し工夫が必要ではないかと思いました。
せっかく劇場の設営場所も変えるのですから、
それに合わせて仕掛けも変えないと、
毎回別のストーリーが展開される意味がなくなってしまいます。

更に問題なのは、
2幕までの幕間に、
時間が掛かり過ぎる、ということです。

プール自体はそのままで、
上に載せる舞台を変えるのですが、
非常に時間が掛かりますし、
かなり音がして転換が騒々しくなります。
その場つなぎのために、
再び宴会芸的なものが披露されます。

今回は山谷の玉三郎という通称の老人が登場し、
一種の当て振りのようなものを演じましたが、
その方がどういう方か分かっている観客であれば良いのですが、
分からないとビックリしますし、
異様に感じます。
僕はこんなものかと思って見ていたのですが、
一緒に行った妻はショックを受けていて、
もう絶対に見には行かない、と宣言していました。

僕が一番問題だと思うのは、
こうした本編と全く関連のない宴会芸を入れることで、
演劇としての持続性が、
そこで全く失われてしまう、ということです。

これならば、休憩にした方が余程イメージが持続すると思います。

何より水の仕掛けを駆動させると、
舞台転換にこれほどの時間が掛かるのであれば、
1幕のラストにそれを持って来る、と言う構成が、
問題なのではないでしょうか?

僕の意見としては、
1幕のラストには、
別個の仕掛けを用意し、
転換は早めて、
水の仕掛けはラストに取っておいた方が、
より効果的で展開もスムースだと思います。

どうしても2回水の仕掛けを使用したいのであれば、
休憩を入れて、
1幕と2幕を別個のエピソードで構成する方が、
演劇としての完成度は上がると思います。

ストーリーは連続しているのにも関わらず、
プロローグ、1幕、2幕と、
それが分断されてしまうことが、
演劇作品として致命的なのではないかと、
個人的には思うからです。

今回の作品は永山則夫がモチーフで、
彼の母親や妹との人間ドラマも描かれます。
これまでより比較的分かり易い筋立てで、
統一感は悪くなかったので、
それだけにやや杜撰ないつもの構成は、
残念に思えました。

いずれにしても、
開幕前のワクワク度では、
日本一と言って過言ではない劇団なので、
内容の緻密さを再度見直して、
最後までそのワクワク度が落ちないような素晴らしい舞台を、
今後期待したいと思います。

妻はもう行かないと思いますが、
僕は懲りずに来年も足を運ぶ予定です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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ご一読の上ご感想など頂ければ、
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よろしくお願いします。

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