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血小板増多と慢性閉塞性肺疾患の予後との関連性について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
COPDと血小板.jpg
先月のThorax誌に掲載された、
慢性の呼吸器疾患の患者さんの予後と、
血液の血小板の数値との関連についての文献です。

小ネタ的なものですが、
臨床的には興味深い点があります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)というのは、
主にタバコを原因として、
慢性の気管支炎や肺気腫などの肺の変化が、
進行してゆく病気です。

このCOPDは肺の病気であるだけではなく、
心筋梗塞などの心臓病や高血圧、糖尿病などのリスクも、
増加させることが疫学的な研究から分かっています。

何故心臓病とCOPDに関連があるのか、という点については、
色々な要因が考えられますが、
1つ確実と思われるのは、
気道の細菌性の炎症が、
全身に影響を及ぼしているという可能性です。

全身に放出される炎症物質は、
動脈硬化を進行させる大きな誘発因子です。

COPDの進行は、
通常急性増悪と呼ばれる、
呼吸状態の急性の悪化を繰り返すことによって起こります。
この急性増悪の誘発因子も気道の感染です。

従って、この気道の炎症の度合いが強いかどうかが、
COPDの患者さんの予後に繋がる可能性が考えられます。

血小板は一般の臨床においても、
簡単に測定の出来る検査ですが、
炎症により増加するという特徴があります。
血小板の増加と活性化は、
炎症を惹起すると共に、
凝集して微小な血栓を形成します。

今回の研究はイギリスの大規模な疫学データを活用して、
COPDの急性増悪時の血小板数と、
その後の経過との関連性を検証しています。
2009年から2011年に掛けて、
COPDの急性増悪のために入院した、
41歳以上(平均年齢72歳)の1343名を対象に、
入院時の血小板数と、
その後1年の死亡リスクとの関連性を検証しています。

その結果…

血小板数が40万/μLを越える患者さんでは、
15万から40万の患者さんと比較して、
入院中の死亡リスクが2.37倍、
退院後1年以内の死亡リスクが1.53倍、
それぞれ有意に増加が認められました。
退院後の心疾患による入院のリスクは、
有意な増加を示しませんでした。

何らかの理由により、
アスピリンやクロピドグレルという、
抗血小板剤を使用していた患者さんでは、
入院中の死亡リスクには差はありませんでしたが、
退院後1年の死亡リスクは47%の低下が認められました。

要するにCOPDの患者さんにおいて、
症状の増悪時の血液の血小板数は、
その後の生命予後と関連する可能性があり、
抗血小板剤の使用により、
そのリスクが低下する可能性がある、
ということを示唆する結果です。

これは炎症による血小板の活性化が、
COPDの悪化にも結び付いていると仮定すると、
一応筋は通る結果です。
ただ、抗血小板剤は炎症そのものを抑える効果は弱いので、
心疾患の発症などとは無関係とすると、
何故1年のリスクを低下させているのか、
そのメカニズムは必ずしも明らかではありません。

いずれにしてもこれは、
後から疫学データを解析しただけのものなので、
今後COPDの患者さんをエントリーして、
血小板数をモニターして予後を検証したり、
抗血小板剤の使用群と非使用群とに分けて、
その予後や急性増悪のリスクなどを検証するような、
より精度の高い試験での、
確認が望ましいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

追伸です。
本が昨日から発売中です。
よろしくお願いします。


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