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アルバン・ベルク「ヴォツェック」(新国立劇場上演版) [オペラ]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から診察室の片付けなどして、
それから今PCに向かっています。

最初にお願いなのですが、
メール相談のメールが届かなかったり、
こちらからお返事をお出ししても、
それが届かないケースがあり、
どうやら古い携帯のアドレスでは、
そうした結果になるようです。
恐縮ですがPCもしくはスマホのアドレスを、
使用して頂ければと思います。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
ヴォツェック.jpg
20世紀に入ってからのオペラの中では傑作とされる、
アルバン・ベルクの「ヴォツェック」が、
先日新国立劇場で上演されました。

古典と現代音楽との、
中間くらいに位置する作品で、
貧しい兵士が精神に変調を来して妻を殺し、
自分も溺れて死ぬ、
という何の救いもないダークなドラマを、
小動物の解剖をするような冷徹な視線で、
鋭利な刃物のような作品に仕上げています。

上演時間は1時間半ほどですが、
非常に濃密な作品で、
意外にメロディも持続はありませんが、
瞬間の美に溢れています。

今回の上演は、
歌手も実力派が揃っていて、
演出も好き嫌いはあるでしょうが、
演劇畑の演出で僕好みだったので、
なかなか楽しめました。

舞台には薄く水が張られ、
巨大な箱庭のようなセットが、
その上に宙吊りになっていて、
それが舞台上を微かに揺らぎながら前後に移動します。

作品世界を、狂ってゆく主人公の、
ある種の内的世界として見せているのですが、
白塗りの男達が水しぶきを上げながら朽木のように次々と倒れる場面など、
山海塾の「卵熱」を思い浮かべました。
間違いなく天井桟敷や山海塾の影響は受けています。

それに加えて表現主義的なきっかりとしたグロテスクな描写は、
如何にもドイツ演劇、という感じです。

演出はドイツの演劇界の演出家のようです。

演出の発想自体は小劇場演劇なのですが、
それを物凄くスケールを拡大して、
豪華絢爛にやっているので、
ある種の爽快感があります。
小劇場の演出をされているような方は、
非常に羨ましく感じたのではないかと思います。

絶対にこういうことは、
一度はやってみたいと思うからです。

ただ、歌詞自体がかなり詩的で直截的ではないので、
このように抽象的な演出になると、
事前にかなり内容を把握しておかないと、
いきなり聴いても話が分からずに混乱してしまうきらいがあります。

字幕は歌詞に比較的忠実なものだったと思うのですが、
今回のような作品では、
むしろストーリーの解説的な字幕の方が、
より良かったのではないかと思いました。

歌手陣は主役の二グルも当たり役だけあって、
緊張感の高い熱演でしたし、
老練なヴォルフガング・シュミットもさすがです。
主人公の殺される妻役のエレナ・ツィトコーワは、
新国立の功労者ですが、
そのほっそりとした体躯に似合わず、
ワーグナーもOKの体力と気力があり、
今回の歌唱も、
瞬発力に長けた優れたものでした。

総じてこの難解な作品の真価が味わえる優れた上演でしたが、
内容をもう少し分かり易くする工夫が、
字幕などにあるとより良かったのではないかと思いました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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