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7価肺炎球菌ワクチン(プレベナー)の肺炎予防効果について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
7価肺炎球菌ワクチンの効果.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
7価肺炎球菌結合ワクチンの使用による、
各年齢層の肺炎による入院の増減を検証した論文です。

肺炎球菌による肺炎や髄膜炎の予防のため、
アメリカでは2000年以降7価肺炎球菌結合ワクチンの、
お子さんへの接種が開始されました。

肺炎球菌のワクチンには、
23価肺炎球菌多糖体ワクチン(商品名ニューモバックス)と、
この7価肺炎球菌結合ワクチン(商品名プレベナー)が、
現行日本では使用されています。

ニューモバックスは、
菌の抗原をバラバラにして、
そのまま使用する形式のワクチンで、
23種類の抗原が1つのワクチンの中に入っているので、
非常に効率は良く、
打った場所の脹れ以外には、
目立った有害事象が殆ど報告されていない、
非常に安全性の高いワクチンですが、
その効果は弱く、
発症予防ではなくあくまで重症肺炎の予防効果しかなく、
かつ細胞性免疫を誘導しないので、
2歳以下のお子さんには効果が期待出来ません。

このため、
より効果を高める目的で、
別個の抗原と結合させて、
その効果を強めたワクチンが、
主に2歳未満のお子さんの感染予防のために開発され、
感染の多い7種類の抗原をセットにした、
プレベナーが開発されました。

その後海外では、
より抗原の数を増やした、
11価、更に13価のワクチンが開発され、
アメリカでは2010年からは、
13価のワクチンに切り替わっています。

日本においても、
この13価のワクチンへの切り替えが、
近い将来予定されています。

さて、
7価のワクチンの接種開始後、
アメリカにおいては、
ワクチンに含まれる抗原を原因とする、
肺炎や髄膜炎の発症が減少し、
ワクチンの接種していない年齢層においても、
そうした感染の減少が確認されています。
お子さんの感染を予防することにより、
それ以外の年齢層の感染にも、
良い影響が表れているのです。

しかし、
その一方でワクチンに含まれてない抗原のタイプによる、
感染症は増えている、
というこれはあまり喜ばしくないデータもあります。

そこで今回の検討においては、
2000年のワクチン導入の前後において、
アメリカにおける全ての原因を含む肺炎の入院が、
どのように推移したのかを検証しています。

ある病原体に対する予防効果を持つワクチンの接種が、
その病原体のみへの効果ではなく、
トータルにその接種を行なった集団の健康状態に対して、
どのような影響を与えたかを検証している、
という点が今回の研究のポイントです。

ワクチンに含まれている抗原に対する予防効果は、
既に多くのデータで証明されているのです。
しかし、それは肺炎球菌の一部に過ぎないので、
それ以外のタイプの肺炎球菌の感染症や、
他のタイプの病原体による感染症には、
悪影響を与えている、
という可能性も否定は出来ないのです。
今回はそうした影響を、
もう少し大きな視点で見ている訳です。

その結果はどのようなものだったのでしょうか?

まずこちらをご覧下さい。
小児の肺炎球菌ワクチンの効果の図.jpg
2000年の接種開始から、
2009年に切り替えによる接種終了まで、
お子さんの肺炎による入院の数が、
どのように推移したのかを示した図になります。

接種の行なわれた2歳未満の年齢層においては、
明瞭に接種後肺炎による入院が、
減少していることが分かります。

ただ、この影響は2歳~17歳の年齢層においては、
殆ど認められてはいません。

それでは次をご覧下さい。
肺炎球菌ワクチンの年齢層別効果の図.jpg
各年齢層毎に、
肺炎による入院の数の推移を見た図になります。

青い線のワクチン接種以前と比較して、
オレンジと緑の線の接種開始後においては、
特に2歳未満の年齢層と、
85歳以上という高齢層において、
肺炎による入院が減っているのが分かります。

1989年から1999年に掛けての時期には、
高齢者の肺炎を減らすことを目的として、
高齢者へのニューモバックスとインフルエンザワクチンの接種が、
強力に推奨され、
ニューモバックスの接種者は、
65歳以上で14%から50%へと増加したのですが、
その影響よりも、
2歳未満のお子さんへの肺炎球菌ワクチンの接種の方が、
より高齢者の肺炎を減少させている、
という面白い結果が得られています。

そのメカニズムの詳細は不明ですが、
感染症のコントロールというのは、
必ずしもある年齢層への接種が、
その年齢層のみへの影響には留まらない、
と言う点は常に想定する必要があります。

今回のデータの意味合いは、
7種類の抗原のみを含むワクチンの、
2歳未満の年齢層への接種が、
結果としては全年齢層の肺炎の入院に、
トータルに良い影響を与えている可能性を示唆するもので、
今後13価のワクチンへの切り替えで、
またどのような影響が見られることになるのか、
今後の解析の結果も、
また注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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