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COPDの急性増悪に対するステロイドの使用期間について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
COPDにおけるステロイドの使用期間について.jpg
今月のJAMA誌に掲載された、
慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する、
ステロイドの使用法についての論文です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)というのは、
主にタバコを吸っていた高齢者において、
肺の機能が低下したり、
気道の感染を繰り返したりといった、
多くの変化が起き、
それが徐々に進行するという病態に、
名付けられた名称で、
「タバコ病」とでも言うべき概念です。

以前は肺気腫とか慢性気管支炎といった病名を、
個別に付けていたものを、
ひっくるめて1つの病気としているので、
かなり大雑把で曖昧な部分があります。

CKD(慢性腎臓病)というのもそうですが、
一般にも分かり易い、
「敵」としての病名を作り、
それを殲滅することを正義とする、というのが、
欧米様のお考えです。

アルカイダの殲滅というのと一緒で、
気に入らないものはこの世から消してしまえ、
というのは僕は個人的にはどうも抵抗があり、
特にCOPDという概念は、
あくまで「タバコ撲滅」という目標のために、
道具として作られた病名なので、
純粋に医学的なものでも、
科学的なものでもなく、
使いたくはないのですが、
アメリカ様のおっしゃることなので、
仕方がありません。

自分達でタバコという悪習慣を広めて、
恰好良いというイメージまで捏造し、
大儲けをしておきながら、
急に手の平を返して、
「君達はまだあんなものを吸っているの、健康に悪いよ」
と言い放ち、
「あんなものは撲滅してしまえ」
というのですから、
本当に勝手な奴らです。

すいません。
話が逸れました。

COPDの経過の問題は、
概ね気道の感染などをきっかけとした、
呼吸の急性増悪を繰り返し、
その度に肺の機能が低下して、
病状が悪化することにあります。

この急性増悪時の病状のコントロールのために、
国際的なガイドラインでは、
1日プレドニン40mg程度のステロイドを、
10~14日間継続して使用することを推奨しています。

昨日取り上げた吸入ステロイドの使用と同じように、
これも元々は気管支喘息の急性増悪時の治療ですが、
それをCOPDの急性期の使用にも、
拡大して行なっているのです。

1990年代以降の幾つかの臨床試験の結果として、
こうしたステロイドの使用により、
患者さんの予後の改善や、
急性期の呼吸機能の改善、
入院期間の短縮などの効果のあることが確認されています。

ただ、
その使用期間については色々な意見があります。

1週間以上の使用がこれまではスタンダードな方法ですが、
最近のコクランレビューによると、
7日以内の使用でも、
7日を超える使用でも、
臨床試験の再解析の結果からは、
有意な差はなかった、
という結論になっています。

まあコクランレビューは、
いつもそんな感じですから、
そのまま鵜呑みにもし難いのですが、
ステロイドを長期使用すれば、
それだけ免疫系も抑制されて、
むしろ次の急性増悪に繋がるリスクも考えらえます。

そこで、
より短期間のステロイド治療と、
通常のステロイド治療の効果を、
より厳密に検証するために行われたのが、
今回ご紹介する文献の研究です。

スイスの5か所の専門医慮施設において、
COPDの急性増悪で運ばれた患者さん、
トータル314名をくじ引きで2つの群に分け、
患者さんにも主治医にも分からない形で、
通常の治療に上乗せして、
一方は日40mgのプレドニンを14日使用し、
もう一方には5日のみ使用して、
残りの9日間は偽薬を使用します。
そして、
その後半年間の経過を観察し、
その安全性と効果、
主に半年間での急性増悪の再発の有無を検証しています。

その結果…

両者の予後には基本的に何の違いもありませんでした。

半年間の再発率は、
5日使用群で37.2%で、
14日使用群で38.4%で違いはなく、
最初の再発までの期間は、
むじろ5日使用群で長い傾向にありました。

つまり、
COPDの急性増悪に対してのステロイドの使用は、
5日間で充分ではないか、
という結果です。

この結果のみで、
単純に治療期間を短縮して良いか、
という判断は難しいところですが、
病態がそれほど重症ではないケースでは、
より早めの離脱を検討するのが妥当だ、
ということは言えるのではないかと思います。

今日はCOPDの急性増悪に対する、
ステロイドの使用期間についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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tosh

半年後は何の違いもないとして、
14日後(急性増悪そのものに対する効果)はどうだったのかなというのが気になります。
by tosh (2013-06-11 09:48) 

fujiki

tosh さんへ
ご指摘ありがとうございます。
基本的には両群とも、
治療の経過に明確な差はない、
ということのようです。
ただ、詳細はあまり記載がありません。
実際の入院期間には、
かなりの幅があるようです。
また、気管支拡張剤や抗生物質なども含めて、
かなりがっちりとした管理が行われていて、
医師の判断によって、
追加でステロイドを使用するオプションもあるので、
一旦は早めに経口のステロイドを抜く、
というだけの違いのように思えます。
by fujiki (2013-06-12 08:27) 

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