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ビタミンD不足と妊娠中毒症との関連性について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビタミンDと妊娠.jpg
先月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
妊娠中のお母さんのビタミンDの不足と、
その胎児やお母さんに与える影響についての論文です。

ビタミンDはビタミンという名前は付いていますが、
実際にはステロイドホルモンの一種で、
骨の代謝に重要な役割果たすのみならず、
細胞の代謝や増殖の調整に、
多くの働きをしている物質です。

ビタミンDの不足が、
妊娠の母体の合併症に影響するのではないか、
という考えは以前からあり、
そうした疫学研究も複数報告されていますが、
2011年に発表された総説においても、
必ずしも明確に妊娠中の悪影響は、
証明はされていません。

今回の研究はこれまでの主要な文献をまとめて解析する、
「メタ解析」の手法を取り入れて、
ビタミンD不足の妊娠への影響を、
改めて検証したものです。

その結果…

信頼度の高い文献を解析した結果として、
身体のビタミンD不足を最も正確に反映しているとされる、
血液の25‐OHビタミンD濃度が不足域まで低下していると、
そうでない場合に比較して、
妊娠糖尿病のリスクが1.49倍、
妊娠高血圧腎症のリスクが1.79倍、
胎児発育遅延のリスクが1.85倍、
いずれも有意に増加していることが確認され、
また25‐OHビタミンDの濃度が低値であると、
細菌性膣炎や低出生体重児のリスクも増加することが確認されました。

つまり、
ビタミンDの妊娠中の不足が、
多くの妊娠合併症のリスクを高めることが、
メタ解析上は認められたのです。

この場合の不足を示す25‐OHビタミンDの濃度は、
文献によりばらつきがありますが、
25~73.5nmol/Lとなっています。
日本ではこの検査は現在保険適応にはなっていません。
僕が以前研究でデータを取っていた時には、
概ね20ng/ml以下が、
欠乏とする考えが一般的でした。
この数値はnmol/Lに直すと、
50nmol/Lくらいになります。
従って、これがおおよその目安です。

この結果が仮に事実として、
何故ビタミンDが不足すると、
妊娠糖尿病や高血圧、胎児の発育不全などが起こるのでしょうか?

これはまだ明確には分かっていない事実ですが、
ビタミンDにはインスリン抵抗性を改善する作用があるので、
それが不足することによって、
妊娠糖尿病が起こり易くなるという可能性があり、
骨の発育を促す作用が障害されることにより、
発育不全の生じる可能性があり、
胎盤の形成にビタミンDが関与するのでは、
というデータがあることから、
妊娠高血圧との関連性も推定がされています。

ただ、これはあくまで推測レベルの話です。

また、
ビタミンDの不足を事前にチェックして、
それを補うことにより、
妊娠合併症が減少するのかどうかも、
まだしっかりとした検証はあまりされておらず、
今後の課題と考えられます。

現状日本においては、
ビタミンDの不足を保険診療の範囲では測定することが出来ないので、
出来ることは限られます。
ビタミンDが不足しないように、
サプリメントを通常の指示量程度摂って頂くことは、
一定の有効性があると思いますが、
過剰のビタミンDは血液のカルシウムの上昇などを介して、
却って身体に悪影響を与える可能性もあり、
その通常量を越えた使用は、
慎重に考えるべきだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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