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和束弥勒磨崖仏 [仏像]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

診療所は明日4日までは休診となります。

皆さんも良いお正月をお過ごしのことと思います。

休みの日は趣味の話題です。

今日は京都の南で奈良県との境に近い、
和束町にある石仏を観て頂きます。

奈良の北方、
木津川市の方向から、
和束川という山間の川に沿って、
和束町の中心部へと向かう細い国道を走ると、
左手の川の向こうに立つ大きな岩に、
見事な磨崖仏が刻まれているのが目に止まります。

奈良県の近郊には多くの磨崖仏がありますが、
時代を鎌倉時代より以前に限って言えば、
その中でも最も大きく、
最も優れたものの1つです。

それが通称和束弥勒磨崖仏です。

国道を少し先に進み、
和束川に掛かった狭い橋を渡ると、
お茶の畑が広がり、
郵便局員の方が、
スクーターでのんびりと、
年賀状の配達に廻っています。

こんなのどかな正月に、
ただ磨崖仏を拝みたいだけのために、
うろうろしているのも不審者のようですが、
この辺りかと目星を付けて車を停め、
そこから畑の中の道を歩いて行きます。

道はしばらくするとただ雑草を刈り取っただけの、
踏み分け道のようになり、
途中で小川を越えるところでは、
ただの太い竹が、
渡してあるだけのところを渡ります。

そこから再び踏み分け道を辿ると、
遂に前方に磨崖仏が姿を現わします。
この時の感動は、
とても言葉では言い表わせません。
こちらです。
和束弥勒磨崖仏遠景.jpg
磨崖仏の正面には簡易の足場のようなものが組まれています。

そこに立ち、
間近に弥勒菩薩様を見上げ、
静かに手を合わせます。

それでは、
弥勒菩薩様の全景を観て頂きます。
こちらです。
和束弥勒磨崖仏全景.jpg
大きさのイメージが、
画像では掴み難いかも知れません。

この岩の高さが6~7メートルほどあり、
仏様自体の高さも3メートルを優に越えます。

丈六というにはサイズが小さいですが、
それに近いスケールのもので、
間近で仰ぎ見ると、
かなりの迫力があります。
仰ぎ見るとこんな感じになります。
和束弥勒磨崖仏見上げ.jpg
丁度陽の光が後光のように、
そのお顔に当たって、
掛け値なしに金色のように輝いています。
非常に風化が少なく、
彫り込まれた時の状態を、
かなり美麗に保っています。
それでいて、
周囲の苔生した感じが、
神性を静かに感じさせるのです。

次にこちらをご覧下さい。

和束弥勒磨崖仏銘文.jpg
写真では分かり辛いのですが、
仏様の右側に、
はっきりと銘文が彫り込んであって、
鎌倉時代後期の1300年に像立されたことが分かっています。

勿論銘文などは後から刻むことも出来るのですが、
この仏様の場合、
様式としても鎌倉時代以前のもので、
ほぼ間違いがないので、
銘文自体の信頼性も高いのです。

図像的には、
僕の敬愛する柳生街道の夕日観音に、
非常に良く似ています。
あちらも観音様と通称されていますが、
実際には弥勒菩薩なのです。

彫りはシンプルですが、
素朴な中に霊的なものが確かに感じられ、
こうした荘厳なムードは、
室町時代以降の、
工芸品的な石仏には決して感じられないものです。

お顔も優しい中に、
人間ならざる厳しさを湛えていて、
古代の人の風格があります。
次にこちらをご覧下さい。
和束弥勒磨崖仏上方.jpg
岩の上方です。
前に立つ僕の上を覆うように、
木々が生えています。

では次を。
和束弥勒磨崖仏 岩の下.jpg
岩の下側ですが、
昔のままではなく、
一旦は大きな岩が上方から滑り落ちたことが分かります。

700年以上の月日が、
ここにこうして重ねられ、
本当に奇跡のように、
ほぼ同じお姿のままで、
こうした神格が存在し続けていることに、
素直に感動します。

しばらくはその場にいて、
去り難い思いでその場を後にしました。

この半分忘れ去られたような雰囲気が、
この磨崖仏の魅力の1つなのですが、
和束町と京都府の方針として、
昨年磨崖仏への道を整備し、
駐車場も設けるような予算が、
計上されたそうです。

磨崖仏を後世に残すためには、
そうした対策が必要なのだと思います。

ただ、
そうなるとこの今の磨崖仏の密やかな感じは、
近いうちに失われることになりそうです。

ちょっと残念ですが、
仕方のないことなのかも知れませんね。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い新年をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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コメント 6

a-silk

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
怪我が早く良くなることを、心より願っています。
by a-silk (2013-01-04 17:04) 

fujiki

a-silk さんへ
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
手はもう一息の感じで、
日常生活には、
特に問題はなくなりました。
by fujiki (2013-01-04 17:20) 

さーやん

明けましておめでとうございます
拙く記事数の少ないブログですが今年も宜しくお願い致します
by さーやん (2013-01-04 17:43) 

yuuri37

何を見せていただけるのか楽しみにしていました。
またまた素晴らしいお姿を拝見できてとても嬉しいです。
私が仏像を好きなのは、自然の産物ではないからなのです。人の手により生まれた姿に、じっとこの世を見続ける姿に、私は感動しちゃったんですよね。

by yuuri37 (2013-01-04 18:21) 

fujiki

yuuri37さんへ
コメントありがとうございます。
これは絶対のお勧めです。
静けさが去らないと良いのにな、
と思います。
by fujiki (2013-01-04 18:46) 

fujiki

さーやんさんへ
コメントありがとうございます。
今年もよろしくお願いします。
by fujiki (2013-01-04 18:46) 

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