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チョコレートとココアの認知機能改善効果について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

まず、こちらから。
ノーベル賞とチョコレートの図.jpg
これはチョコレートの消費量の多い国ほど、
人口当たりのノーベル賞の受賞者数が多い、
という相関を示したもので、
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
ユーモア・レポートです。
ノーベル賞を寿ぐ、
という意味合いも時期的にあるようです。
ウェブ掲載はもう少し前で、
その時に一部メディアにも取り上げられました。

内容は至極まっとうで、
論理構成に破綻はありませんが、
勿論そんな相関は笑い話に過ぎませんので、
一種のギャグなのです。
ただ、実際には大真面目に、
本来比較するべきでない因子同士を比較した論文が、
科学誌に掲載されることも稀ではないのが、
怖いところです。

上記の内容を、
論文として真面目に批判した、
笑えないコメントもありました。

ただ、
ノーベル賞との比較は笑い話にしても、
ココアやチョコレートに含まれる、
フラボノイドと呼ばれる植物由来物質に、
抗酸化作用や血圧低下作用、
認知機能改善作用などがあるとする複数の研究結果が、
存在することは事実です。

フラボノイドはポリフェノールの一種で、
ココアとブラックチョコレートに豊富に含まれ、
それ以外には赤ワインやコーヒー、紅茶にも含まれています。
しかし、
その含有量は矢張りココアとチョコレートが圧倒的です。

その効果を高齢の認知症の患者さんに使用した、
臨床試験の結果が、
今年のHypertension誌に掲載されています。
それがこちら。
フラボノイドと認知症論文.jpg
イタリアで行なわれた研究ですが、
90人の軽度認知機能障害の患者さんに、
ココアフラボノイドを、
用量を変えて1日1回、
8週間飲んでもらい、
その前後における認知機能や血圧、インスリン抵抗性などを測定、
その比較をしています。

その結果、
一般的な認知症の診断テストでは、
フラボノイドの効果は見られませんでしたが、
言語の円滑さの試験と、
視覚機能の課題をクリアする試験においては、
一定の改善効果が認められました。
インスリン抵抗性についても、一定の改善効果が認められました。

使用したココアフラボノイドの量は、
高用量では、
通常のココア6~7杯分くらいになります。
ミルクココアなどにすれば、
物凄いカロリーになりますから、
単純にココア何杯でこれだけの効果、
のような表現は危険に思えます。

この研究は実際に認知症の患者さんへの、
短期間の治療効果を見た点が新しく、
普通考えると、
ココアを多く飲む程度で、
認知機能が改善するとは考え難く、
ノーベル賞とココアの相関に、
似た危うさを感じるような部分もあります。

ただ、洋の東西を問わずこうしたデータは、
多少怪しげでも、
一般の注目を集め易く、
詰めが甘くても、
意外に一流の雑誌に、
掲載されることがあるようです。

ココアやチョコレートのフラボノイドに、
抗酸化作用などの効果のあることは事実ですが、
臨床応用に適うような、
認知症の改善効果があるかどうかについては、
まだ確定したもののようには、
捉えない方が良さそうです。

今日はココアの効用についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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