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酸化ストレスマーカー「8-OHdG」の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は酸化ストレスと、
それに伴うDNA損傷のマーカーである、
8-OHdGという代謝物の測定と、
その意義についての話です。

酸化ストレスというのは、
最近良く聞く言葉です。

酸素を利用する人間のような生物にとって、
酸化というのは最も重要な働きです。

身体に摂取された栄養素は、
酸素を消費することにより、
主に細胞の中にあるミトコンドリアによって、
エネルギーであるATPの産生に繋がります。

しかし、
この過程で活性酸素という、
過酸化物質が生成されます。

この過酸化物は、
紫外線や低酸素状態、
喫煙などの影響で増加し易いとされていて、
これを一般には酸化ストレスと呼んでいます。

酸化ストレスが何故よくないかと言えば、
DNAを形成する塩基を酸化することによって、
DNA損傷の原因となるからであり、
また身体の脂質や蛋白質、酵素を酸化することにより、
その働きを低下させ、
身体のバランスを崩す要因となるからです。

DNAの損傷は、
当然発癌に結び付き、
酸化した脂質である過酸化脂質は、
動脈硬化や糖尿病の誘因となり、
酵素の働きの低下は、
認知症の発症や身体の老化の進行に結び付きます。

勿論、
身体にはこの酸化ストレスを排除する仕組みがあります。

その1つは組織損傷の修復を行なう、
修復酵素です。

DNAを構成する塩基の1つである、
dG(デオキシグアノシン)は、
最も酸化による影響を受け易い部分です。

この部位が酸化すると、
修復酵素がすぐにその部位を切り離し、
細胞外へと排泄します。

この排泄物が、
8-OHdGです。

身体が排除する過酸化物は、
これ以外にも沢山あります。

しかし、
この8-OHdGはそのままの形で、
おしっこから100%排泄されるので、
おしっこでこの物質を検出することにより、
身体の酸化ストレスの程度、
特にDNA損傷の程度を、
推測することが可能になる、
という特徴があります。

この物質は1984年に日本の研究者によって初めて報告され、
当初はHPLCという方法で測定されていましたが、
これも日本の研究者により、
ELISA法により簡便に測定出来るキットが開発され、
販売もされています。

ただ、いつものことですが、
HPLC法とELISA法とは全く同じ物質を測定してはおらず、
ELISA法による測定値は、
HPLC法の2倍程度の高値を示すなど、
かなりの違いがあり、
国際的には測定の標準化が検討の段階にあります。

僕の悲観的な予想では、
日本でのみELISA法が標準となり、
海外の数値とは一致しないような、
いつもの経緯になりそうな気がします。

この測定については、
山のような論文が近年発表されていますが、
実際の臨床において、
活用はまだあまりされていません。

新しい検査というのはそういうもので、
じゃんじゃん測ればそれだけで1つ論文が出来てしまうので、
研究者は喜んで測りまくり、
その真の臨床における有用性が判明するのは、
それからしばらく経ってからのことなのです。

DNA損傷のマーカーと聞けば非常に魅力的で、
如何にも多くのことが分かりそうですが、
実際にはこのマーカーは、
癌は勿論のこと、
慢性肝炎でも糖尿病でも心不全でもアルツハイマー病でも上がり、
心筋梗塞においては、
急性期に上昇してそれから低下します。
喫煙や飲酒でも上昇し、
実際に精神的なストレスでも上昇するという報告もあります。
更には激しい運動をすれば、
その翌日には上がり、
魚類食品にはこの代謝物が含まれているので、
そうした食品を多く摂った後にも上がります。

つまり、
実際にはあまり特異性がない訳で、
現時点では、
この物質の数値のみで、
何か意味のあることは言い難いと思います。

要するにDNAの損傷は常に起こっていて、
それが全てトータルな形で、
この測定値に現われているのです。

最近この数値を放射線被ばくの影響として、
測定することが、
一部の医療機関で行なわれていますが、
勿論放射線によるDNA損傷においても、
この測定値は上昇すると思いますが、
当然ストレスでも上昇しますから、
その測定には左程の特異的な意味があるとは考え難く、
皆さんも無用な出費はしないように、
慎重にお考え頂ければと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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