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唐組「虹屋敷」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
虹屋敷.jpg
唐組の秋公演を観て来ました。

唐先生は外傷後のリハビリ中で、
多分唐組始まって以来の、
唐先生の出演しない本公演になります。

演目の「虹屋敷」は、
今回が同題では3回目の公演になり、
初演は1992年で、
再演が10年後の2002年です。
つまり、
丁度10年毎に上演がされている、
ということになる訳です。

初演は多摩プラザの公園にある、
池のほとりにテントを張っての公演で、
新宿梁山泊との鞘当興行でした。

シンプルですが、
なかなか味のある舞台で、
ラストは背景の海の絵の書割が背後に倒れると、
そのまま池の水の中に沈み、
舞台上のボートが着水して遥か彼方へ消えて行きます。

その素敵な情景は、
僕自身は話でしか知らない、
かつての不忍池の状況劇場の伝説を彷彿とさせて、
感慨深いものでした。

再演は西新宿と鬼子母神でしたから
ああこれは初演と同じ演出はないな、
とは思ったのですが、
それでも好きな作品ではあったので、
初演とそう変わりはない上演を期待していました。

しかし、
実際に観た再演の舞台は、
1幕はほぼ初演と同じであったものの、
2幕は殆ど新作になっていて、
初演にはなかった岸信介の登場などに至って、
その悪ふざけぶりに、
正直ガッカリした覚えがあります。

そして今回の3演目ですが、
唐先生不在の中での上演であり、
基本的には再演と同じ台本での上演になりました。

当時のチラシを引き出して見ると、
演出には唐十郎+久保井研という文字があり、
2002年の再演の舞台自体にも、
今回の取りまとめに当たった、
久保井さんが深く関わっていたことが分かります。

今回新たな気持ちで観た「虹屋敷」の舞台は、
2002年当時より間違いなく良かったと思いましたし、
戯曲自体も、
僕は矢張り初演版の方が良いと思いましたが、
この再演版も悪くないなと思いましたし、
意外にスケールの大きな構想で、
悪くない芝居だったのだな、
と再確認した思いがしました。

以下ネタバレがあります。

作品はネズミ駆除業をしている主人公の田口が、
親友の虹谷という男が失踪して、
その借金の肩代わりをする羽目になり、
虹谷の妹からの提案で、
自分が虹谷に変装して、
自己破産の手続きをする、
という計画が持ち上がります。

その虹谷という男が、
昭和の妖怪岸信介の愛人であった、
浅草ローズというストリッパーと、
時空を超えた夫婦の契りを交わしていて、
彼女から送られた「虹屋敷」という謎の屋敷が、
隠し不動産ではないかとして、
自己破産の計画の前に立ち塞がり、
借金取りや弁護士、
「何をしに来たのか分からない」
謎のバレエ教師のダンカンなどが絡んで、
秘められた昭和30年代に、
時間が巻き戻される、
というロマンチックな物語です。

謎の女性から兄の身代わりを頼まれる、
というのは、
その昔の「二都物語」を彷彿とさせますし、
2幕の時空が戻る感じは、
「ベンガルの虎」のようにも思えます。
ダンカンの存在は、
「ベンガルの虎」の謎の男のようです。

このように、
この戯曲には、
2000年以降の唐先生の作品にはあまりない、
かなりシンプルでロマンチックな感じがあって、
特に前半の軽快で緊密な展開と、
後半の虚構の兄妹を演じる場面などは、
非常に良く描けていると思います。

初演版では岸信介は登場せず、
もっと2幕もシンプルな物語で、
虹屋敷の模型が姿を現すと、
そこにどう入るのか、
というような議論になり、
最後はダンカンと田口との掛け合いが長く続いて、
湖の向こうにある虹屋敷に、
田口が漕ぎ出すエンディングだったように記憶しています。

一方で再演版では、
ダンカンと田口の掛け合いはなく、
時代が巻き戻されるイメージがより拡大し、
虹屋敷の模型は実は「花やしき」だった、
というオチになります。

セットもよく出来ていましたし、
キャストも好演で気合を感じました。

久保井研は唐先生の演じたダンカンを、
やや座長のコピーのように演じましたが、
今回に関しては、
それで良かったように思います。

2002年の再演の舞台では、
正直唐先生のダンカンの大暴れが強烈で、
筋が却って追い難くなる、
というきらいがあったのですが、
今回はその意味で、
この作品の真価が、
よりくっきりと出た舞台になったように思います。

個人的にはラストの処理にはもう一押しが欲しいな、
とは思いますし、
初演版ももう一度上演してくれないかな、
とは思いますが、
唐先生の初心者にも、
充分お勧め出来る舞台として、
迷われている方は、
是非テントに足を運んで頂きたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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