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糖尿病の併用治療について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日で午後は休診です。

朝から看取りでバタバタして、
まだ何も終わっていません。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ピクトーザとグリメピリドの上乗せ効果.jpg
今月のLancet誌に掲載された、
2型糖尿病の併用治療についての論文です。

2型糖尿病の治療についても、
甲状腺癌やバセドウ病、
高尿酸血症などと同じように、
日本の治療とアメリカやヨーロッパの治療との間には、
かなりの違いがあります。

欧米では2型糖尿病治療の第一選択は、
メトホルミン(商品名メトグルコなど)という飲み薬で、
それが使用出来なかったり、
効果が不充分な場合に限って、
他の治療薬が選択されますが、
日本においては、
メトホルミンはその副作用へ危惧から、
長くあまり使用されない時代が続き、
最近になりその再評価と用量の変更が行なわれて、
使用がされるようになりましたが、
まだ海外との間には、
その使われ方には、
かなりの開きがあります。

その一方で、
日本においては、
SU剤というタイプの飲み薬が、
長く2型糖尿病の基礎薬という位置付けにあり、
最近では飲み薬の、
DPP-4阻害剤というタイプの薬が、
より膵臓を保護する作用が強い、
という触れ込みで、
基礎薬として使用されるようになっています。

しかし、
欧米では概ね飲み薬のDPP-4阻害剤は、
効果がSU剤より劣る、
という観点から、
あまり積極的には使用されていません。

その代わり、
DPP-4阻害剤と同じインクレチン関連の薬剤であり、
より効果の強いGLP-1アナログという注射薬が、
メトホルミンの効果不充分例に検討されています。

今回の研究では、
ヨーロッパにおいて、
充分量のメトホルミンを使用しても
(平均2年以上1日平均2000mgが使用されています)、
HbA1cが6.5~9.0%の状態の、
肥満を伴う2型糖尿病の患者さん、
1000人余を2つの群に分け、
一方はグリメピリド(商品名アマリールなど)という、
SU剤というタイプの薬を使用し、
もう一方はエキセナチド(商品名バイエッタ)という、
GLP-1アナログというタイプの注射薬を使用して、
その後の血糖コントロールや副作用の有無を、
2~3年という比較的長期間観察しています。

血糖値に合わせて投薬量は調整されるのですが、
平均でグリメピリドは2mgが使用され、
エキセナチドは17.35μgが使用されています。
実際にはグリメピリドは1mgから開始して、
効果不充分であれば6mgまでの範囲で増量され、
エキセナチドは1日10μgで開始され、
不充分であれば20μgに増量されます。

以上の使用量は、
基本的に日本と同一のものです。

その結果はどのようなものだったのでしょうか?

こちらをご覧下さい。
ピクトーザとアマリールのHbA1cへの効果の図.jpg
血糖コントロールの指標である、
HbA1cの数値を、
時間経過と共にプロットしています。
青がエキセナチドで、
赤がグリメピリドです。

これは予めターゲットのコントロールを決めておいて、
それに達しない事例は除外してゆく方法を取っているので、
全ての事例がプロットされているのではありませんが、
いずれの薬剤の上乗せでも、
最初の3ヶ月くらいは比較的著明な血糖の低下が見られますが、
その後半年くらいすると、
むしろ上昇に転じています。

血糖の低下作用はエキセナチドの方がより強いのですが、
それでも矢張り同様の傾向は示しています。

つまり、
通常は二次無効、
すなわち使用しているうちに効果が減弱する現象は、
GlP-1アナログやDPP-4阻害剤ではないと、
考えられがちですが、
実際にはそうではないことが分かります。

そして、
低血糖の副作用はグリメピリドがより多く、
体重もグリメピリドは増加し、
エキセナチドは減少しています。

ただ、エキセナチドは吐き気などの消化器症状が強く、
減量は中止の事例も多い、
という傾向は認められます。

従って、
少なくとも肥満を伴う糖尿病で、
メトホルミンを2000mg程度使用しても、
コントロールが充分でない場合の上乗せには、
安全性においても、
その血糖低下作用においても、
グリメピリドよりエキセナチドの方が、
優れている、
という結果でした。

ただし、
エキセナチドは高価な薬剤で、
しかも毎日2回の注射が必要となります。
更には長期の使用では、
SU剤と同様に効果の減弱も認められます。

日本人においては、
肥満ではない糖尿病の患者さんが、
欧米より多く、
インスリンの分泌不全が、
より原因に占める比率が高いので、
この結果がそのまま活用出来る、
という訳ではありませんが、
興味深く参考になる点は多く、
こうした結果も踏まえつつ、
日々の診療において、
より精度の高い、
血糖コントロールを心掛けたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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