肩への筋肉注射とそのリスクについて [仕事のこと]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日は肩への筋肉注射とそのリスクについての話です。
サーバリックスは、
ヒトパピローマウイルスの予防ワクチンで、
正確な表現とは言えませんが、
子宮頸癌予防ワクチンとして接種がされています。
このワクチンは、
アジュバントと呼ばれる免疫増強剤を含み、
そのため筋肉注射に使用が限定されています。
添付文書上はしかも、
肩の三角筋という筋肉にのみ、
その接種が許されています。
つまり、肩以外の部位には、
打ってはいけないことになっています。
製薬会社は医療機関向けに、
接種の方法についてのDVDを配布し、
その内容はサイトでも見ることが出来ます。
その中身をちょっとご覧頂きます。
これが接種直前の画像です。
左手で肩の筋肉をつまみ上げ、
狙いを定めています。
意外と接種部位が上方であることが、
お分かり頂けるかと思います。
では次を。
これが接種後の状態です。
針が根元まで深く入れられ、
しかも圧迫するように力が加えられていることが分かります。
添付文書によれば、
接種部位は肩峰より指の横幅3本分下の位置で、
そこに皮膚に垂直に針を刺すこと、
と書かれています。
その指示は確かに守られています。
ただ、この画像を見ると、
どんな人でも針を根元まで刺さなければいけないように、
あまり知識がないと考えてしまいます。
しかし、痩せた方では、
三角筋が非常に薄い場合があります。
もし、そうした人で同じように針を深く刺せば、
どういうことになるでしょうか?
次をご覧下さい。
これは肩の関節の穿刺法を示したものです。
肩峰の少し下から、
やや上向きに針を刺して進めると、
その先は筋肉を貫いて、
肩峰下滑液包と呼ばれるスペースに入ります。
所謂50肩で痛む部分です。
つまり、筋肉の薄い肩で、
それを考慮に入れずに上の指示通りの手技を行なうと、
針先が関節に接して、
関節炎を起こす危険があります。
肩峰下滑液包炎です。
先日実際にそうした関節炎を起こされた方から、
本ブログにコメントを頂きました。
筋肉注射のこうしたトラブルは、
決してあってはならないことです。
では、どうすれば防げるでしょうか?
三角筋の厚い方なら問題はありません。
しかし、薄い方の場合には、
添付文章は無視して臀部に打つのは1つの方法です。
もう1つは接種部位は守りつつ、
針を浅めに入れることです。
こうすると、液の一部は皮下に洩れる可能性が生じます。
ただ、それで打った場所の腫れや痛みが、
やや強くなることは有り得ますが、
その効果には原理的には大きな差はない筈です。
従って、現状は診療所ではそうした方針で、
改めて指示を徹底しているところです。
今後アジュバントを含む筋注型のワクチンが、
ワクチン全体の主流になることが予想されます。
それは理屈に適った方法ではあるのですが、
その一方で体格が華奢な日本人では、
欧米ではあまり考慮されないような合併症が、
起こり得る可能性があるということを、
心に刻んで日々の診療にあたりたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日は肩への筋肉注射とそのリスクについての話です。
サーバリックスは、
ヒトパピローマウイルスの予防ワクチンで、
正確な表現とは言えませんが、
子宮頸癌予防ワクチンとして接種がされています。
このワクチンは、
アジュバントと呼ばれる免疫増強剤を含み、
そのため筋肉注射に使用が限定されています。
添付文書上はしかも、
肩の三角筋という筋肉にのみ、
その接種が許されています。
つまり、肩以外の部位には、
打ってはいけないことになっています。
製薬会社は医療機関向けに、
接種の方法についてのDVDを配布し、
その内容はサイトでも見ることが出来ます。
その中身をちょっとご覧頂きます。
これが接種直前の画像です。
左手で肩の筋肉をつまみ上げ、
狙いを定めています。
意外と接種部位が上方であることが、
お分かり頂けるかと思います。
では次を。
これが接種後の状態です。
針が根元まで深く入れられ、
しかも圧迫するように力が加えられていることが分かります。
添付文書によれば、
接種部位は肩峰より指の横幅3本分下の位置で、
そこに皮膚に垂直に針を刺すこと、
と書かれています。
その指示は確かに守られています。
ただ、この画像を見ると、
どんな人でも針を根元まで刺さなければいけないように、
あまり知識がないと考えてしまいます。
しかし、痩せた方では、
三角筋が非常に薄い場合があります。
もし、そうした人で同じように針を深く刺せば、
どういうことになるでしょうか?
次をご覧下さい。
これは肩の関節の穿刺法を示したものです。
肩峰の少し下から、
やや上向きに針を刺して進めると、
その先は筋肉を貫いて、
肩峰下滑液包と呼ばれるスペースに入ります。
所謂50肩で痛む部分です。
つまり、筋肉の薄い肩で、
それを考慮に入れずに上の指示通りの手技を行なうと、
針先が関節に接して、
関節炎を起こす危険があります。
肩峰下滑液包炎です。
先日実際にそうした関節炎を起こされた方から、
本ブログにコメントを頂きました。
筋肉注射のこうしたトラブルは、
決してあってはならないことです。
では、どうすれば防げるでしょうか?
三角筋の厚い方なら問題はありません。
しかし、薄い方の場合には、
添付文章は無視して臀部に打つのは1つの方法です。
もう1つは接種部位は守りつつ、
針を浅めに入れることです。
こうすると、液の一部は皮下に洩れる可能性が生じます。
ただ、それで打った場所の腫れや痛みが、
やや強くなることは有り得ますが、
その効果には原理的には大きな差はない筈です。
従って、現状は診療所ではそうした方針で、
改めて指示を徹底しているところです。
今後アジュバントを含む筋注型のワクチンが、
ワクチン全体の主流になることが予想されます。
それは理屈に適った方法ではあるのですが、
その一方で体格が華奢な日本人では、
欧米ではあまり考慮されないような合併症が、
起こり得る可能性があるということを、
心に刻んで日々の診療にあたりたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2010-12-13 08:20
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コメント(14)
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=☆1000記事 突破おめでとうございます!☆=
これからも記事を 楽しみにしております!^^
by ゆうのすけ (2010-12-13 20:46)
ゆうのすけさんへ
ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-12-14 08:26)
石原先生。
先日サーバリックスで関節炎(肩峰下滑液包炎)になったことを書き込みした者です。
友人からこちらのブログに載っていると連絡があり、今ブログを拝見し、びっくりしております。
写真や図を用いて丁寧にそしてとても分かりやすい解説ですから、私自身の肩に起きた症例を、再検証していただけているような感じがしております。
石原先生のブログがサーバリックスを接種している多くの医療関係の方々に見ていただけたら・・・と 心から願っています。
来年一月から中学女児と高校一年生に対して公費助成でワクチン接種が始まる自治体が多いと聞いています。
中学生は、成人女性に比べますと更に華奢ですから、メーカーには安全性の確保が容易な接種部位の変更も急いで検討してほしいと思います。
このサーバリックスにはASO4という従来よりも強力で持続的な効果のあるアジュバントが含まれています。正常な筋肉内接種時でも、3日間くらいは筋肉痛のような強めの痛みが続きました。
滑液包に入った時は、眠れない痛みで・・・
接種後27日のレントゲンで、上腕骨に『骨委縮』が起きていました。
その頃、骨を釘で刺すような強い痛みが続いて・・・
骨委縮まで?と相当にショックを受けました。
毛細血管のない肩峰下滑液包内では炎症も長期間続いてしまい想像以上の影響が周辺部位に出てしまいました・・・
アジュバントが関節炎を誘導する物質であることを是非とも知った上で、筋肉内接種を慎重に進めていただきたいと願っています。
私は現在も毎日、痛み止めの点滴とリハビリが続いています(>_<)
公立病院からの謝罪はまだありません・・・・涙涙
by yako (2010-12-14 20:10)
追記
私の場合、穿刺の場所が、もう少し高い位置でした。
激痛と腕が上がらなくなり整形外科を受診した際は、肩峰より、指の横幅一本から一本半くらいの位置にまだ注射痕が残っていました。
MRIもすぐに撮り滑液包内と周辺に強い炎症が起きていたのです。
サーバリックスによる有害事象ということで、メーカーからの調査も先月行われました。
アジュバント関節炎?・・・実験用ラットの症例しかないようで・・・涙
いつ治るのか?不安です・・・
by yako (2010-12-15 09:18)
yako さんへ
お話をお伺いして、
改めて穿刺部位の高さが非常に重要であることを、
再認識しました。
早く症状の改善されることをお祈りします。
一点だけ…
「アジュバント関節炎」というのは、
関節リウマチの実験系の話で、
ワクチンに使用されるアジュバントとは、
関連性は薄いと思います。
昨年輸入インフルエンザワクチンの時に、
結構詳細な安全性のレポートが出ているので、
関節への危険性等について、
記載がなかったかどうか、
確認してみます。
by fujiki (2010-12-16 08:32)
石原先生、メッセージありがとうございました。
私は現在、大学病院にも通院中で、調べていただきましたが人間のアジュバントによる関節炎の症例は見当たらないとのことでした。
ワクチン用とラット実験用と、成分はそれぞれ違うとは思いますが、
アジュバントの性質=長く留まり炎症を強くするという性質におきましては同じではないかと思います。健康だった私の肩が実際に、こうなってしまいましたから・・・
大学病院は、サーバリックスに含まれているアジュバントが滑液包内に入った事が、今回の関節炎の原因だろうと・・・・
だから、接種部位がとても重要なワクチンと警鐘を鳴らさなければ・・・
接種した病院からは正しい手技だったとして一切謝罪はありません。
このままでは弁護士まで依頼しないといけない現実です。
・・・子宮頸がんの予防接種を受けただけなのに・・・とても理不尽な出来事に巻き込まれてしまいました。
師走に入り、年越しも目前ですが・・・落ち込んでは居られませんので
前向きに、そして自分の将来の為に、リハビリを頑張り、元の肩に戻るように努力したいと考えております。
石原先生の今回の記述は、大変に有り難く・・・心から感謝申し上げます。二度と私と同じような症例が起きないことを強く願っております。
by yako (2010-12-17 00:36)
初めまして先日ニュースにてサーバリックスの副作用について酷い痙攣で歩行困難の女の子がいると…私は7年に前に上皮内癌0期で手術をしました。型は16型でした。再発もないため予防のため一昨年サーバリックスのワクチン摂取をしました。3回摂取し3回とも特に問題はありませんでしたが最近になり肩がすごく痛くて物を持ったり腕を後ろに持っていったりとにかく寝ていても左肩は痛く、治らない状態が続いています…サーバリックス摂取後1〜2年後に副作用ってあるんですか?あまりサーバリックスについて副作用等の情報がないため困っていました。ご回答宜しくお願いします。
by 清水 (2013-06-17 04:17)
清水さんへ
断定的には言えませんが、
一昨年の注射の影響が、
今になって出る可能性は、
あまりないように思います。
肩の痛みは別個の原因による可能性が、
高いように思います。
by fujiki (2013-06-17 06:15)
去年の11月頃に事故に遭い、今もまだ右肩の腫れがあり、肩があがらなくなり、肩関節周囲炎と言われました(五十肩)
まだ18歳なのにまさか、この診断が下されるとはショックでした。
事故はひき逃げです。トラックが信号無視で入ってきて私の肩にトラックのミラーが少し当たっただけなのにここまで腫れるとは思いもしませんでした。
今は、服を着るのも脱ぐのも大変で手の痺れ足の痺れも出てきてます(右だけです)歩くのには支障はありませんが。
4月から社会人なので少々厄介な感じです。
肩は背中のほうに手を回そうとすると激痛で、夜とか寝返りが打てず、痛くて寝れない事も多少あります。
肩をあげようとすると突っ張る感じです。
調べてみたときに、もしかしてこれかなと(腱板損傷)
今も整形外科に通っているのですが、無理をしたら腱切れるかもと言われ、腱が切れても痛みは無いと知り、びっくりしました。
後、肩が異常に腫れており、触っても感覚が無い所も多数です。
こんな文章で分からないと思いますがすいません、長文で。
by 少女 (2014-03-21 23:19)
打たれた後 ひどく腫れて寝込みました
あともしこりになって 目立ちます(T_T)
浅く打ったからではと言う先生もいらっしゃるのですが
深いと関節に入るし 安全な打ち方ができないワクチンなんて
困ります
by よしる (2014-12-17 19:19)
三角筋 筋肉注射 痛み と検索して先生の記事にヒットし読ませて頂きました。40代女性です。約1カ月前にインフルエンザの予防接種を、近医で左肩へ筋肉注射(あなた赤く腫れる?
と聞かれ、そうなら皮下注射での赤みや腫れを避ける為、肩の深めの所に、と言ってそうしてくれました。去年も同様に肩でしたが去年は全く問題なしでした)で接種されました。刺入時痛みで思わず「痛っ」と言い、先生はゴメンと言いながら注射しました。
その日の帰宅後から、包丁で硬いものを切る時や服の着替え浴槽の掃除で、左肩を動かすと嫌な痛みが出現しました。それは、針を刺した皮膚表面の痛みではなく、肩の中の方からで、今までにない嫌な感じでした。それまで全く何ともなかったのに、実際注射後から痛みが出て、良い先生であり、もちろん悪気もないでしょうが、針が深く入り過ぎていたのかなと。副反応とかではなく、手技的なものとしか思えず。
1週間もすれば治るかな、と思っていたのに治らず、もうすぐ1カ月経ちますが治らず。
仕事上繋がりがあり、いつもお世話になっているお医者様なので、より言いにくく、
しかも昨日職場の人が風邪で受診したついでに私の話を出した所、
痺れがないなら神経まではいってないだろうし、お風呂入るとかして温めて、マッサージして様子見てって言ってたとの事で。
でも、いくら痺れがなくても大丈夫なわけではなく、動かすと痛い、普通に動かせないこの状態が、温罨法やマッサージで治る気がしないのです。でもこのままではつらいですし、どうしたらいいのか?
サーバリックスでなくとも、注射液がインフルエンザワクチンであっても、三角筋への筋肉注射で深過ぎる事によって肩峰下滑液包炎を起こす恐れはあると、理解してよろしいでしょうか?
MRIのある整形外科で事情を話して検査してもらえばいいのか、1カ月程経っていてもMRI画像で病変がわかるのでしょうか?
医者に注射とは関係無いとか年齢的に四十肩だろうとか言われたら納得できないですし、
どうしたら1番良いのかわからなくなって悩んでます。良いアドバイスをお願い致します。
by Sizuka (2016-01-05 23:21)
Sizukaさんへ
かかりつけの先生であれば、
矢張り接種されたクリニックをまずは受診して、
ご相談をされるのが良いと思います。
実際に診察を受けるということが大事です。
接種後1ヶ月経っても、奥の痛みが引かないのは、
長すぎるように思います。
専門は整形外科ということになりますから、
かかりつけの先生から紹介状をもらって、
整形外科を受診されるのが、
ベターなように思います。
もしそれでご納得のいかない結果でしたら、
直接整形外科を受診されても良いと思います。
by fujiki (2016-01-06 06:28)
早速返答下さり、本当にありがとうございましたm(._.)m
治らないままではやはりつらいので、まずは勇気を出して、接種してもらった医院受診してみますね。
by Sizuka (2016-01-07 00:39)
今日ワクチンを打ったのですが、位置が上記の写真だと丁度医師の左手中指の爪付近の場所でした。
これだと、腕神経叢の一番集まる所で、最も危険な場所ではないですか?
オンラインで見た所、丁度神経ブロックする位置だと思うのですが、、、?
2つ別のワクチンを打ち、両方こんなおかしな場所でした。
また、注射筒に薬液の半量ぐらいの余分な空気が入ったまま打っていました。
これは、神経損傷とより多くの痛みを与えるようわざと行ったのでしょうね?
老人の藪医者でした。
by マレ (2018-03-24 00:08)