インフルエンザワクチン接種後死亡事例と有害事象の話

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

インフルエンザワクチンの接種が、
今年の10月から開始され、
診療所でも接種を行なっています。

今年のワクチンは、
皆さんもご存知のように、
昨年の新型インフルエンザと言われたタイプのワクチンと、
従来の季節性インフルエンザの2種の抗原とを、
ミックスしたタイプの3価のワクチンです。

従って、今年度に関しては、
昨年の新型インフルエンザワクチンと、
行政の扱いは同一のものになります。

「新型インフルエンザワクチン接種実施要領」の中に、
「予防接種後副反応報告基準」
というものがあります。

昨日お話したように、
ワクチンによる有害な作用を検討するためには、
まず因果関係を問わない有害事象を収集し、
そこから慎重な検討により、
因果関係の有無を検証する必要があります。

それではどのような有害事象が、
報告の対象になっているのでしょうか？

まず、死亡事例と臨床症状の重篤なもの、
後遺症を残す可能性のあるものが、
報告の対象とされています。
つまり、軽症の事例は基本的には報告の対象にはならないのです。
（登録医療機関での調査のようなものは、軽症例も報告されます）

また、その症状はアナフィラキシーやけいれんなど、
15種類が提示され、その項目以外の有害事象については、
報告者が「因果関係あり」と判断したものに限って、
報告されることになっています。

つまり、これは有害事象の全てを報告する、
というスタイルのものではなく、
あくまである程度の因果関係が推定出来るもののみを、
報告の対象にしている、ということが分かります。

11月16日の時点で、
インフルエンザワクチン接種後の死亡事例が、
3例報告されています。
専門家のコメントも既に添えられています。

昨年の新型インフルエンザワクチンの接種後死亡事例は、
133例でしたから、
それから比較すると今年のワクチンが死亡事例が少ない、
と思われた方が多いかと思います。

ただ、報告の文面をよく読むと、
11月16日の時点で死亡事例は9名と書かれています。
そのうち主治医が「ワクチンと関連あり」と記載したものが、
3例でその3例のみが今年は公表されているのです。

ちなみに昨年のケースでも、
実際に主治医が「ワクチンと関連あり」としたケースは、
今年の報告と同じ3例です。
それ以外の130例は「因果関係不明」の事例だった訳です。

つまり、今年度から行政は公表の方針を変えたのです。

もし昨年度も今年度と同様の方針であったとすれば、
3例の死亡事例しか詳細は公表されなかったことになり、
昨年のような問題にはならなかった筈です。

要するに、去年の騒ぎに懲りて、
「密かに」公表の基準を変更したものと、
僕には思えます。

それは勿論「ワクチンは安全だ」という神話を守るためです。

報道用の資料には以下の記載があります。

副反応報告は、接種との因果関係にかかわらず、予防接種後に死亡した場合に報告を求めているため、基礎疾患による死亡も含めて報告されることがある。今後、専門家による因果関係評価を行ない、結果を踏まえて必要な情報提供を行なっていきたい。

これを読むと、
如何にも全ての死亡事例が、
報告されているようですが、
実際には「特定の症状を呈したものと、因果関係の推測出来るものだけを報告しろ」
というのが実際のところです。

今年の死亡事例3例は、
かなりインパクトの強いものです。

まず1例目は80代の女性で、
接種後1時間半で、
明らかなアナフィラキシーショックを起こし、
死亡されています。
2例目は80代の男性で、
ワクチン接種直後より高熱を呈し、
多臓器不全を来たして死亡されています。
3例目は10歳未満の男児で、
接種翌日に心肺停止状態で発見されています。

特に1例目の事例は、
明確にアナフィラキシーを来たした現場が確認されていて、
おそらくは専門家の検討でも、
因果関係なし、とはさすがにされないと思います。
2例目と3例目はおそらく専門家の会議では、
「因果関係は明確ではない」くらいの判定だと思われ、
2例目は確かに微妙ですが、
昨年の経過から見て、
3例目は昨年の多くの死亡事例と、
同様の経過が考えられます。

実際にワクチン接種に携わる立場からすると、
1例たりとも経験したくはない事例であり、
接種をされる方にとっても同じだと思います。

より安全性の高いワクチンを目指して、
臭い物に蓋の対応ではなく、
もっと誠実かつ真剣な取り組みを、
行政と専門家には期待したいと思います。

皆さんはどうお考えになりますか？

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。