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ピロリ菌の感染経路について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日はいつもより早く、
7時くらいに診療所に着いたら、
すぐに携帯で老人ホームに呼ばれて、
行ってまた帰って来たところです。

それでは今日の話題です。

今日はピロリ菌はどのようにして人間に感染するのか、
という話です。

まず、よく引用されている1992年の日本人の論文では、
ピロリ菌に感染したことを示す、
血液の抗体価の陽性率は、
9歳以下では5%程度で、
10代では2割弱、20代では25%程度であった、
と報告されています。
これが40歳代からは急激に陽性率が上昇し、
70%以上に達します。
(年齢は1992年時点のものであることにご注意下さい)
また、別の文献では、
3歳から17歳までの小児の尿の抗体測定において、
どの年齢でも5%前後の陽性率を示し、
その数値は年齢と共に、
やや上昇する傾向を示した、
とされています。

こうしたデータから分かることは、
ピロリ菌の感染は、
概ね3歳より以前の時期に生じている可能性が高い、
ということです。

大人でピロリ菌の感染が起こるのか、
という点については、
あまり根拠に基くと思われる記載に当たりませんでした。

ある医師の書いたものに、
大人でのピロリ菌感染は殆ど一過性で、
持続感染には至らない、という記述がありましたが、
何処まで根拠のあるものであるのかは、
判断が出来ませんでした。

アジアにおいて、井戸水からの感染が確認されていることは事実です。
河川の水にもピロリ菌が含まれている場合があり、
感染した人間の糞便や唾液にも、
ピロリ菌が確認されています。

こうしたことから、
どうも経口感染であることはまず間違いがなく、
それも腸管免疫が未熟な、
乳幼児期に感染することが多い、
ということもほぼ間違いがなさそうです。
大人になってからの感染も、
皆無とは言い切れませんが、
非常に稀なことは事実のようです。

夫婦で感染することも、
通常は極めて稀と考えて良さそうです。

では乳幼児期にどのような機会で感染するのかと考えると、
両親と一緒に食事をする時に、
お子さんの口に侵入したり、
また保育園で感染する事例も、
多いのではないかと考えられます。

B型肝炎ウイルスも、
最近父子感染と言って、
唾液からの家族内感染のリスクが指摘されています。
この場合も、家族で一緒に食事を摂ることと、
保育園などでの集団生活が、
高リスクと考えられ、
ピロリ菌も同様と思われます。

それでは今日のまとめです。

ピロリ菌は多くは乳幼児期に、
ご家族か周辺の同年代のお子さんから、
感染するケースが、
現在の日本では最も多いと考えられます。
そのリスクをご心配される方は、
ご家族の感染の有無を、
一度チェックしておくことは、
今後の参考になると思います。
お子さんにうつさないために除菌をするかどうか、
という点については、
現時点で明確な指針はなく、
ケースバイケースで考えるべきではないか、
と僕は思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 3

yuuri37

まあ、お疲れ様です。先生も呼び出されるんですね(笑)仲間を感じてちょっと嬉しい・・・あっすみません。
いつ何時、どこにいても呼び出される。トイレに入ってるときに鳴って、むかついて、便器にピッチを落としてやろうかと思ったことがありました。
by yuuri37 (2010-06-09 00:28) 

fujiki

yuuri37 さんへ
コメントありがとうございます。

診療所の医者も24時間体制で働け、
というのがお上の方針なので、
無理無理それに近いことをしていますが、
限界を感じる気分もあります。
yuuriさんの方がずっと大変だし、
呼び出しの拘束感は強いと思いますが、
それほど頻繁ではなくても、
呼ばれる瞬間はやっぱり嫌ですね。
by fujiki (2010-06-09 08:37) 

midori

こんにちは。腕のお加減いかがですか。

昨年殺した私のピロリは、
てっきり実家の井戸水から感染したものだと確信していましたが、
先日家族に話したところ、私一人が感染者で驚きました。

じゃあ幼稚園で伝染ったのかしら。
子ども同士というのは、どんなルートなのでしょうか?
(私は昔から子どもが嫌いだったのであまり遊びませんでした)
by midori (2012-08-20 15:59) 

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