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ピロリ菌関連疾患のまとめ [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
何事もなければ少し早く家に戻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はピロリ菌に関連する病気についてのまとめです。

胃癌の多くが、
慢性萎縮性胃炎とかかわりがあり、
粘膜の萎縮がピロリ菌の持続感染とかかわりの深いことは、
ほぼ確立した事実です。
ただ、これはあくまで分化型腺癌という、
比較的悪性度の低い胃癌に限っての話です。
たとえば、スキルスと呼ばれる悪性度の高い胃癌は、
ピロリ菌感染と、
必ずしもはっきりとした関係はありません。
その点には注意が必要ですが、
分化型胃癌の予防のためには、
なるべく萎縮が進む前に、
ピロリ菌の除菌をすることが、
有用性が高いということは、
事実と考えて良いと思います。

十二指腸潰瘍については、
95~100%がピロリ菌陽性であり、
除菌治療により再発が、
完全に近く抑えられることが分かっています。
それまで十二指腸潰瘍はストレスなどが原因とされ、
一旦治っても高率に再発しました。
しかし、ピロリ菌が原因と分かり、
除菌治療が行なわれるようになってから、
その経過は劇的に改善したのです。

胃潰瘍に関しては、
十二指腸潰瘍ほどの深いかかわりはありませんが、
矢張り胃潰瘍のリスクを高めることは間違いがなく、
これも除菌が最初に行なうべき治療であることは、
間違いがありません。

先日お話した胃MALTリンパ腫は、
特殊なリンパ球の腫瘍ですが、
ピロリ菌の除菌により、
改善の見られるケースがあることは事実で、
他の治療に比較して身体の負担が少ないことより、
まず試みる価値のある方法とされています。
これは今年から保険適応になる予定です。

これも今年から保険適応になる、
特発性血小板減少性紫斑病は、
自己免疫疾患で血小板の減る病気ですが、
何故か日本とイタリアでピロリ菌の除菌が有効との報告があり、
除菌治療が試みられています。
おそらく全てのこの病気の原因ではないのでしょうが、
その一部にはかかわりのあることは事実だと思います。

次に小児の鉄欠乏性貧血で、
ピロリ菌がかかわっているケースが、
結構多いということが報告されています。
これはピロリ菌が鉄の取り込みを行なっているため、
と考えられていて、
原因のはっきりしない鉄欠乏性貧血で、
ピロリ菌が陽性であれば、
除菌治療を考慮する必要があります。

まだあります。

原因がはっきりしない蕁麻疹が、
なかなか治らないことがあります。
こうした慢性蕁麻疹に対して、
ピロリ菌の除菌が効果を挙げた、
という報告がこれも複数存在します。
ピロリ菌による慢性の炎症が、
サイトカインを上昇させ、
それが蕁麻疹に結び付いているのでは、
という推測も語られています。

それ以外にも、
以前記事にしたような特殊なタイプの糖尿病や、
慢性関節リウマチ、片頭痛、
動脈硬化もピロリ菌に関連するのでは、
という報告も散見されます。

ピロリ菌が胃の中で持続的に感染するということは、
胃の中の現象であるだけではなく、
炎症が体内で持続するために、
身体の免疫系にも影響を与え、
そのことが他の全身的病気の誘因となっている、
ということが考えられるのです。

ただ、除菌治療というのは、
数種類の抗生物質を飲む、という行為ですから、
ピロリ菌以外の感染症にも当然効果があります。
従って、除菌である病気が良くなった、
という現象を見る時、
それがピロリ菌の除菌自体によるものなのか、
それとも他の病原体による感染が除去されたためのものなのか、
その判断は難しい、
ということも念頭に置く必要があると思います。

ピロリ菌と生体との関係が、
もう少しクリアに整理されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 3

akanenosora

大変興味深く読ませて戴きました。
私は3回の検査をしましたがこの高齢で意外にも
ピロリ菌の反応はなく抗体もないという結果を得ました。
もしかして、ピロリ菌が住めないほどの状態になって自然消滅
したのではと思ったりもしますが抗体もないと出ました
そのような症例もありなのでしょうか?

by akanenosora (2010-06-09 10:24) 

もも

こんにちは。

私は若い時から十二指腸潰瘍で悩んでました。
先生のおっしゃるとおりピロリ菌が原因かもしれません。
ところが、あるキッカケで姫マツタケの粉末を入手しまして、
それを2週間ほど飲用しましたら、なんと今までの悩み、不快、苦しさ、
が嘘のように消失しました。(潰瘍治療の目的で入手したのではありま
せん。うれしい誤算でした。)
それからというもの、何を食べてもOKですし、発作の痛みも再発してません。 ちなみに手指の関節リウマチも治っちゃいました。

今までサプリメントの類はあまり関心がなく、薬の方に信頼を寄せていま
したが、2年前のこの事例によって考え方が変わりました。

こういう事例もあるってことで、お伝えしました。




by もも (2010-06-09 16:11) 

fujiki

akanenosora さんへ
コメントありがとうございます。

ご年齢と共に、陽性率は高いものになっていますが、
100%ではありませんから、
感染されていなくても、
おかしなことではないと思います。
by fujiki (2010-06-10 06:25) 

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