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ナタリー・デセイの「カルミナ・ブラーナ」 [コロラトゥーラ]


Carl Orff: Carmina Burana

Carl Orff: Carmina Burana

  • アーティスト: Thomas Hampson,Carl Orff,Michel Plasson,Orchestre National du Capitole de Toulouse,Natalie Dessay,Malcolm Stewart
  • 出版社/メーカー: EMI Classics
  • 発売日: 2001/06/07
  • メディア: CD


こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は診療所は休みで、
午後はちょっと出掛ける予定です。

上のリンクはナタリー・デセイがソプラノのパートを歌った、
オルフの「カルミナ・ブラーナ」のCDです。

オルフの「カルミナ・ブラーナ」は、
19世紀に修道院で発見された中世の世俗的詩歌集に、
20世紀になってから、
強烈なリズムに彩られた旋律を乗せたもので、
1937年に作曲されました。

カール・オルフは20世紀ドイツを代表する、
作曲家の1人です。

全体は25曲に分かれ、1曲は数分で、
全体での演奏時間は1時間弱です。

クラシック音楽という区分が適切かどうかは分かりませんが、
クラシックの演奏家以外には演奏出来ないことは事実で、
その点からクラシックに区分すれば、
そのジャンルの中では、
非常に聴き易い作品であることは確かです。

オープニングの「おお、運の女神よ」
の強烈なリズムと旋律が、
非常に印象的なため、
映像や演劇の舞台などでの、
効果音としてよく使われます。

僕も最初にこの曲を耳にしたのは、
演劇の舞台の音効としてでした。

この曲は大編成のオーケストラに加えて、
混声の大合唱に児童合唱、
更にソプラノとテノール(もしくはカウンターテナー)、
バリトンの3人のソリストが加わります。

これだけで相当のスケールですが、
オルフの指示によれば、
更に曲のイメージを具現するような、
舞台俳優やダンサーが、
これに加わります。

つまり、これは「セミオペラ」のような形式として、
発想された作品なのです。

実際にバレーとシンクロさせたような上演も、
行なわれていますが、
僕の印象としては、
却ってダンスが音楽の邪魔をするので、
現在の上演形態としては、
音楽のみで演劇やダンスの要素は排した方が、
よりこの作品の世界に浸れる、
という気がします。

この作品には1人のソプラノのソリストが登場します。

前半には彼女の出番は全くなく、
後半も数分の歌唱があるだけですが、
それでいて、成功すれば最も鮮烈な印象を残し、
音楽という太古から、
人間と切っても切れない関係にある藝術様式において、
類稀で絶対的な瞬間を具現します。

まず21曲でとろけるような持続の長い、
この作品随一のメロディを奏でると、
23曲は不意に全ての音が止み、
舞台上には彼女1人が立っているようです。
そして、短いコロラトゥーラの超高音のパッセージが、
巨大な空間に放たれると、
それが人間の出せる限界まで上り詰めた所で、
天空に消え、一瞬の静寂が大空間を支配します。

そして、神の代理人のような指揮者のタクトが振られると、
24曲の大合唱がオーケストラの地響きのような演奏と共に、
今度は音の圧力で大空間を満たし、
それが途切れずにオープニングのリフレインに続いて、
全編の幕が下ります。

ナタリー・デセイは何度かこのパートを歌っていて、
録音されたCDが上のリンクです。

コロラトゥーラの天才でなければ、
この曲のソプラノは勤まりませんし、
逆に凡百のソプラノが歌えば、
この曲の真価は損なわれます。

この曲はただ、CD向きではないんですね。

異常にダイナミックレンジが大きいので、
生で聴かないとその凄味は伝わりません。

CDでは23曲も彼女はサラッと歌っていて、
それはそれで録音としては悪くないのですが、
実際の上演ではこれではいけませんし、
彼女もライブでは、
場内を圧する歌唱を聴かせてくれたと思います。

僕はまだ生でこの曲を聴いたことは2回しかありませんが、
いずれもソプラノの歌唱は満足のいくものではありませんでした。

いつかは超絶技巧の圧倒的な歌唱で、
23曲が歌われ、
その後の身の毛のよだつような静寂が、
巨大なホールを支配する瞬間に、
立ち会いたいな、と思いますが、
それは夢に終わるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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コメント 2

Daddy恭男

オルフのカルミナ・ブラーナはソリスト泣かせで、指揮者やオーケストラ&合唱と合わせたり練習している間に調子を崩すことが多いそうです。
by Daddy恭男 (2010-04-19 22:35) 

fujiki

Daddy恭男さんへ
コメントありがとうございます。

多分生理的にきつい部分があるのでしょうね。
でも、無理のある歌の方が、
聴く側からするとスリリングで、
心に響くような気もします。
by fujiki (2010-04-20 08:19) 

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