LDL コレステロールの測定はデタラメなのか？

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

診療所は今日から通常の診療に戻ります。
朝から検診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

医療系のサイトで、
最近こんなニュースがありました。

【LDL-C 直接測定に黄信号ー日米共同の評価で精度の問題が明らかに】2007年の動脈硬化性疾患予防ガイドラインの改定以降、普及に拍車がかかったLDL-C の直接測定。しかし、脂質異常症の患者では精度に問題のあることが明らかになり、その対応が急がれている。

一般に悪玉コレステロールと言われている、
LDL-コレステロール（LDL-C ）は、
現在非常に一般的な血液検査です。

皆さんも健診などで、
一度は測られたことがあると思います。
2年前から始まった、所謂「メタボ健診」でも、
このLDL-コレステロールの測定が、
必ず測るべき項目となっています。

今回のニュースのポイントは、
このLDL-コレステロールの測定が、
実は精度の低い検査で、
アメリカの国立衛生研究所では、
推奨は出来ないと、
その測定自体が否定されてしまった、
と言うのです。

そんな馬鹿な、と思われた方も多いと思います。

僕も正直そう思いました。

LDL-コレステロールが測定出来るようになるまでは、
総コレステロールというコレステロールの全体と、
中性脂肪、HDL-コレステロールという、
所謂善玉コレステロールとを、
測った数値から、
計算式で悪玉コレステロールの値を、
推測していたのです。

しかし、その数値は中性脂肪が高いと、
不正確になるなど、
あまり信頼は置けないものである、
と僕は考えていました。

ですから、患者さんにも、
そうしたニュアンスのお話をしていました。
「今までは直接悪玉コレステロールを測ることが難しかったので、
全体のコレステロールを測っていたのですが、
その中には善玉のコレステロールも含まれているので、
その数値だけで、良いとか悪いとかと、
言うことは難しかったのです。
今では直接悪玉コレステロールを測れるようになったので、
その数値で治療が必要かどうかが、
すぐに分かるようになったんですよ」
というような具合です。

その時点では、
確かに専門の偉い先生も、
悪玉コレステロールを一番の指標にして、
動脈硬化の予防のための、
治療戦略を建てるのが重要なのだよ、
この底辺の無知な医者諸君、
というようなお話をされていた筈です。

ところが、
今回の報道を見ると、
専門医の先生はこんな発言をされています。
「以前から測定値の精度を問題視する声もあったが、
それが解決しない間に、
直接測定が急速に普及してしまった」
とか、
「総コレステロールは専門家なら当然測るものという認識なのだが、
ガイドラインの記述は一般医に誤解を招く可能性があり、
不備があったかもしれない」
といった具合です。

つまり偉い先生は悪玉コレステロールの測定が、
いい加減なものであり、
むしろ総コレステロールの測定こそ、
重要なものであることを、
先刻ご存知であったのですが、
僕のような一般の「馬鹿な医者」が、
悪玉コレステロールの測定が、
素晴らしいものであるかのように早合点して、
患者さんに誤った説明をしているのが、
一番の問題だというニュアンスなのです。

でも、もし本当に悪玉コレステロールの直接測定が、
世界では何処でも認められていないような、
いい加減なものであるのなら、
どうして2007年の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」では、
そのいい加減な測定が指標とされ、
もっと正確であった筈の、
総コレステロールの測定が、
指標から外されたのでしょうか？
それを決めたのは、
偉い先生が言われるような、
僕のような一般の馬鹿な医者ですか？
そうではないでしょう。
先生もお認めになるような、
専門の医者や研究者だったのではないでしょうか？
その素晴らしい決定に基いて、
メタボ健診の基準検査項目も決められ、
総コレステロールが外されて、
悪玉コレステロールの、
直接測定が加わったという経緯の筈です。
それを決めたのも、
専門の医者や研究者と、
類稀な頭脳をお持ちのお役人の皆様だった筈です。

それは例によって、
偉い先生にも色々な見解があるのでしょうし、
今「正論」を述べているのとは別の偉い先生の手によって、
その基準は決められたのかも知れません。

しかし、良く考えて見て下さい。

悪玉コレステロールの直接測定は、
日本で開発された技術であり、
自動分析器で測定が可能です。
その測定器がどれだけ売れ、
その測定に使う試薬が、
どれだけ売れたのでしょうか？
その多くの部分には、
税金がじゃばじゃば使われ、
実際には「世界で認められていない精度の低い検査」が、
多額の利益を誰かさんにもたらしたのです。

新しい検査に国がお墨付きを与えたのですから、
こうなるのは当然のことです。

千里眼をお持ちの偉い専門の先生方が、
先に示す有難いご発言のように、
本当にそのことを先刻お見通しであったのなら、
何故声を上げて、2008年の時点で、
こうした愚かな決定を、
差し止めにしようとはされなかったのでしょうか？

新型インフルエンザ騒動でも、
お馴染みの構図ですよね。

こうしたことが繰り返される限り、
税金が決して皆さんの健康のために、
使われることなどないのだと、
僕は思います。

それはさておき…

悪玉コレステロールの直接測定とは、
一体どのような方法であり、
何が一番の問題なのでしょうか？

長くなりましたので、
その点は明日ご説明したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

コメント 2

金　我　信　念
　
　今年も拝読させていただきとうございます。
　益々のご健筆を!!
by さすらいの (2010-01-04 10:59) 

さすらいのさんへ
明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。
by fujiki (2010-01-04 21:19)