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カルシウム吸収テストの話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は第3土曜日で、
午後には管理栄養士による栄養指導と、
ダイエット外来のある日です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

昨日に引き続き、
ストロンチウムを利用した、
カルシウム吸収テストの話です。

昨日はカルシウムの吸収を人間で調べるために、
その動態が非常に似通っている、
ストロンチウムを用いる方法がある、
という話をしました。

今日は僕の以前やっていた、
具体的な方法をご説明します。
(現在診療所では実行不可能なので、
その点はご了承下さい)

2.5mmol という量のストロンチウムを測り、
それを精製水200ml で溶かして、
決められた内容の朝食と共に、
朝飲んでもらいます。

僕が使用していた試験食は、
6枚切りの食パンに蜂蜜とバターを塗り、
それに白桃の缶詰を2切れ付けます。
飲み物は100パーセントのオレンジジュースを200ml 。
これは意外に美味しいと結構好評でした。
勿論僕が全部用意しました。

ストロンチウムを飲んでから、
丁度4時間後に採血をして、
その血清の中のストロンチウムを、
原子吸光という方法で、
計測するのです。

ここからは簡単な計算です。
口から入ったストロンチウムは、
小腸から吸収され、血液に入ります。
その人の体重から血液の量を換算し、
そこから何パーセントのストロンチウムが吸収されたのかを、
割り出すのです。

たとえば、その計算の結果が15パーセントだったとしましょう。

そうすると、カルシウムの吸収率は、ほぼ30パーセントです。
これは、海外の放射線カルシウムを使ったデータとの比較から、
計算されるのです。
日本では放射線カルシウムの検査は倫理的に出来ないので、
海外データを利用して問題はないのです。

何故4時間後の数値を用いるのかについては、
次のデータがあります。
こちらをご覧下さい。

これは僕を含めて5人のボランティアに、
ストロンチウム吸収テストを施行し、
1時間ごとに5時間まで採血をして、
血液中のストロンチウムを測ったものです。
ご覧頂くと分かるように、
飲んでから2時間以降はほぼ同じレベルで推移しています。
従って、2時間から5時間の範囲で採血すれば、
同等の結果が得られる訳です。
実際カルシウムも同様のパターンで吸収されることは、
海外のデータから分かっています。

それでは次に健常者120名の計測データをご覧下さい。
勿論全て僕が取ったデータです。

これは年齢とストロンチウムの吸収率との関係を、
全体でプロットしたものです。
年齢と共に、ストロンチウムの吸収は、
低下してゆくことが分かります。
これは、カルシウムでも同様のことが言えるのです。

ここで昨日の疑問に戻りますと、
カルシウムの吸収率は、
ストロンチウムの倍ですから、
大雑把に言って30パーセント程度と言うことが出来ます。
まあ、思ったより少ないのがお分かり頂けるかと思います。
教科書的記載は多分40~50パーセントと思いますが、
実際にはそれよりは少ないのです。

カルシウムの吸収を増すものとして、
一番重要なものは、
皆さんよくご存知のビタミンDです。

カルシウムがビタミンDの働きで吸収されるように、
ストロンチウムもビタミンDの働きで、
同様に吸収がアップします。
僕のデータでは、比較的大量のビタミンDを使用すると、
ほぼ2倍に吸収率がアップします。
ただ、勿論上限はあり、
これが50パーセント程度です。

ビタミンDが増える病気の代表は、
副甲状腺機能亢進症ですが、
この場合、ストロンチウムを用いたカルシウムの吸収率は、
概ね50パーセント前後になっています。

まだ、データは色々あるのですが、
マニアックな話になりますので、
今日はこのくらいにしたいと思います。

原子吸光の機械さえ、
何処かで使わせてもらえれば、
すぐにでも研究を再開したい思いがあるのですが、
そんな場所もなく機会もありません。
このままで終わるのは無念でならないのですが、
それが結局僕という人間なのかも知れません。

今日はカルシウムの吸収についての、
僕の以前のデータをお見せしました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

iyashi

ビタミンDやカルシウム剤しかなかった時代は、骨粗鬆症の進行を抑えることしか出来なかったのが、ビスホスホネート系薬剤が日本でも使われるようになり、骨密度が改善されるようになったように私は感じているのですが、実際の所、最先端の臨床ではどのようになっているのでしょうか?
by iyashi (2009-07-18 12:07) 

fujiki

iyashi さんへ
コメントありがとうございます。
ビスフォスフォネートは顎骨壊死の話があり、
正直僕はあまり好きな薬ではありません。
ただ、世界的にも現時点でスタンダードな治療であることは、
事実のようです。
ビタミンDの使用法などは、
もっと工夫の余地が残されているのでは、
と思いますし、まだこの分野も道半ばなのだと思います。
by fujiki (2009-07-19 06:58) 

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