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何故花粉症は増え続けるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から介護保険の意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

花粉症のシーズンですね。

今年はこの数年の中では、
明らかに症状の出方は早く、
強いという印象です。

先週、あるアレルギーの専門家の先生が、
子供を花粉症にしないための9ヶ条、
というのを発表された、
というニュースがありました。

別に新しい発見という訳ではなく、
ある報道関係者向けの会合で、
先生が講演をされた、
というだけのことのようです。

内容はちょっとびっくりで、
BCGを早めに打つ、
抗生物質は使わない、
託児所(原文の通り)に早く預ける、
犬や猫を飼う、
農家で育てる、
などのアドバイスが並び、
中には「狭い家で子沢山で育てる」など、
不妊治療をされている女性の方の怒りを買いそうなものや、
「顔や手はなるべく洗わない」など、
新型インフルエンザ対策に冷や水を掛けるような意見もあります。

要するに、病原性の微生物には、
なるべく触れさせて、
なるべく病気に掛かり、
それを自然の免疫の働きで治すことで、
アレルギーに悩まされない子供が育つ、
というのです。

面白い意見ですよね。

ただ、「農家で育てる」とか、
「犬や猫を飼う」というのは、
今では人間と同じような治療をし、
ある意味人間以上に抗生物質を使って育っている、
現在の農業やペット事情を、
先生はご存知ないのかな、
という気もします。

この条文の意味合いは、
花粉や埃、動物の毛などのアレルゲンに接触することが、
重要なのではなく、
病原性のある微生物に接触する機会を増やすことこそ、
重要なのだ、ということだからです。

僕はこの先生の書いたものを、
幾つか読んでみたのですが、
先生はこの考えを「衛生仮説」と呼んで、
以前から主張をされています。

そのアウトラインはこうです。

たった60年前には、日本には花粉症の人など、
殆ど存在しなかっただろう。
それが今では、若い世代の8割以上は、
花粉症かその予備軍である。
この異常な現象は、
とても戦後の林業対策で、
山に杉を植え過ぎたからだ、
などという理由では説明出来ない。
ではこの60年でダイナミックに変化したものとは何だろうか。
それは「清潔」である。
「清潔」とは、人間が病原体をその環境から遠ざけたことだ。
それが免疫のシステムに悪影響を与え、
アレルギーの増加の原因になったのではないか、
というのです。

皆さんはこの考えを、どう思われますか?

可能性はありそうですよね。

ただ、問題はそれを実証するデータなり実験結果が、
実際に存在するのかどうかです。

僕の読んだ限りでは、
殆どが疫学データだけなんですね。
要するに都会の人と農家の人を比べたら、
農家の人のアレルギーの比率の方が少なかった、
といったレベルのものです。

こういうデータはね、
推測以上のものではないんです。
研究と呼ぶべきものではなく、
その取っ掛かりと考えるべきものです。
ひょっとしたら、ある種の細菌に接触しないと、
アレルギーが起こり易くなるのではないか、
と考え、そのための研究をする訳です。
でも先生の話から、そのデータらしきものは、
あまり見えては来ません。

講演の内容はエンドトキシンという、
細菌の毒素を強調したもののようですが、
その詳細は明らかではありません。

唯一先生自身のデータとして紹介されているのが、
マウスの実験データです。
これは結核の生ワクチンの1種である、
BCGを接種されたマウスでは、
アレルギーの主な原因抗体である、
IgE を抑制する仕組みがある、
という結果です。
BCGは弱毒化された結核菌です。
結核菌に感染することで、
免疫反応が調節され、
アレルギーが起こり難くなるのです。

ただ、この結果が人間に適用出来るものか、
BCGだけにそうした効果があるのか、
もしそうだとすれば、それは何故か、
といった点については明確ではありません。

結核の感染と免疫というのは、
非常に特殊な部分があるからです。

ここで最初の9ヶ条に戻って頂きたいのですが、
殆どの治療行為が否定されている中で、
BCGだけが推奨されているのです。
これはちょっと変ですよね。
「衛生仮説」から言えば、
結核にも罹った方がいいよ、
ということになってしまいます。
でも、結核は慢性化することの多い病気で、
命に関わることもある感染症です。
人間の免疫を乗り越えて、
感染が持続するような特殊な仕組みがあるのです。
だから、さすがにそうは言えないので、
ワクチンの接種になったのですね。
その理由は、上のデータが存在するからなのです。
ただ、BCGは牛の結核菌由来のワクチンで、
最近その予防効果は否定的な見解が大半です。
それだけを本当に推奨する根拠があるのでしょうか。
他のワクチンに関してはどうなのでしょうか。
生ワクチンはじゃんじゃん打った方がいいのでしょうか。
それとも自然の免疫とは異なるのでいけないのでしょうか。
不活化ワクチンはどうなのでしょう。
別にわざわざBCGを打たなくても、
他の罹って問題のない感染症に、
罹ればそれでいいのではないでしょうか、
などと疑問は次々に湧いて来ます。

ただ、僕も基本的には先生の意見に賛成です。

アレルギーとは、
結局は免疫異常です。
花粉症は別に杉が悪い訳ではありません。
杉の花粉はあくまで刺激する抗原の1つであって、
本質的な原因は他にある筈です。

長くなりましたので、今日はこのくらいで。
明日も花粉症の話を続けます。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

まー

寄生虫を宿していると、花粉症になりにくいと、ものの本で読んだことがあります。
サナダムシなんか、メタボにも効きそうですがしかし・・・
by まー (2009-03-02 14:33) 

fujiki

まーさんへ
コメントありがとうございます。
こうした話は実証性には欠けるのですが、
人間が「清潔」と引き換えに失ったものが、
意外に大きいことは事実だという気がします。
by fujiki (2009-03-02 19:45) 

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