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抗うつ剤を中止するリスクについての話 [身辺雑記]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

一昨日のNHKスペシャルの、
うつの特集関連の話を、
今日もちょっとします。

番組の中では、
うつ病の患者さんで治りの悪い方の多くは、
薬の使い過ぎで悪くなっているのだ、
という持論の大学病院の先生が出演されていて、
2つの事例が紹介されていました。

そのお1人はそれまで飲んでいた薬を、
殆ど中止し、
しばらくして症状が改善されました。

もう1人の方は、矢張り同じように薬を中止したところ、
うつ状態が悪化。
入院して治療を行ない、
それまでとは違う抗うつ剤に変更して、
お元気に退院された、とのことです。

これは結果論になりますが、
2番目の例では、
抗うつ剤を中止したことは、
失敗であった訳です。

しかし、中止をされた先生は、
必ずしもそうは思われてはいない筈です。
それまで飲んでいた薬を、
いきなり中止か極端に減量すれば、
当然良くなる人も悪くなる人もいます。
良くなれば治療は成功で感謝をされる訳ですし、
もし具合が悪くなれば、
入院して抗うつ剤を再開すればいい訳です。
治癒率100パーセントと、
そういう言い方も出来るのです。

大病院の診療は、
おおむねそうした原理で行なわれます。
たとえば、重症の肺炎を起こすことのある新薬があって、
その副作用の発現率が20パーセントだとしましょう。

僕のところのような診療所では、
とてもそんな薬を処方することは出来ません。
現実にはそんなことは不可能なのですが、
100パーセント副作用は出さないつもりで、
処方をしているからです。
1回でも強い副作用を出したら、
それでもうその患者さんは、
診療所には絶対に足を運んではくれないでしょう。
従って、絶対に冒険は出来ません。
幾らその薬に絶大な効果が期待出来ても、
2割の副作用のリスクがあれば、
処方は手控えます。

しかし、大病院の処方はそうではないのです。
たとえ副作用のリスクがあっても、
効果が期待出来る新薬なら、
どしどし使います。
そして、もし重症の肺炎を起こせば、
すぐに入院させて、
集中的な治療を行ないます。
治療が成功しても、
不幸にして患者さんが副作用で亡くなっても、
それはそれで、今後の治療に繋がる貴重なデータです。
学会で発表され、論文となり、
その先生の業績ともなる訳です。

良くも悪くも医学はこうして進歩します。
入院や集中治療の万全のバックアップ体制のあることは、
それはそれで非常に素晴らしいことですが、
患者さんが治療で状態が悪化することを、
ある意味見越したシステムであることも、
忘れてはいけません。
大病院は安全な治療の受けられる場所ではなく、
医者と患者さんの双方にとって、
相応のリスクの取れる場所なのです。

幾ら抗うつ剤のせいで、
状態が悪くなっていると想定されても、
診療所では、
一気に薬を中止することは出来ません。
慎重に少しずつ量を減らして、
様子を診ることを選択するでしょう。
どちらが正しいと、
言うつもりは僕にはありません。

ただ、大病院の治療と診療所レベルの治療は、
その規模だけではなく、
色々な面で違いがあり、
どちらが安全と言い切れるものでもないということは、
皆さんにも是非分かって頂きたいと思います。

今日は大病院と診療所の、
薬の使い方についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

miyabi

石原先生こんばんは☆
昨日のコメントはどうかお気を悪くなさらないでください。

今日のお話はこれまた思いっきりうなずける内容で納得…
大学病院だから…最新の医療設備で…
と大きな信頼のもとに2年半も通院していました。
通院当初ステージ2と言われていたのが
転院前にはステージ4に進行していました。
今の病院に変わって処方される薬は以前のものと同じものでしたが、
服用の量・飲み方・副作用のチェックの徹底で
みるみる回復していきました。お薬も同じ内容のものなのに
薬代が大学病院では今の2~3倍もしました。びっくりですよね(笑)

石原先生は患者さんの信頼が厚いDrなのでしょうね。
このブログを教えてくれたのは、
今お世話になっているDrの紹介で知りましたが、
これからもいろいろな話題を楽しみにしています。
by miyabi (2009-02-24 20:09) 

fujiki

miyabiさんへ
いつもありがとうございます。
却って気を遣って頂いたようですいません。
一般の医療機関と高次の医療機関の役割を、
もう少し明確にした方が、
患者さんが医療のために、
却って不幸になるような事態は減るのではないか、
というのが僕の意見です。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2009-02-25 08:36) 

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