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続・帯状疱疹は本当にワクチンで予防出来るのか? [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
今PCに向かっています。

それでは、今日の話題です。

今日は昨日に続いて、
帯状疱疹の話題を取り上げます。

昨日は帯状疱疹が起こるかどうかを、
血液の抗体を測ることで予測出来るのか、
という点まで話をしました。

もし、昨日の記事を読まれていない方は、
まずそちらからお読み下さい。

また、水ぼうそうと帯状疱疹の画像は、
以前アップしたものがこちらにありますので、
よろしければご覧下さい。
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2008-07-12

よろしいでしょうか。

では、話を進めます。

帯状疱疹で通常抗体の測定を行なうことは少なく、
まとまったデータはあまり報告されていません。
残念ながら診療所のデータもありません。

ただ、文献を検索したところ、
10名程度の帯状疱疹患者を、
まとめて測定したデータの報告がありました。

結果はまちまちで、一定した傾向がありません。
抗体は全例で陽性です。
帯状疱疹を起こす方は、
水ぼうそうに罹った方なのですから、
これは当然ですね。
そして、帯状疱疹を起こした後では、
その抗体の値は上昇します。
しかし、発症直後の抗体の数値は、
高いものもあれば、低いものもあります。

もし、抗体の多い人は帯状疱疹にならないのであれば、
抗体を見て、その人が帯状疱疹になるかどうかを、
判断することが出来ます。
実際にはしかや風疹では、
そうしたことが可能です。
抗体を測ってみて、
それが少なければ、
必要に応じてワクチンを打った方が良い、
と判断出来ますし、
逆に十分な量があれば、
ワクチンを打つ必要はないと、
これもクリアに言えるのです。

しかし、帯状疱疹の場合、
そう言うことは、
少なくとも今報告されているようなデータからは、
難しそうです。

それでも、抗体がもっと高ければ、
帯状疱疹は起こらないのではないか、
という推測は可能です。

これを証明する1つの方法は、
人工的に抗体を上げてみて、
帯状疱疹に罹らないかどうかを調べればいい訳です。

帯状疱疹の抗体というのは、
要するに水ぼうそうの抗体なのですから、
水ぼうそうのワクチンを打って、
帯状疱疹が起こらないかどうかを、
調べればいいことになります。

アメリカでは、1999年からそれを調べるための、
大規模な試験が行なわれました。
60歳以上の19000人以上の人に、
水ぼうそうのワクチンを打って、
打たなかった19000人と比較したのです。

さすがアメリカ。
何と言うか、規模の大きな人体実験です。

その結果、3年余りの間に、
ワクチンを打った人の300人余りが帯状疱疹になり、
ワクチンを打たなかった人の600人余りが帯状疱疹になったのです。

テレビ番組で紹介されていた研究というのが、
これです。

皆さんはこのデータをどうお考えになりますか?

確かに一定の予防効果のあることは、
間違いがなさそうですね。

でも、水ぼうそうのワクチンの有効率は、
90%を超える、と言われています。
開発された先生方は大威張りでそうおっしゃる訳です。
3年程度の試験なのですから、
1度出来た抗体がそんなに早く低下するとは思えません。

それにしては、
効果が今ひとつなのではないでしょうか。

この結果は、
「水ぼうそうのワクチンが、
帯状疱疹の予防に素晴らしく効果がある」、
というよりは、
「水ぼうそうのワクチンには、
帯状疱疹をある程度予防出来る可能性があるが、
抗体が上がっていても、
帯状疱疹は阻止出来ない場合がある、
要するに帯状疱疹の起こるメカニズムは、
それだけでは説明出来ない」、
ということを示しているように、
僕には思えます。

水ぼうそうワクチン強力推進派の先生も、
抗体で判断することは出来ない、
という点は理解されていて、
抗体を測る代わりに、
ウイルスの一部を、皮膚に注射して、
その反応を見る方法を、
考案されています。

要するに、ツベルクリン反応みたいなものですね。
テレビでも、その方法で、
帯状疱疹へのなり易さを検討していました。

しかし、この方法が抗体を測る方法より感度がいいというのは、
まだ仮説に過ぎないものです。
一般論で言えば、
参考になる場合もある、
という程度の検査だと思います。
皮膚の反応というのは、
その人の皮膚の反応のし易さに、
かなりの影響を受けてしまう検査だからです。
それで、定量的な結論を出すのは、
極めて難しいだろう、というのが僕の考えです。

従って、現時点では水ぼうそうのワクチンの、
帯状疱疹への予防効果は、
限定的なものでしかありませんし、
どういう人に打つべきか、
のしっかりとした基準もありません。
その予防効果が何処までもつものかも、
定かではありません。

従って、その限界を理解した上で、
打つかどうかの判断をするのが、
現時点での正しい判断だと、
僕は思います。

それでは、今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 6

ripapa

はじめまして。
48歳 男です。現在 帯状疱疹の治療中で発疹はほぼ治りました。但し痛みが まだある状態です。48歳 男です。
ためしてガッテンを見て色々調べていた所 先生のブログにたどり着きました。
予防接種で20年間効果があるとの事で、通っている病院の先生に相談した所、石原先生と ほぼ同じ見解でした。 患者としては「ガッカリ」でした。
教えて欲しいのは、痛みがあるうちは、今まで日課にしていたジョギングはしないほうが良いのでしょうか?健康の為にと1年近く継続(週に3日程度7km/日)してきたので、いつ頃から再開してよいかアドバイス頂ければと思い書きました。
また太ってしまい、中性脂肪・体内脂肪の数値が上がってしまうのが心配です。
by ripapa (2013-09-10 17:46) 

fujiki

ripapa さんへ
今年の7月22日に、より新しい情報を、
記事にしていますので、
よろしければそちらもご覧下さい。
一定の予防効果は確立されていますが、
それは帯状疱疹予防専用のワクチンについてのもので、
日本では現時点では接種は困難です。
無理のない運動であれば、
すぐに始めて頂いて、
問題はないと思います。
by fujiki (2013-09-11 08:44) 

ripapa

早速のご意見、ありがとうございます。
参考にさせて頂きます。
無理しない程度から ジョギングを始めてみようと思います。
また、何かありましたら宜しくお願い致します。
by ripapa (2013-09-12 09:07) 

tarotaka

はじめてコメントさせていただきます。
1歳の子供が帯状疱疹と診断されました。
インフルエンザで高熱が続いた後、解熱と同時に脇腹に帯状の発疹が出ました。今までも発熱後に湿疹(帯状でない)が出たことが何度もあることや、本人に痛がる様子もなく水疱もなかった為病院に行くのが遅くなり診察したのは2週間後でした。
子供は水疱瘡になったことはないのですが1歳になってすぐにワクチンを接種しました。発症はその半年後です。ワクチンで帯状疱疹になるなんて、、、そんな事があるのかと驚きでした。
小児科で紹介してもらった皮膚科で有名な先生に診てもらった際に、小さい子供へのワクチン接種は帯状疱疹になりやすいから勧めないと言われ小児科医との見解の違いに戸惑っています。
また皮膚科医にほっといても自然と治ると言われたのですが、2か月になる今でも発疹があります。どこまでほっといていいものやらと最近不安になってきました。発疹は発症当初とさほど変わりなく、皮膚が盛り上がった様な細かなぶつぶつが帯状になっていて少し赤みをおびています。
何かアドバイスがあれば幸いです。よろしくお願いします。

by tarotaka (2014-03-05 23:39) 

fujiki

tarotaka さんへ
水痘ワクチン後の帯状疱疹が、
どの程度の比率で発症するものかは、
まだ定説がないと思います。
稀にそうしたことがあるのは事実と思いますが、
ワクチン後の帯状疱疹と見えても、
実は別箇に水痘の感染が確認されたり、
単純ヘルペスなど別箇のウイルス感染による、
湿疹であったことが証明されたケースも報告があります。
ワクチン接種後半年というのは、
タイミング的には早すぎるようにも思います。
ただ、これは確定的には言えません。
通常の帯状疱疹であれば、
2か月で完全には消えなくても、
少なくとも改善はすると思います。
もう一度小児科と皮膚科にご相談された方が良いように思います。
by fujiki (2014-03-06 08:28) 

tarotaka

ご返答ありがとうございます。
ワクチン接種で帯状疱疹になったと決めつけていましたが、他の要因や別のウイルス感染の可能性もあるのですね。
とても勉強になりました。
早速再度受診してみようと思います。
また不安な時にはお邪魔させていただきます。
by tarotaka (2014-03-06 22:22) 

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