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セラチア菌入り点滴と百日咳の補足 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は東京は気持ちのいい朝です。
健診の結果の整理をして、
それからPCに向かっています。

さて、今日の話題です。
今日は幾つか、今までの補足的な話です。

まず、三重のクリニックのセラチア菌感染について。

かなり多数の患者さんに、
メチコバールとノイロトロピンの点滴がされていたんですが、
これは両方とも、点滴としての使用に必要性があったかどうかは、
かなり疑問ですね。

まず、メチコバールですが、
これはビタミンB12の製剤です。
末梢神経障害に対しては、
他に有効な薬がないこともあって、
幅広く使われていますが、
通常は口から物の食べられる方であれば、
内服で充分な薬です。
実際に診療所で測ったデータもありますが、
通常の量で内服していても、
結構血液中のビタミン濃度は正常より高くなることがあるのです。

確かに保険適応で、「末梢神経障害」が注射剤で認められているのですが、
これは一体どういう患者さんを想定したものなのか、
僕は正直はなはだ疑問に思います。

この注射剤は、他にめまいに対しても、
結構注射で使われています。
この使用についても、
果たして内服に比べてどのような利点があるのか、
疑問に感じます。

ビタミンB12の注射剤が、絶対に必要なケースは、
吸収が障害されているような場合ですね。
これを、「悪性貧血」と言います。
胃からビタミンがうまく吸収されず、
重症の貧血になります。
この場合は、口からでは当然効果がないので、
注射で使うことが必須になります。

ですから、ビタミンB12の注射による使用は、
吸収が障害されているか、
口から物の摂れないケースに限定しても、
何の問題もない、
というのが、僕の考えです。

次にノイロトロピンですが、
これは動物からの抽出物で、
薬効もそれほど明らかでなく、
注射で使う必要性は全くありません。
一時はこうした動物の抽出物が盛んに承認された時代があったので、
その遺物とも言うべきものです。

以前取り上げた、胎盤エキスほどの危険性はありませんが、
内服で充分で、注射は保険適応を外しても、
何の問題もないと思います。

この機会にもう一度強調しておきますが、
プリオン病など未知の感染症が明らかとなった現在、
胎盤エキスを美容目的で使うなど、
絶対に駄目ですよ。
それを勧めているような医療機関は、
医療機関を標榜する資格はない、
と僕は断言してはばかりません。
危険を承知で毒かも知れないものを、
金を取って打っているんですから。
もう一度繰り返しますけど、
絶対にそんな所へ行ってはいけません。

それでは、百日咳の話題に移ります。

百日咳の抗体が、
測れない状態になっているんです。
急に需要が増えたので、
検査会社で対応出来なくなった、
というのですね。

日本はいつもそうです。
ちょっと予想外の流行があったりすると、
その病気の診断の試薬から、薬から、
全てがあっと言う間に品薄になり、
使えなくなってしまうんです。

この状況をなんとかしないと、
感染対策は絵に描いた餅に過ぎないですよね。
そして、どの病気がいつ流行るかは、
事前に分かる訳がないのです。

対策は早くてせいぜい一年後です。
これじゃ、本当に困ります。
せめて、一ヶ月くらいでの対応は出来ないのでしょうか。

それから百日咳の診断についてですが、
日本では大人の患者さんをあまり想定していないので、
症状だけから診断しても構わないことになっているんです。
(WHOの基準は原則検査が必須です)
でも、以前のブログを読まれた方にはお分かりのように、
症状だけからの診断は、
現実的には不可能なんですよ。
ですから、今発表されている大流行という数字は、
そのまま鵜呑みには出来ないものなのです。

大体あのデータは、定点と言って、
僅かな数の医療機関の報告を、
集計したものに過ぎないのです。
その集計の精度には、僕はかなり疑問を持っています。
何処が定点なのか、
僕は全く知りません。
言ってみれば、視聴率みたいな仕組みですね。

雑駁な話になりましたが、
今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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