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続・「針使いまわし」のこと [科学検証]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

東京は今日も夕方には雨になるみたいですね。
天気が不安定なのには、どうもうんざりです。
朝から例によって健診の結果を整理して、
それから今PCに向かっています。

それでは、今日の話題です。

島根の「針使いまわし」の事件があってから、
血糖の簡易測定の器具のことが、
問題になっていますね。

この話題は前にも取り上げたことがありましたが、
間違った情報が流れているみたいなので、
今日また説明することにします。

まず、この写真を見てください。



これがペン型の採血器具です。
先端から細い針が出ているのが見えますか。
先端に穴が開いていて、
横にあるボタンを押すと、
この針が飛び出して、
ごく微量の血を採取する仕組みです。



こうやって先端を指に当てて、
ボタンを押して採血をします。
指ではなく、耳朶で取ることもありますね。
この器具では、
中の針だけをその都度交換する仕組みになっているんです。
ただ、指に直接当たる先端の部分は交換出来ないので、
もしAさんを採血してから、針を換えてBさんを採血すると、
この先端の部分に血が付いていて、
それがBさんの指に触れる、
という危険性があります。

ただ、適切に操作をしていれば、
そのことによる感染の危険性は低いとの判断があり、
そのために、以前はこのタイプの器具で、
複数の人の採血をすることは、
認められていたんです。

それが、イギリスでこのタイプの器具から、
B型肝炎が感染した可能性が報告され、
それを受けて、2006年の3月に、
厚生労働省の通達が出ました。

「針の周辺部分がディスポーザブルタイプでないものの、
複数人の使用を禁止する」
というものでした。
上の器具はその禁止器具にあたるんですね。

では、「針の周辺部分がディスポーザブルタイプである器具」とは、
どんなものでしょうか。
この写真を見て下さい。



一見同じように見えますが、
先端の青い部分を見て下さい。
その先にオレンジ色のキャップがあって、
それを外すと、青い部分の先端から針が出る仕組みです。
そして、この青い部分自体が、
取り外して交換出来るようになっているんです。



こうやって、採血をします。
肌に触れている先端は青い部分なので、
針と共に交換されるため、前に使った人の血が付くことは、
絶対にないんですね。

よろしいでしょうか。

厚生労働省の通達については、
実地の医者で知らない人は多かったと思うんです。
前にも書きましたけど、
そんなに個別に連絡が来るようなものではないんですね。
6月下旬をめどに、全国の集計をまとめるそうですから、
更に問題は大きくなる可能性があります。

「針使いまわし」という言葉が、
一人歩きしている感じがあります。
針を使いまわしていたのは、
最初の島根の一件だけなんですから。
それ以外の器具の不適切な使用と、
同列にされているような報道には、
かなり疑問を感じますね。

長くなりましたので、今日はこんな所で。
また報道などありましたら、コメントしたいと思います。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

sin

 詳しい解説をありがとうございます。
 私、B型、息子C型肝炎患者です。
 今回の問題は、「針の使い回し」と「微量採血器具の使い回し」も含まれていますね。
 厚労省の報道発表資料は、下記からご覧になることができます。
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/05/h0527-2.html

by sin (2008-06-03 04:29) 

fujiki

sinさんへ
読んで頂きありがとうございます。
これからは、医療従事者は自分から情報を得ていくようにしないといけないのだ、と今回の事件をみて改めて思いました。
またよかったら時々覗いて下さい。


by fujiki (2008-06-03 13:38) 

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