2型糖尿病の早期包括的治療の効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のLancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された、
2型糖尿病の包括的治療の効果についての論文です。
2型糖尿病の治療の目標は、
現在では心血管疾患の予後改善と生命予後の改善にあります。
血糖コントロールを良好にすることで、
具体的にはHbA1cを7.0%未満に維持することで、
3大合併症と言われる小血管の合併症は抑制されますが、
それを超える厳密な血糖低下治療を行なっても、
生命予後や心血管疾患の予後には、
結び付かないことが明らかになって以降、
今度は血糖以外の心血管疾患リスク、
具体的には血圧やコレステロール値などを、
より強固にコントロールすることで、
心血管疾患リスクの改善に結び付けよう、
とする試みが検証されるようになりました。
これまでに、幾つかの大規模臨床試験において、
ある程度年数の経過した2型糖尿病の患者さんにおいては、
血糖以外に血圧や脂質などのコントロールをより厳密に行うことにより、
患者さんの予後に一定の改善が見られることが、
明らかになっています。
しかし、2型糖尿病と診断された時点のような、
病気の早期からの介入においても、
同様の結果が得られるかどうかはまだ明らかではありません。
そこで今回の研究では、
デンマーク、イギリス、オランダの臨床医343名を、
クジ引きで2つのグループに分けると、
一方は通常の診療群に、
もう一方はより厳密な心血管疾患予防のための管理群に割り付け、
3233名の健診で初めて診断された2型糖尿病の患者さんを、
無作為にその臨床医に振り分けて、
5年間の診療を行い、
その後5年間は特に介入なく経過観察を行なっています。
厳密な心血管疾患予防のための介入は、
HbA1cは7.0%未満を目指し、
血圧は130/85未満を目指し、
総コレステロールについては、
心血管疾患のある場合には174mg/dL未満を目指し、
ない場合には194mg/dL未満を目指します。
血圧が120/80mmHg以上であればACE阻害剤を処方し、
特に禁忌がなければアスピリン75mgを処方し、
総コレステロールが135mg/dL以上であれば、
スタチンを処方します。
5年の時点での経過観察の結果は、
既に論文化されていて、
強化治療群で心血管疾患のリスクは、
通常治療群と比較して17%低下していましたが、
その差は有意ではありませんでした。
今回の論文では10年目までの結果が解析されています。
観察期間の平均値は9.61年です。
最初の5年の治療期間においては、
体重、HbA1c、血圧、総コレステロール値は、
いずれも強化治療群で有意に低下していましたが、
その差は10年目においてはなくなっていて、
心血管疾患のリスクや総死亡のリスクについても、
両群での差は認められなくなっていました。
要するに、
2型糖尿病の診断早期において、
積極的に心血管疾患のリスク低減のための強化治療を行なっても、
5年の治療において明確な差は認められず、
治療終了後5年が経過した時点では、
5年の時点で明確であった検査値の差も、
維持はされていませんでした。
勿論強化療法を持続することにより、
一定の心血管疾患予防効果はありそうなのですが、
それを明確にするには、
現状の方法では何かが足りないと考えた方が良さそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のLancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された、
2型糖尿病の包括的治療の効果についての論文です。
2型糖尿病の治療の目標は、
現在では心血管疾患の予後改善と生命予後の改善にあります。
血糖コントロールを良好にすることで、
具体的にはHbA1cを7.0%未満に維持することで、
3大合併症と言われる小血管の合併症は抑制されますが、
それを超える厳密な血糖低下治療を行なっても、
生命予後や心血管疾患の予後には、
結び付かないことが明らかになって以降、
今度は血糖以外の心血管疾患リスク、
具体的には血圧やコレステロール値などを、
より強固にコントロールすることで、
心血管疾患リスクの改善に結び付けよう、
とする試みが検証されるようになりました。
これまでに、幾つかの大規模臨床試験において、
ある程度年数の経過した2型糖尿病の患者さんにおいては、
血糖以外に血圧や脂質などのコントロールをより厳密に行うことにより、
患者さんの予後に一定の改善が見られることが、
明らかになっています。
しかし、2型糖尿病と診断された時点のような、
病気の早期からの介入においても、
同様の結果が得られるかどうかはまだ明らかではありません。
そこで今回の研究では、
デンマーク、イギリス、オランダの臨床医343名を、
クジ引きで2つのグループに分けると、
一方は通常の診療群に、
もう一方はより厳密な心血管疾患予防のための管理群に割り付け、
3233名の健診で初めて診断された2型糖尿病の患者さんを、
無作為にその臨床医に振り分けて、
5年間の診療を行い、
その後5年間は特に介入なく経過観察を行なっています。
厳密な心血管疾患予防のための介入は、
HbA1cは7.0%未満を目指し、
血圧は130/85未満を目指し、
総コレステロールについては、
心血管疾患のある場合には174mg/dL未満を目指し、
ない場合には194mg/dL未満を目指します。
血圧が120/80mmHg以上であればACE阻害剤を処方し、
特に禁忌がなければアスピリン75mgを処方し、
総コレステロールが135mg/dL以上であれば、
スタチンを処方します。
5年の時点での経過観察の結果は、
既に論文化されていて、
強化治療群で心血管疾患のリスクは、
通常治療群と比較して17%低下していましたが、
その差は有意ではありませんでした。
今回の論文では10年目までの結果が解析されています。
観察期間の平均値は9.61年です。
最初の5年の治療期間においては、
体重、HbA1c、血圧、総コレステロール値は、
いずれも強化治療群で有意に低下していましたが、
その差は10年目においてはなくなっていて、
心血管疾患のリスクや総死亡のリスクについても、
両群での差は認められなくなっていました。
要するに、
2型糖尿病の診断早期において、
積極的に心血管疾患のリスク低減のための強化治療を行なっても、
5年の治療において明確な差は認められず、
治療終了後5年が経過した時点では、
5年の時点で明確であった検査値の差も、
維持はされていませんでした。
勿論強化療法を持続することにより、
一定の心血管疾患予防効果はありそうなのですが、
それを明確にするには、
現状の方法では何かが足りないと考えた方が良さそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2019-11-27 06:10
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