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乳酸菌製剤の風邪予防効果(風邪予防のエビデンス②) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日は風邪予防の根拠を考えるシリーズの2回目でです。

今回はプロバイオティクスの効果を考えます。

最近腸内細菌叢が多くの病気に結び付いている、
という知見があり、
風邪予防についても多くの研究結果が報告されています。

その中にはヨーグルトを使用したようなものもあり、
また個別の乳酸菌を薬のようにして摂取する、
というタイプのものもあります。

その効果の検証として、
現時点で最も信頼性が高いのは、
コクラン・レビューの論文で、
その2015年版がこちらです。
プロバイオティクスの効果.jpg
これはこれまでのプロバイオティクス(その内容は問わない)の、
急性下気道感染症の予防効果についての介入試験の結果をまとめて解析したものです。

急性下気道感染というのは、
こじらせた風邪と言うニュアンスで、
上気道炎から、
気管支炎や肺炎などの状態に移行したものです。
元はウイルス感染であっても、
気道の細菌感染を併発することもあり、
その場合には抗生物質の適応となります。

12の介入試験の3720名のデータを解析した結果として、
偽薬と比較したプロバイオティクスの効果は、
1回以上の急性下気道感染症を来すリスクを、
47%有意に低下させていました。
(95%CI; 0.37から0.76)

また急性下気道感染症の持続期間についても、
1.89日有意に短縮させていて、
抗生物質を使用する頻度も、
35%有意に低下させていました。

ただ、実際の下気道感染症の頻度で見ると、
偽薬との間には有意差はありませんでした。

個別な腸内細菌の知見としては、
まずビフィズス菌(Bifidobacterium)があります。

実験的にはインフルエンザを感染させたネズミにおいて、
ビフィズス菌の1種であるBifidobacterium longumは、
臨床症状を改善させ、死亡リスクを減らし、
下気道の炎症を抑制する効果を示しています。

そのため、多くの食品メーカーがこの乳酸菌を含む商品を開発販売していて、
それにタイアップしたような臨床研究も多く発表されています。
ただ、その多くは実際には企業からお金をもらって行われた、
一種の宣伝研究なので、
その結果については慎重に考える必要があると思います。

日本では食品メーカーのサポートの元に、
こうした研究が盛んに行われていて、
この方面のレビューを見ると、
肯定的な評価の論文の多くは、
日本の研究者によるものです。

Lactobacillus acidophilusはL-92乳酸菌とも言われていますが、
ナチュラルキラー細胞の活性を高めることにより、
インフルエンザ感染をネズミの実験で予防した、
というデータが報告されています。
この乳酸菌は抗アレルギー作用があるとして、
肌荒れ防止などの効果を謳って商品として販売されています。

Lactobacillus brevisという乳酸菌はラブレ菌と呼ばれ、
これもKB-29乳酸菌として販売されていますが、
小学生に継続的に使用したところ、
インフルエンザの感染が予防されたという、
これも日本発のデータが報告されています。

その一方で乳酸菌の高齢者予防効果を検証して、
無効であるという結果も発表されています。
こちらです。
シロタ株の高齢者風邪予防効果.jpg
2012年のAm J Clin Nutr誌に掲載された論文ですが、
偽薬を使用した二重盲検法という非常に厳密な方法で、
乳酸菌のシロタ株、つまりヤクルト菌の、
施設入所の高齢者における気道感染予防効果を見たもので、
乳酸菌を使用しても、
感染症の予防には効果はなかった、という結果になっています。

乳酸菌とインフルエンザワクチンとの関連は興味深く、
ワクチンが未接種である方が、
乳酸菌の感染予防効果が高かった、
という報告がある一方で、
ワクチンによる免疫反応や効果を増強した、
というような報告もあります。

このように、乳酸菌製剤には、
それを継続的に使用することにより、
一定の風邪予防効果がありそうなのですが、
その効果は成人よりむしろ小児で高いものの可能性が高く、
どの乳酸菌がより有益であるか、
というような点については比較したような試験は殆どなく、
風邪になってからの予後改善については、
あまり効果は望めないと考えた方が良いようです。

今日は乳酸菌製剤の風邪予防効果を考えました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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