プッチーニ「ラ・ボエーム」(2016年新国立劇場レパートリー) [オペラ]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
何もなければ1日のんびり過ごす予定です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
新国立劇場のレパートリー上演、
プッチーニの「ラ・ボエーム」に足を運びました。
バブルの頃と比較すると、
来日オペラはかなり元気がなく貧相な感じは否めず、
有無を言わせぬ感じの大スターも不在です。
そうなると意外に良質の舞台を定期的に上演しているのが、
新国立劇場です。
新国立劇場もバブルの頃と比較すると、
かなり予算は減っていると思うのですが、
それでも舞台機構は抜群で音響も良く、
合唱のレベルも高いので、
安定感を持って舞台を見ることが出来ます。
引っ越し公演は予算の問題が大きいのでしょうが、
現在は舞台装置は安っぽく、
合唱も大勢は来日しないので、
人数が少なくて迫力がありません。
今回の「ラ・ボエーム」は、
フランスの若い芸術家を描いた人気作です。
日本人による演出はこれと言った新味はないのですが、
舞台面も綺麗ですし、
1幕など部屋の外の空間を比較的多くとって、
最後の二重唱の辺りも、
最後のぎりぎりまで客席から見えるところで歌ってくれるのが、
個人的には好印象でした。
ミミがロドルフォの部屋に来て、
蝋燭の明かりが何度か消える段取りも、
非常に分かりやすく出来ていました。
これもあまりないことです。
この作品の聴きどころは、
何と言っても1幕のテノールのアリアと、
ソプラノのアリアが連続するところですが、
ちゃんと盛り上がるべきところで前に出て来るので、
動きが歌を邪魔していません。
アリアの辺りなど、
照明を細かく調整しているのも良いと思います。
2幕のカルチェラタンの街並みも綺麗ですし、
主人公達の声が、
合唱とは綺麗に分かれて聴こえるような、
バランス感覚も良かったと思います。
ヨーロッパの指揮者は、
歌手をしっかり盛り上げるタイプで、
1幕のアリアも、
とことん伸ばせるところは伸ばしていました。
歌手陣もミミ役のフローリアンというルーマニアのソプラノが、
艶やかな伸びのある声でまずまず。
ロドルフォ役のイタリアのテノール、テッラノーヴァも、
声はやや荒れているのですが、
目いっぱいの歌唱で「冷たい手に」の高音は良く出ていました。
ただ、二重唱の終わりは声を上げませんでした。
以上が良かったところ…
悪い点は演出では、
2幕の始めに録音の効果音を流していて、
これは良くないと思いました。
プッチーニの音楽は情景描写が本質で、
すべての情景を音にしているのですから、
そこに実際の雑踏の音などを重ねるのは、
絶対のNGだと思います。
ただ、こうした演出は、
最近は多いのが実際だと思います。
日本人歌手があまり良くありません。
もっと歌える人が幾らでもいると思いますし、
もっと真摯な歌であれば、
心に響くと思うのですが…
その辺は非常に残念です。
ただ、「ラ・ボエーム」のような「世話物」の演技と歌は、
日本人歌手には一番苦手なジャンルかも知れません。
精一杯おちゃらけた感じを出すのが、
却って痛々しく、
歌のフォルムも乱してしまっているように感じました。
新国立劇場で一番残念なのは客席の雰囲気で、
上演回数が多いので、
どうしてもオペラ好きではない観客の比率が多くなり、
雑音もざらですし、
カーテンコールを見ずに、
そそくさと帰る観客が多いのもガッカリします。
今回は20日に聴いたのですが、
ミミのアリアの一番盛り上がるところで、
ポケベルの音が盛大に鳴り響きました。
どうしてここまで絶妙(悪い意味で)のタイミングで、
ポケベルが鳴らせるものかと、
暗澹たる気分になります。
しかも1階3列目の正面です。
アリアは多くの拍手に値する出来だったと思いますし、
指揮者もそれを期待していた演奏でしたが、
アリア後の拍手は、
特にテノールのアリアの後はパラパラでした。
あそこは本来は繋げるところですが、
慣例として拍手が入りますし、
それで良いのだと思います。
そういう作法は矢張り守られるかどうかで、
その後の出来も変わります。
あの出来であれだけの拍手では、
歌手もやる気は失せると思います。
とても、残念です。
一方でムゼッタのアリアの後では、
指揮者は拍手の間を作りませんでした。
あれは妥当な判断だったと思います。
12月の「セビリアの理髪師」では、
新国立劇場で初めて、
ラストのテノールの大アリアが、
カットなしで歌われるそうです。
これも非常に楽しみで、
なんだかんだと言っても、
今の日本のオペラは、
かつてより新国立劇場でもっている、
という部分が大きいように思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごしください。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
何もなければ1日のんびり過ごす予定です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
新国立劇場のレパートリー上演、
プッチーニの「ラ・ボエーム」に足を運びました。
バブルの頃と比較すると、
来日オペラはかなり元気がなく貧相な感じは否めず、
有無を言わせぬ感じの大スターも不在です。
そうなると意外に良質の舞台を定期的に上演しているのが、
新国立劇場です。
新国立劇場もバブルの頃と比較すると、
かなり予算は減っていると思うのですが、
それでも舞台機構は抜群で音響も良く、
合唱のレベルも高いので、
安定感を持って舞台を見ることが出来ます。
引っ越し公演は予算の問題が大きいのでしょうが、
現在は舞台装置は安っぽく、
合唱も大勢は来日しないので、
人数が少なくて迫力がありません。
今回の「ラ・ボエーム」は、
フランスの若い芸術家を描いた人気作です。
日本人による演出はこれと言った新味はないのですが、
舞台面も綺麗ですし、
1幕など部屋の外の空間を比較的多くとって、
最後の二重唱の辺りも、
最後のぎりぎりまで客席から見えるところで歌ってくれるのが、
個人的には好印象でした。
ミミがロドルフォの部屋に来て、
蝋燭の明かりが何度か消える段取りも、
非常に分かりやすく出来ていました。
これもあまりないことです。
この作品の聴きどころは、
何と言っても1幕のテノールのアリアと、
ソプラノのアリアが連続するところですが、
ちゃんと盛り上がるべきところで前に出て来るので、
動きが歌を邪魔していません。
アリアの辺りなど、
照明を細かく調整しているのも良いと思います。
2幕のカルチェラタンの街並みも綺麗ですし、
主人公達の声が、
合唱とは綺麗に分かれて聴こえるような、
バランス感覚も良かったと思います。
ヨーロッパの指揮者は、
歌手をしっかり盛り上げるタイプで、
1幕のアリアも、
とことん伸ばせるところは伸ばしていました。
歌手陣もミミ役のフローリアンというルーマニアのソプラノが、
艶やかな伸びのある声でまずまず。
ロドルフォ役のイタリアのテノール、テッラノーヴァも、
声はやや荒れているのですが、
目いっぱいの歌唱で「冷たい手に」の高音は良く出ていました。
ただ、二重唱の終わりは声を上げませんでした。
以上が良かったところ…
悪い点は演出では、
2幕の始めに録音の効果音を流していて、
これは良くないと思いました。
プッチーニの音楽は情景描写が本質で、
すべての情景を音にしているのですから、
そこに実際の雑踏の音などを重ねるのは、
絶対のNGだと思います。
ただ、こうした演出は、
最近は多いのが実際だと思います。
日本人歌手があまり良くありません。
もっと歌える人が幾らでもいると思いますし、
もっと真摯な歌であれば、
心に響くと思うのですが…
その辺は非常に残念です。
ただ、「ラ・ボエーム」のような「世話物」の演技と歌は、
日本人歌手には一番苦手なジャンルかも知れません。
精一杯おちゃらけた感じを出すのが、
却って痛々しく、
歌のフォルムも乱してしまっているように感じました。
新国立劇場で一番残念なのは客席の雰囲気で、
上演回数が多いので、
どうしてもオペラ好きではない観客の比率が多くなり、
雑音もざらですし、
カーテンコールを見ずに、
そそくさと帰る観客が多いのもガッカリします。
今回は20日に聴いたのですが、
ミミのアリアの一番盛り上がるところで、
ポケベルの音が盛大に鳴り響きました。
どうしてここまで絶妙(悪い意味で)のタイミングで、
ポケベルが鳴らせるものかと、
暗澹たる気分になります。
しかも1階3列目の正面です。
アリアは多くの拍手に値する出来だったと思いますし、
指揮者もそれを期待していた演奏でしたが、
アリア後の拍手は、
特にテノールのアリアの後はパラパラでした。
あそこは本来は繋げるところですが、
慣例として拍手が入りますし、
それで良いのだと思います。
そういう作法は矢張り守られるかどうかで、
その後の出来も変わります。
あの出来であれだけの拍手では、
歌手もやる気は失せると思います。
とても、残念です。
一方でムゼッタのアリアの後では、
指揮者は拍手の間を作りませんでした。
あれは妥当な判断だったと思います。
12月の「セビリアの理髪師」では、
新国立劇場で初めて、
ラストのテノールの大アリアが、
カットなしで歌われるそうです。
これも非常に楽しみで、
なんだかんだと言っても、
今の日本のオペラは、
かつてより新国立劇場でもっている、
という部分が大きいように思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごしください。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本
2016-11-27 12:07
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いつも読ませていただいております。
現在授乳中ですが脇を閉じて手をはさんでみると3つほど小豆くらいのころころを見つけました。
乳癌検診は妊娠前に受けました。
報道などで授乳中も受けた方がいい、脇のしこりは転移などとの情報がありましたが、本当に授乳中も受けた方がよいのか、今あるしこりは転移なのか悩んでいます。
先生はどう思われるでしょうか。
by よいまま (2016-11-27 18:32)
よいままさんへ
脇のリンパ腺は授乳中には炎症などで、
腫れることはあると思います。
ただ、その腫れ方によっては、
ご病気が隠れている可能性もありますので、
乳腺科でご相談されるのが良いと思います。
まず専門科の先生に、
しこりを触診して頂くのが第一かと思います。
by fujiki (2016-11-27 19:16)
ありがとうございます。やはりそうですね。乳腺炎に先日なったのでしばらく様子を見てひかないようならいってみようと思います。ありがとうございました。
医療との関わりが難しいと感じる今日この頃です。これからもブログ楽しみにしております。ありがとうございました。
by よいまま (2016-11-27 23:17)